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第5話【再会は戦場】

森。

見た目の森の深さとは裏腹に森の中は意外と木と木の間が広く、馬車も簡単に通る事が出来た。


 

前方には味方の第一部隊、後ろには第三部隊がいる。

お互いがお互いをすぐに助け合える様に、部隊との間には常に何人かの連絡兵を設けた。


「ロック、ロイド、気を抜くなよ。

昨日の賊の件もあるからな。」


ハイド将軍は先程から馬の手綱を兵に任せ、背中にしょっている剣に手を掛けている。


「わかってますよ、将軍。

さっさとこの森を抜けましょう。」 

ロックも槍を構えながら言う。


「将軍……クロを馬車の中に入れても大丈夫ですかね?」


もし戦いになったらクロが危険な目に合う。

馬車の中なら安全だろう。


「あー………ちょっと待ってろ。」


ハイド将軍はそう言うと馬車の扉をノックし、開けて馬車の中に顔を入れる。

少し中に居る人物と話した後に、ロイドの方へ顔を向ける。


「ロイド、良いってよ。ほらクロをこっちに渡しな。」


ハイド将軍にクロを手渡す。


「みゃーお。」


クロは一鳴きした後に馬車の中に飛び込む。

そしてハイド将軍は扉を静かに閉めた。


「良かったなロイド。とりあえずは周りに集中出来て。」


「ほらほらロック、周りをちゃんと見てろよ。」


ロイドとロックは無駄口を叩く。


「………お前ら………気を付けろ。連絡兵…すぐに第一部隊と第三部隊に此方に寄って来いと伝えろ。

今いる全員は馬車を囲め。」


ハイド将軍が急に声を押し殺しながら指示をする。

兵が何人か前方と後方に駆けていく。


「……将軍……敵ですか?」


「ああ…多分囲まれた。ロイド、ロック、お前らは死ぬ気で馬車を守れ。」


「了解っすよ。」


 

その時だった。

風を切る様な音と共にハイド将軍目がけて矢が飛んでくる。


「きやがったぜ!!お前ら!!馬車を守りきれよ!!!」


ハイド将軍は剣で飛んでくる矢を叩き落とす。


視界が悪い森から歓声が上がる。

木の間から賊と思われる男が押し寄せて来た。


「『朧火』の戦い見せ付けてやる!」


 

ハイド将軍は巨大な剣を振り回し敵を次々と葬っていく。


「給料上がらなきゃやってらんねえ!!!」


「それよりも馬車を守れよ!!

相手が賊なら確実に馬車を狙ってくる!!!」


「わかってらあ!」


ロイドはロックと連携をとりながら馬車に近付いてくる敵を斬る。


周りを見る。

いたる所で味方兵と敵が斬り合っている。

軍勢を三つに分けたのが仇になったか。

賊と味方兵の数は五分五分。

ただ前方と後方にいる部隊が援護に来れば此方が優勢になるだろう。


前方から雄叫びを上げた賊が突っ込んで来る。


振り下ろされた剣を一歩後退して避ける。

敵は体勢を崩し、よろけた。

素早く踏み込み、刀で敵を斬り付ける。


だが敵は一人ではない。

もう一人の敵が斬り倒した敵を乗り越える様にしてまた斬りかかってきた。


「ちょっ……危ねえ!!!」


ギリギリで避ける…が。

敵の剣先が頬をかすめた。

頬から血が垂れる。


次の瞬間、視界の外から巨大な剣が現れる。

ハイド将軍だ。

敵は胴体を深く斬られその場に崩れ落ちる。


「ったく…気を抜くなよ!!!」


「すいません将軍。

どうにかして敵の数を減らせませんか?」


「……よし、やってみるか。」


ハイド将軍はそう言うと魔宝を着けた右手の掌を開く。


ハイド将軍の右手から火花が散る。

そして空気中に四散した火花が再び将軍の掌の上に集まり、火の玉を形作る。


ハイド将軍はそれを思い切り敵が固まっている場所へ放つ。


火の玉は残像を残しながらとてつもない速さで敵に直撃した。

そして爆発。

何人かの敵は吹き飛び、木に体をぶつけて気を失った。


「よっしゃあああああ!!凄いっすよ将軍!!」


ロックが槍を振り回しながら言う。


「森の中だからな。少しは加減しないと森が燃えちまう。」


あれで手加減をしたのか。

流石『朧火』の異名を持つだけはある。


「っと…最後の一押しだ!」


ハイド将軍が大声で言う。

味方の兵が奮起する。


ロイドとロックも全力で敵を潰していく。


しばらくすると前方と後方から歓声が響き出す。


「ようやく来たか…。」


援軍により馬車に群がる賊は一掃された。


 

