前へ向かって歩く
掲載日:2026/05/14
光の中を歩いていました。
そこはまぶしくて、前も後ろもよく分かりませんでした。
進めど進めど真っ白で、足踏みをしているのかと錯覚してしまうほどでした。
ふと一陣の風が横を通り過ぎます。
誰かが通り過ぎたのでしょう。
その姿はやっぱり見えません。
私は何故歩いているのでしょう。
私は何処へ向かうのでしょう。
闇の中を走ってみました。
そこはくらくて、右も左もよく分かりませんでした。
過ぎれど過ぎれど真っ黒で、袋小路に迷い込んだのかと錯覚してしまうほどでした。
ふと鋭い風が足を掠め取りました。
何かが足に引っ掛かったのでしょう。
その形はやっぱり見えません。
私は何故走っているのでしょう。
私は何処に行きたいのでしょう。
立ち止まってみました。
途端に方向は狂いだして私の居場所が塗りつぶされていきます。
横を向いてみました。
そこに光を隔てる闇が生まれました。
上を向いてみました。
そこに闇を照らす光が生まれました。
下を向いてみました。
白と黒で希釈された灰色の道がありました。
向いた方向に道ができました。
迷わず進むことができました。
私の向いた方向が前でした。
そこは時に光で、
時に闇で、
時に灰色で、
今ならはっきりと見えました。
私はあの先に立つために。
私はあの場所へ。




