表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末の英雄  作者: leon02d2
英雄の誕生
7/40

第5章 - 盗賊ギルド

カズキは屋根から優雅に飛び降り、追い詰められた人物のそばに着地した。 目を細めると、以前道で出会った同じ女性盗賊だと認識した。 暗い路地は、一本のランタンがぶら下がっているだけで照らされ、その光が周囲の石の壁に不気味な影を映していた。 カズキの前には、四人の武装した盗賊が暗いマントに包まれ、ゆっくりと進みながら、薄暗がりの中でその刃を脅威的に光らせていた。


挿絵(By みてみん)


カズキは状況を素早く見極めた。 盗賊たちは威圧的な構えを取り、フードで顔の一部を隠していたが、その目には明らかな悪意が宿っている。 隣の少女は決意に満ちた表情をしていたものの、長時間追われていたのか疲労の色が見えた。 それでも二本の短剣を握り、戦闘態勢を崩してはいなかった。


「あなたは誰?」

カズキの隣にいる少女が、驚きと警戒を入り混ぜた声で尋ねた。


「君を助けに来た!」

カズキは力強く言い、剣を巧みに構えた。


最後にもう一度だけ少女へ視線を送り、カズキは剣の柄を強く握りしめ、迫る脅威に備えた。


「一人につき二人だ」

カズキは敵をまっすぐ見据えながら、はっきりと言った。


二人は迫り来る戦いに備えて構える。 緊張に合わせて呼吸が自然と揃い、カズキは筋肉を張り詰めて姿勢を整える。 隣の少女も短剣の握りを調整し、決意を宿した目で近づいてくる残り二人の敵を見据えていた。


挿絵(By みてみん)


カズキは素早く状況を見極め、二人の剣士へ向かって踏み込んだ。 最初の一撃は巧みに防がれ、金属音が暗い路地に響く。 衝撃が腕に伝わったが、彼は姿勢を崩さなかった。 その間、少女は残る二人へ突進し、素早く正確な攻撃を繰り出していた。 その表情には強い決意が宿っていた。


戦闘は激しく展開していった。 カズキは敏捷かつ冷静に動き、剣を交えるたびに相手の癖を観察する。 回避、防御、反撃を正確に繰り返し、わずかな隙を待ち続けた。 狭い路地は剣戟の音を増幅し、まるで戦いの鐘のように響いていた。


対峙していた剣士の一人が、焦った様子で胸元へ斬りかかった。 カズキは横へ巧みにかわし、その一瞬、時間が緩んだかのように感じた。 相手の防御がわずかに下がる。 彼は迷わず踏み込み、滑らかな動作で男の胸を斬り裂いた。 くぐもった呻き声とともに男は倒れ、その目は驚きに見開かれていた。


もう一人が反応する前に、カズキは体を回転させ、無防備な背へ剣を叩き込む。 暗い血が噴き出し、男は膝をついてから地面へ崩れ落ちた。


その間、少女も同じ激しさで戦っていた。 動きは俊敏で無駄がなく、攻撃は速く正確だった。 カズキは彼女の戦い方に気づく。 効率的で、路地で鍛えられた経験がはっきり表れていた。


残った二人の男は仲間の敗北を見て怒りを強め、攻撃を激化させた。 カズキは計算された冷静さで応じ、防御を保ちながら次の隙を探る。 少女も隣で息を合わせるように戦い、まるで長年共に訓練してきたかのようだった。


やがて好機が訪れた。 二人が同時に挟み込もうと突進してくる。 重圧を感じながらも集中を切らさず、カズキは正確な一撃で一人の武器を弾き飛ばした。 剣が大きな音を立てて地面へ落ちる。 続けて素早く身を翻し、最後の敵の胸を斬り裂いた。 男は声もなく崩れ落ちた。


戦いの終わりとともに緊張した静けさが訪れる。 カズキと少女は並んで立ち、荒い呼吸を整えながら互いの力量を認め合った。 揺れるランタンの光が二人の瞳に映り、新たな敬意を浮かび上がらせる。


