第6章 ― 攻撃的な交渉
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カズキとリリーはついにダリウスの縄張りへと到着した。 彼らの前には、堂々とした玉座に腰掛けたダリウスが座っており、挑発的な視線で二人を見つめていた。 彼の視線はカズキに固定され、リリーと共にいる見知らぬ少年の正体を無言で問いかけているかのようだった。
「そこにいるのが... 密輸王ダリウスか...」
カズキは低く呟き、目の前の男を見据える。
「借金を抱えたまま、よく俺の前に顔を出せたな、リリー。 」
ダリウスは冷たく言い放つ。
「それで、そのガキは誰だ?」
ダリウスは威圧的な視線でカズキを睨みながら、傲慢に問いかけた。
(どうして皆、僕をガキ扱いするんだ?もう16歳だぞ、立派な大人だ!)
カズキは心の中で不満を漏らす。
「俺は中沢カズキ。 トレジャーハンターだ。 」
彼はすぐに、リリーに向けられた質問へ自分で答えた。
リリーはその嘘に気づいたが、驚きや疑念を表に出さぬよう沈黙を守った。
「トレジャーハンターだと?なら、なぜギルドで見たことがない?」
ダリウスは疑わしげに問い詰める。
「俺は街の外の客に盗品を売ってる。 ギルドに来る必要なんてないはずだ。 」
カズキは臆することなく、堂々と答えた。
その自信に満ちた態度に、リリーは内心驚愕する。
(何してるの、このバカ... ダリウスを怒らせたら絶対殺される… )
「いい度胸だな、ガキ。 最近こんな奴は見てなかった。 それで今日は何の用だ?」
ダリウスは興味を示しつつ尋ねた。
「リリーの自由を買いに来た。 代わりに何が欲しい?」
カズキは真っ直ぐ答える。
ダリウスは大声で笑い出した。
「本気で友達を解放するとでも思ったのか?」
「適切な代価があればな。」
「周りを見ろ、ガキ。俺は既に富も宝も手にしている。欲しい物は何でも手に入る。この世界中の闇取引は俺を通る。珍品も秘宝も、俺が手に入れられないものはない。」
金や宝では動かないと悟ったカズキは、最後の切り札を出す。
「伝説の剣でもか?」
その瞬間、ダリウスは笑みを止め、興味を示した。
「ねえ…何言ってるの…?」
リリーが小声で囁く。
「何をほのめかしている、ガキ?」
ダリウスの声が低くなる。
「子供の頃に聞いた話だ。もしかしたら“チギリ”の場所を知ってるかもしれない。ただしリリーを解放すると約束するなら教える。」
ダリウスはしばし考え込む。
(伝説の剣…世界最高の宝。剣士でなくとも誰もが欲しがる代物。帝国戦争の英雄たちのために作られ、ドワーフが最強の金属と莫大なアエリュルムを融合して鍛えた特別な剣。それぞれ独自の設計と能力を持つ。)
(十三振り、十三人の英雄。“十三の伝説の剣”。戦争勝利の鍵だったと伝えられている。戦後、英雄たちは世を離れ、死と共に剣も消えた。場所は封印されたという。存在しないという説、墓に眠るという説、破壊されたという説、秘密のダンジョンにあるという説…諸説ある。だが戦争前、冒険者がチギリを秘密の迷宮で守護者付きで見たという噂もあった…)
しばらくしてダリウスは決断した。
「ブラフだな。そんな価値ある物の場所を知っているなら、とっくに取りに行ってるはずだ。ガキの噂話で女を解放するほど俺は甘くない。今すぐ出ていけ。さもないと殺すぞ。」
その言葉にリリーの希望は崩れ落ちた。元から無理だと思っていたのに、一瞬でも信じた自分が愚かに感じられた。
「言ったでしょカズキ…無理だった。もう行こう…」
リリーは力なく言う。
「いや、絶対助けるって約束した。」
カズキは笑顔のまま一歩前へ出た。
「何をする気だ、ガキ?」
ダリウスが声を荒げる。
「チギリの場所の伝説は本当に知ってる。でも解放する気がないなら…別の手段しかない。」
カズキは腰の剣を抜いた。
「何してるの!?」
リリーは恐怖に満ちた声で叫ぶ。
「無礼なガキめ!俺に挑む気か—」
