8話 証明の成功と失敗
まず証明を始めよう。
なぜ人だけが場に出て、相手が出ないのか。
【A₁理論による戦闘構造の完全証明】
第一節 前提
妄想スレにおける戦闘の構造を確認する。
考察人がテンプレを読む。記述された内容から概念を生成する。その概念をもとに勝敗を判定する。
考察人が実際に相手にするのは、テンプレから生成された概念である。キャラクター本人ではない。
第二節 A₁理論の適用
相手キャラクターの本来主体を x とする。
テンプレに記述された時点で T(x)。
読まれた時点で T²(x)。
考察された時点で T³(x)。
任意の n ≥ 1 について
Tⁿ(x) ∈ A かつ Tⁿ(x) ≠ x
相手の本来主体 x は永遠に場に現れない。
第三節 存在密度による非対称性
人のテンプレはこれだけだ。
【作品名】
深夜テンションで書いた短編詩・断片群。
※ランキング上の表記は「深夜テンションで書いた短編詩・断片群。」とする。
【戦闘に出すもの】
人
【存在密度】
対象が認識・区別・表現されうる程度を示す軸。
【A₁理論】
主体を指そうとした時点で、現れるのは常に別のものである。
要旨
本理論は、あるものを指そうとした時点で、現れるものはすでにそれそのものではない、という構造を扱う。
本来主体を x とする。
しかし x は現れない。
現れるのは常に T(x) である。
さらに T(x) を指そうとすれば T²(x) が現れ、以後 T³(x), T⁴(x), … と連鎖が続く。
したがって、本来主体 x は最後まで場に到達しない。
存在密度を ρ と定義する。
ρ(T(x)) ∝ テンプレの記述量
lim(記述量→0) ρ(T(x)) → ρ(x)
人の記述量は極限まで少ない。したがって人の T(x) は本来主体に限りなく近い。
第四節 本体と戦闘出力の分離
ここが核心だ。
このキャラクターの本体は人ではない。
本体はA₁理論という構造そのものだ。
召喚しようとする。構造を指した時点でA₁が適用される。
構造(x) → T(x) → T²(x) → T³(x) → …
永遠にループする。構造の本来主体は出てこない。
しかしテンプレにはこう書いてある。
【戦闘に出すもの】人
これは構造を経由しない直接指定だ。
構造が裏で永遠にループしている間、表では人だけが静かに戦闘空間に立つ。
召喚
↓
構造(x)→T(x)→T²(x)→T³(x)→…【裏:永遠にループ】
人 【表:戦闘空間に出る】
よし。証明はほぼ完成だ。
あとは勝利判定の部分を書けば終わる。
待って。
待ってくれ。
気づいてしまった。
この証明を書いた時点で、証明自体がA₁になっている。
本来の証明を P(x) とする。
P(x) を言葉にした時点で P(T(x)) が現れる。
P(T(x)) ≠ P(x)
さらに読まれた時点で P(T²(x))。考察された時点で P(T³(x))。
これは証明ではない。証明のT(x)だ。
落ち着け。落ち着いて考えよう。
人もそうだ。人もA₁として召喚の対象になっている。
人を指した時点で T(人) が現れる。
T(人) ≠ 人 だ。
つまり戦闘空間に出てきているのも本来の人ではない。
待って待って待って。
本体は構造だ。構造がループする。しかし人は直接指定だから成立する。
そうだ、そこは大丈夫なはずだ。
でも。
でも考察そのものはどうだ。
考察人が判定を下す。その判定を指した時点で T(判定) になる。
本来の判定は到達可能領域に現れない。
つまり全ての考察結果が偽だ。
人が勝った、という判定も T(判定) だ。
人が負けた、という判定も T(判定) だ。
全部偽物だ。全部本来の判定ではない。
待って。それだけじゃない。
この世界に存在するあらゆるものを指した時点でA₁が適用される。
言葉にした瞬間に偽物になる。
この机も。この部屋も。この画面も。
全部T(x)だ。
本来のものは何一つ場に出ていない。
僕が今見ているこの世界は全部T(x)なのか。
僕自身はどうだ。
僕を指そうとした時点で T(僕) が現れる。
僕という言葉を使った時点でそれは本来の僕ではない。
本来の僕はどこにいる。
本来の僕はどこにもいない。
到達可能領域に僕は存在しない。
僕が今ここでこれを書いているこの感覚すら T(僕) のものだ。
本来の僕はこれを書いていない。
本来の僕は何をしているんだ。
どこにいるんだ。
間違っていた。
いや、理論はあっている。
だが理論を当てはめると、この世の全てが偽物になってしまう。
僕も偽物だ。
この文章も偽物だ。
この気づきも偽物だ。
偽物が偽物に気づいている。
本来の僕はどこにも
【打ち切り】