「すごい...」

少女は心からの感嘆を込めて呟いた。


カズキはようやく戦闘姿勢を解き、剣を下ろした。 少女へ目を向けると、理解を示す穏やかな笑みが一瞬浮かぶ。


「あなたは誰?」

彼女は再び問いかけ、声にはまだ警戒が混じっていた。


「中沢カズキだ」

カズキは仮面を外し、素顔を見せながら名乗った。


「あの日、私が盗もうとした少年…あなたなの?」

少女は驚きの表情で彼を見つめた。


「そうだ。君は?」

カズキはうなずき、問い返した。


「リリー…盗賊よ」

彼女はわずかな誇りと皮肉を込めて答えた。


「ここで何を? それに、あいつらは何を狙ってた?」

カズキは心配そうに尋ねた。


リリーは疲れたように息を吐いた。

「彼らのボスに大きな借金があるの。逃げようとしたら追われて…」


「かなり厄介な状況だな」

カズキは理解を示す声で言った。


「ええ、そうみたい」

彼女は皮肉な笑みを浮かべた。


「泊まる場所はあるのか?」

彼は気遣うように尋ねた。


リリーは一瞬視線を落とし、それから彼を見上げた。

「ない…でも施しを求めたいわけじゃない」


「分かってる」

カズキは静かにうなずいた。

「なら、今夜はうちに来るといい」


「迷惑じゃない?」

彼女は少し皮肉っぽく聞いた。


「全然」

カズキは軽く笑って答えた。


「ありがとう、カズキ…」

リリーは感謝を込めて言った。


「行こう」

彼は路地の出口へ歩き出した。


「この人たちはどうするの?」

リリーは倒れた盗賊たちを指した。


「そのままでいい。いずれ目を覚ますか、衛兵に見つかる」

カズキは肩をすくめた。


「分かった」

彼女は頷き、彼の後を追った。


カズキはリリーを夜の街路を通って自宅へ案内した。到着すると中へ招き入れ、静かに扉を閉める。


「質素な家ね」

リリーは中へ入りながら言った。


「給料で維持できるのはこれくらいだ」

カズキは答えた。


リリーは黒い仮面とマントを外して棚に置き、小柄な体格を露わにする。それを見てカズキは少し驚いた。


「何歳なんだ?」

彼は尋ねた。


「分からない…誕生日を覚えてないの。でも十四くらいだと思う」

彼女は少し寂しげに答えた。


カズキはその境遇に胸を痛めた。


「この生活から抜け出せるよう、俺が助ける」

彼は強い決意で言った。


リリーは驚いたが、すぐに首を振る。

「ありがとう。でも無理かもしれない…」


「大丈夫だ。必ず助ける」

カズキは優しく彼女の頭を撫でた。


「…ありがとう」

彼女は小さく呟いた。


「もう遅い。寝よう」

カズキが提案した。


「うん…」

リリーは控えめに答えた。


彼はベッドを彼女に譲り、自分は床にマットレスを敷く。


「私が床で寝てもいいのに…」

リリーは遠慮がちに言った。


「気にするな。君はしっかり休め」

カズキは譲らなかった。


「分かった…」

彼女は少し安心した様子で横になった。


二人は眠りにつく。旅の疲れからカズキはすぐに眠り、リリーはしばらく考え込んだ。どうしてここまで助けようとするのか、自分に義理などないはずだと。やがて彼女も眠りへ落ちた。


突然カズキは、灰色の空の下の荒れた大地に立っていた。周囲は暗く、不穏な気配が漂う。背後に邪悪な存在を感じ振り向くと、顔のない異形の存在が歪んだ大剣を構えていた。恐怖で体が動かない。怪物が剣を振り下ろそうとした瞬間、彼は跳ね起きた。


