キラキラ、ゼロ、お月様
さよならも言わせてもらえないままに、終焉を迎えたぼくたち。
それはあまりに幼くて、
あまりにくだらないやり方だった。
悲しみもそこそこ。
肩の荷がおりたとは思わなかった。
負担なんかじゃなかった。
喉が乾く。
夜中閉じ込められた檻を壊して外に出る。
きっと、帰ってきたら「どこにいってたの」と青白い顔で貴女は言うだろう。かまうもんか。
夜中。
自動販売機の人工光が橙色に光り、夜の闇に馴染めずに孤立している。
そこに面白がるように集る蛾やちっぽけな虫。
それらを無視して、僕は目的の飲み物を買う。
ピンと線を張ったような静寂に、ペットボトルが落ちる音がする。
とおく、
とおく、
その音は響いて君のところまで届いているんじゃないかって、思った。
踵を返して檻へと戻る途中
空を見上げた。
当たり前のようにある暗い空にキラキラと輝く星。
そこの世界はゼロだった。
キラキラの空はゼロだった。
そこに、上等の生卵を割って、出てきたまんまるでぷっくりとした卵黄が浮かぶ。
ゆらゆらと、揺れてるように映る。
お月様だ。
その温かくて良い匂いの優しさに抱かれたら、なんだか泣きそうになってしまって必死に堪えた。
悲しくなんかない。
ただ、まだ慣れないだけなんだ
君が居ない現実に。
終わりも始まりも不確かで
何が大切だったのか、何がしたかったのか、どうするべきだったのか。
何も解らずここまできたけれど。
全部が正解で
全部が不正解で
全部がキラキラで、ゼロだった。
進んでいたつもりでも、それは刹那の距離で、限りなくゼロに近かった。
今度、言葉を交わすようなことがもし、もし、あったなら。
なんて言おうか。
やっぱり、
檻に帰ったら貴女は「どこにいってたの」と言ってうんざりした顔をした。