メリークリトマス試験紙
※しょうもない短編です
本当に、夢みたいだ。僕に彼女がいて、そしてクリスマスにその彼女と二人で過ごせるだなんて!
しがない数学科の大学生である僕にとって、理系大学における異常ともいえる女子の少なさには日頃頭を悩まされてきたのだが、もう今となっては関係ない。何と言っても僕にはそう、彼女がいる。彼女がいるのだ!彼女いない歴イコールの負け組だったあの頃とは違う。クローゼットの中が8割がたチェックシャツだったあの頃とは違う。モテなさすぎて両親からホモ疑惑をかけられ本気で心配された挙句家族会議にまで発展したあの頃とは違う。そう、僕には――――――――――――――――彼女がいる。
彼女と初めて出会ったのは確か高校二年の頃だったと記憶している。僕は彼女のしなやかさに心を奪われた。俗に言う一目惚れというやつで、それはそれは夢中になった。初めての恋の経験に最初は勝手がわからず、とにかく彼女について隅々まで調べようと決めたのだが、これが中々難しい。女心と秋の空とはよく言ったもので、彼女の性格がさっぱり掴めず、考えて話していても冷たい反応ばかりで、密かに泣き明かした夜も数知れない。そんな彼女と大きく進展したのが、高校三年生の夏だった。特別なきっかけや原因があったわけではない。ただ彼女と毎日顔を合わせているうちに、段々と手応えを感じることが増えて行った。見た目は結構とげとげしい彼女だが、実はとても聞き上手で、僕が1から10まで説明すれば、それらを全て丁寧にまとめてくれるし、とても誠実な人だと思った。僕は結構話したがりな性格だから、時には1からとんでもない数までのエピソードを話してしまうこともあったのだが、それでも彼女はきちんと聞いてくれて、一つにまとめてくれたのだ。こんなに素晴らしい人にはもう出会えない、そう確信して僕は告白することを決めた。そして、無事その思いが届いたのだ。
そしてもうすぐ待ち合わせの時刻。初デート、その響きが何処かこそばゆくて、落ち着かない。何度も腕時計を眺め、気分を鎮めるために深呼吸をした。
そして近づく、足音。
彼女だ。
「ごめんなさい、遅れちゃって! 」
「会いたかったよ!Σ!」