そしてハイド将軍が最後の敵を討ち取る。


「おいロイド!!!馬車周辺の安全を確認してこい!俺とロックと第一、第三部隊は周りに賊がいないか索敵する。」


ハイド将軍はそう言うとロックと部隊を率いて森の中に消えた。


ロイドは第二部隊と一緒に馬車の周りの安全を確保する。


「ロイド、馬車の中の確認も頼む。」


知り合いの兵が言う。


「わかった。失礼の無いようにするよ。」


とりあえず馬車の扉をノックする。

返事が無い。

手で知り合いの兵に合図を送る。

兵が数人馬車を囲む。


次の瞬間突然扉が開く。


「うわあ!!!」


開いてきた扉に思い切り頭をぶつけてしまった。


「お前らそこを退けえ!!!!こいつが死んでも良いのか!?」


賊が馬車の中から飛び出して来た。

先程の戦いの最中に馬車に紛れ込んだのだろう。


だがロイドはそれ以上に驚くべき物を見た。


賊が人質として剣をつきつけている人物を見たことがあったからだ。

その人物とは昨日クロと遊んでいた長髪で青髪のあの女の子だった。


「良いわよ…殺しなさいよ…どうせ…。」


彼女はロイドに気付いていないのか賊に向かい言う。


「この糞餓鬼め……黙っていろ!!!」


賊は彼女の髪を掴み怒鳴る。

まずい状況だ。

ハイド将軍とロックはいない。

更には人質もいる。

下手に近付いたら賊は容赦なく彼女を殺すだろう。

どうする?

知り合いの兵は動けない。

頼りになるのは自分だけだ。


その時だった。

馬車の上に小さな影が動めいている。

そして小さな影は馬車の上から賊に牙を剥いた。


「フシャアアア!!!」


「なんだこの糞猫!!!邪魔だ!!!」


クロだ。

一瞬賊の意識がクロに向かう。

今だ。

その場から全力で駆ける。

そして賊に全力の体当たりを喰らわせる。

賊が吹き飛び、知り合いの兵が賊に飛びかかる。


ロイドは倒れそうになった彼女を支える。

馬車の上からロイドの頭の上へクロが飛び降りてきた。


「よし、ロイド!馬車の中に彼女を!」


知り合いの兵が賊を縛り上げながら言う。


「わかった。後は頼んだ!」


とりあえず驚きの表情をしている彼女を馬車の中の座席に座らせる。

あの魔宝が入った箱も無事な様だ。


クロがロイドの頭の上から彼女の膝に飛び移る。


「あんた…なんで…?」


彼女が呟く。


「こっちの台詞だよ。なんで君が?」 

「私は……。」


彼女が暗い表情をする。

まずい。

この雰囲気は嫌いだ。


「まあ良いさ。人は知られたくない事があるから。

とにかく君が無事で良かったよ。」 

「ありがと……。

あんたって意外と……なんでもない。」


すると後ろから知り合いの兵がロイドを呼ぶ。


「ロイド!ハイド将軍とロックが戻って来たぞ!!」


ハイド将軍が戻って来たらしい。

状況を説明するために行かなければ。


「あー…俺は行くよ。

クロをお願いしても良い?」


「え…?良いの?」


「もちろんさ。じゃあ俺は行くよ。」 

馬車の扉を静かに閉める。


そして駆け足でハイド将軍の元に向かう。

途中でロックが笑いかけてきたので笑い返す。


「おう、ロイド悪かったな。

事情は大体聞いた。とりあえずこの森から抜けるぞ。」


ハイド将軍が素早く指示をする。

軍勢は今度は一固まりになり、森を抜けた。


「ようやく抜けたあ……。」


ロックが呟く。


「本当…今回は疲れた…。」


だがオリオンまでの道はまだ半分進んだくらいだろう。


〜三十分後〜


またひたすら草原を進んでいる。

その時だった。

前方にキャンプが見える。


「お! 行商団のキャンプか!

ちょうど良い。あのキャンプの近くで休むか!」


ハイド将軍が大声で言う。

周りの兵は歓声を上げた。


「ようやく…休める…。」


ロックが呟く。


「うおいロイド!お前ルナちゃんと知り合いみたいだから、キャンプの中を案内してこい!」


ハイド将軍が言う。

ルナちゃんとは彼女の事だろう。



とりあえず軍勢は行商団のキャンプの隣で休息をとる。


ロックはその場に倒れて眠り始めた。


ハイド将軍はもう既に行商団キャンプへ買い出しに行っている。


とりあえず馬車に向かう。


扉を開けようとしたその時!


「ぐほっ…………!!」


またまた急に開いた扉に頭をぶつけて引っくり返る。


「…ちょっと…ロイドあんた大丈夫?」


彼女…ルナが心配そうに顔を覗き込んできた。

ルナの肩にはクロがちょこんとしがみついている。


「……大丈夫だよ。」


足で反動をつけて飛び起きる。


「頼りになるんだかならないんだか…。」


ルナはそう言うとキャンプに向かい歩き出す。


「ちょっと待てって…。」


慌てて追う。


「ハイドさんから聞いたわよ。

ロイドがキャンプに付き添ってくれるって。」


「まあ最初からそのつもりだったけどさ。」


「だったら早く行くわよ!」


ルナは駆け出す。


キャンプでは何が彼等を待っているのか…。

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