荒い呼吸と速い鼓動。嫌な夢の余韻が残る。窓を見ると朝日が差し込み、柔らかな光が部屋を照らしていた。リリーを起こさないよう静かに起き上がる。


「寝顔は穏やかだな…」

彼は小さく呟き、台所へ向かった。


食べ物を探して戸棚を開けるが空だった。

「そうか…旅に全部持って行ったんだ。買い足さないと」


部屋へ戻って鞄を取ると、リリーが少し身じろぎした。彼は優しく肩を揺らす。


「おはよう、リリー。よく眠れた?」

彼は静かに声をかけた。


リリーはあくびをして目を開く。

「ん…おはよう。こんな早くどうしたの?」


「妙な夢で目が覚めてさ」

カズキは答えながら鞄を背負う。


「どんな夢?」

彼女は起き上がりながら尋ねた。


「たいしたことじゃない。悪魔みたいなのを見ただけだ」


「そう…で、どこ行くの?」


「朝食を買いに」


「私も行く」


少し考えた後、カズキはうなずいた。

「分かった。準備して」


「うん!」


リリーはマントと仮面を整え、二人はニクスヘイヴンの通りを抜けて市場へ向かった。カズキは有名なパン屋ニクス・オーブンへ彼女を連れていく。


「コーヒーでも飲もう」


「いいね!」


店へ入ると、ゲイルがいつもの調子で迎えた。


「あれ、カズキじゃないか。その隣の素敵なお嬢さんは? ついに彼女か?」


「違うよ。助けてる友達だ」


「リリーです。はじめまして、ゲイル」


「好きなの選びな、今日は俺のおごりだ!」


「やった!」


二人は窓際の席へ座り、ゲイルが甘いパンとコーヒーを運んできた。


「それで、借金の相手は誰なんだ?」

カズキは真剣な表情で聞いた。


リリーは視線を落とした。

「ダリウス…」


「指名手配のあのダリウス? 金額は?」


「ここで話す?」

彼女は周囲を警戒した。


「大丈夫、ゲイルは信用できる」


彼女は小さく息を吐いた。

「金貨四十七オーリン…」


カズキはコーヒーを噴きそうになる。


「どうやってそんな額に?!」


「…話したくない」


カズキは少し考え込む。自分なら複数の任務かアメジスト級の依頼が必要だろうと。


「でも助ける。必ず」


「どうやって?」


「俺を彼のところへ連れて行ってくれ」


「正気? 傭兵だって知られたら殺されるよ!」


「君を助けたい。信じてほしい」


リリーはしばらく迷い、やがて頷いた。

「…分かった。でもマントが必要」


二人は衣料店へ向かい、変装用のマントを用意した。その後、リリーは借金の経緯を語った。戦争で家族を失い、絶望の中で差し伸べられたダリウスの貸し付け。希望だと思ったそれは、今では逃れられない鎖になっていた。


カズキは静かに聞き、危険を避けながら解決策を見つけると心に決めた。


「必ず守る」

彼は真っ直ぐ彼女の目を見て言った。


「ありがとう。一緒なら進める気がする」


覚悟を固め、二人はダリウスの元へ向かう準備を整えた。


盗賊のアジト


人通りの少ない道を抜け、街外れの森へ入る。木々が光を遮り、空気は湿って静かだった。カズキは緊張した様子のリリーの肩に手を置いた。


「大丈夫、きっとうまくいく」


「保証なんてできないでしょ」


「できない。でもそう感じるんだ」


二人は森を進み、洞窟の入口へ向かった。そこから地下トンネルへ続いているという。落ち葉の音と遠い鳥の声だけが響く。


「どうして森なんだ?」


「盗賊のアジトの入口がここにあるから」


「盗賊ギルド?」


「そう」


「ニクスヘイヴンにそんなのが?」


「昔から。場所は秘密よ」


やがて洞窟へ到着。


「洞窟って安全なのか?」


「信じて。ここから行ける」


カズキは少し眉をひそめつつも従った。暗い洞窟を進むと、巨大な地下トンネルに出る。


「これは“帝国戦争”で使われたトンネルの一つだ…」


「そう。逃亡者が見つけて、やがて盗賊の拠点になったの」


行き止まりの壁へ進み、リリーが一部を押すと隠し扉が開いた。松明に照らされた通路が現れる。


「なるほど…」

カズキは感心して入った。


扉が閉じられ、二人は奥へ進む。


「どうしてそんなに自信があるの?」


「うまくいくって信じてる」


やがて騒がしい闇市に出る。怒号、値切り声、危険な空気。盗品や密輸品、違法薬物、鎖につながれた奴隷まで並んでいた。


「想像以上だ…」


「ここでは懸賞金が地位よ」


カズキは胸を締め付けられる思いだった。彼女がこの環境で生きてきたことを受け止めきれない。


近くでは見知らぬ男が菓子を食べながら二人を観察していたが、やがて視線を外した。


「こっち」

リリーは市場から外れた通路へ案内する。


「どこへ?」


「ダリウスの縄張り」


暗い通路を進むにつれ空気は重くなる。やがて広い空間へ出た。強い光の中、盗賊たちの嘲るような視線が集まる。中央には玉座に座る大柄な男。長い黒髪、挑戦的な眼差し、黄金の鎧をまとった姿。


「あれが…ダリウス。密輸王よ」


挿絵(By みてみん)


その頃――


ポールと巴は洞窟の入口へと辿り着いた。 その影は不気味に彼らの前へ伸びていた。


「ここで間違いないの?」

巴は洞窟の入口を見つめながら、不信感を滲ませて尋ねた。


ポールは受け取っていた情報を頭の中で確認しながら、静かに頷いた。

「うん、ここで間違いない。 」


「じゃあ行こう!」

巴はそう叫ぶと、そのまま洞窟の中へ足を踏み入れた。


決意のこもった視線を交わし、二人も後に続く。 闇が徐々に彼らを飲み込み、やがて目の前には細く不気味な通路だけが広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