言い終わる前にカズキは突進した。鋭い剣撃がダリウスへ向かう。ダリウスも即座に剣を抜き、防御。金属が激しくぶつかる音が洞窟に響き、カズキの圧倒的な力が火花となって弾けた。
「交渉で解決しないなら、力で解決するしかない!」
カズキは笑みを浮かべつつ押し込む。
「生意気なガキ!二人まとめて殺してやる!」
ダリウスは蹴りを放つが、カズキは後退して回避。
「なら負けられないな。」
今度は真剣な表情で構える。
ダリウスの手下たちが武器を抜き、二人を包囲する。リリーも短剣を抜く。カズキは彼女の恐怖に気づいた。
「来る前に言ったろ。大丈夫だって。もう一度言う、必ず守る。」
リリーは黙って周囲を見る。敵の数に絶望し、希望を失っていた。
カズキは全員同時に相手できないと悟り、提案する。
「俺を甘く見過ぎだ。権威を見せてみろ。決闘だ。」
「勇気だけは認める。だが相手を知らないな。それでも受けよう。」
手下たちは円形に下がり、決闘が始まる。
激しい剣の応酬。ダリウスは重く正確、カズキは素早く技巧的。火花が暗闇を照らす。カズキの決意は揺るがない。リリーを守る意志が彼を突き動かしていた。
観衆は静かに見守り、リリーの信頼も徐々に高まっていく。
しかし戦闘が長引き、カズキは息切れし始める。それでも攻撃を止めない。全力で斬り続けるが疲労が蓄積していく。
洞窟は緊張に包まれ、まるで死の舞踏のような剣戟が続く。
隙を探しながらも体は限界に近い。ついに膝をつき、呼吸を整える。ダリウスは嘲笑した。
「カズキ!!」
リリーが叫ぶ。
「それだけか、ガキ?」
(くそ…こんなに強いとは。でもまだ力は残ってる…もっとやれる!)
カズキは立ち上がり、リリーに微笑む。
「約束したろ。負けない。」
ベルトから何かを取り出す。
「無理しないで…死んじゃう…」
リリーの声は震えていた。
「大丈夫だ。」
絶望的状況でも彼の自信は揺るがない。
(どうしてこんなに自信があるの?彼は本当は誰…?)
黒い結晶を取り出し、全力で投げた。ダリウスは剣で弾こうとするが、接触と同時に暗い爆発が起こり、彼は一瞬倒れる。
(ダーク・エーテル。アエリュルムを含む黒結晶。衝撃で即爆発し、強力ではないが人を行動不能にできる。)
カズキは突進。しかしダリウスは立ち直り防御、剣を弾き返す。
「終わりだ!」
腹を狙う猛攻。辛うじて防ぐが吹き飛ばされる。
「俺に勝てると思ったか?」
カズキは震えながら立ち上がる。
(まだだ…守らなきゃ…)
剣は傷だらけでも構え直す。しかしリリーが前に出る。
「もうやめて!勝てないって!」
「戦わないと殺される…」
リリーは涙を流し抱きつく。重苦しい沈黙。
その時、矢の風切り音と爆発。煙幕が広がる。
「何が起きてる!?」
煙の中から戦士が現れる。
「息子に触るな!」
ポールだった。
「父さん!?」
「傭兵が何しに来た!全員殺せ!」
戦闘再開。手下はカズキたちへ突撃。
その瞬間、洞窟上部の裂け目から巴が降下。
「母さん!?」
「極秘任務よ!あなたこそ何してるの!」
「後で話す!」
ポールとダリウスの剣舞は激化。技と敏捷のポール、力と経験のダリウス。金色の鎧が灯りに輝く。
ポールが押し込み、ダリウスが反撃。
一方カズキとリリーは共闘し敵を倒していく。
ついにポールの剣が鎧の隙間を貫き、脇腹に命中。
「ここで終わりだ、ダリウス!」
最後の突撃もかわされ、腕を斬り落とされる。 ダリウスは絶叫し膝をつく。
「貴様…!」
彼は布で止血し応急処置。
その間に残党も制圧された。
三人はポールとダリウスを見る。
「終わりだ。 」
ポールは剣を収めた。
「必ず殺す...」
ダリウスは倒れる。
「やったね、カズキ...」
リリーは安堵の息をつく。
「ああ。 これで不条理は終わらせられる。 」
洞窟に静寂が戻る。 戦いの余韻の中、彼らは勝利とこれからの道を見つめていた。 ギルド崩壊とダリウス捕縛は大きな一歩だが、平和への旅はまだ続くのだった。




