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終末の英雄  作者: leon02d2
影の攻撃
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第32章 - 私たちの間で

一行の眼前にはアヴァロン市が堂々と聳え立ち、その威厳ある城壁が夕暮れのオレンジ色に染まる空と対照をなしていた。馬の蹄音が、正門へと続く石橋に響き渡っていた。輝く鎧を身にまとった衛兵たちは、旅人たちのマントに描かれた第7師団の紋章を目にすると、何の疑問も抱くことなく道を譲った。


任務からの帰路は予想以上に早かった。携行する情報の緊急性から、第7師団は予定より3日も早く街に到着した。その距離と、彼らが乗り越えてきた険しい地形を考えると、驚くべき快挙だった。


師団の隊員たちは緊張していたが、ようやく首都の安全な地に戻れたことに安堵も感じていた。洞窟の発見から慌ただしい脱出に至るまでの、ここ数時間の重圧が、依然として彼らの上にのしかかっていた。しかし、奇妙な気配が空気に漂っているようだった。まるで、その静けさは表面的なものに過ぎず、街の高層ビルの間を吹き始めた冷たい風によって押し殺されているかのようだった。だが、考え込む時間はない。王に報告しなければならない。早ければ早いほど良いのだ。


一行が宮殿の門に近づくにつれ、堂々とした大理石の塔が衛兵のようにそびえ立ち、訪問者の到着を見守っていた。城壁はかつてないほど高く見え、その場の重々しさを映し出していた。彼らは確固たる足取りで前進し、忠誠を誓う王に報告しようとしている任務の重みを感じていた。


一行は堂々とした態度で中へ入った。その足音は宮殿の広間中に響き渡り、重厚な扉は彼らの背後で静かに閉ざされた。まるでその部屋が、重大な啓示を受け入れる準備をしているかのようだった。その空間は厳粛な雰囲気に包まれており、壁には過去の戦いや勝利、栄光を物語る古びたタペストリーが飾られていた。高い窓から差し込む柔らかな光が金色の表面に反射し、光と影の戯れを生み出し、その瞬間の緊張感をさらに高めていた。


ついに彼らは広間の中心にたどり着いた。そこにはアヴァロンの玉座が威風堂々とそびえ立ち、部屋の柔らかな光を反射する宝石で飾られていた。そこには、威厳に満ちた姿で座るアウレリウス王がいた。比類なき存在感を放つその男は、第7師団の隊員たちを、彼特有の冷静さとともに、しかし今まさに起きようとしていることが極めて重要であることを熟知している者ならではの鋭い眼差しでじっと見つめていた。


王の右側には、赤毛に鋼のような眼差しを宿したブライクが立っており、炎の力でいかなる脅威にも立ち向かう覚悟ができていた。左側には、エドガーが絶妙な沈黙を保ち、いつものように動じない姿勢で、君主の静かで守護的な力を体現していた。そして玉座の後方には、見張りのような鋭い眼差しで、グループのあらゆる動きを観察するネイトがいた。その存在は、ブライクの光とエドガーの影との均衡を映し出していた。


その場には手に取るように感じられる緊張感が漂い、オーレリウス王は、権威と好奇心を併せ持つ声で、ついに口を開いた。


「ようこそ、第七師団。これほど早く戻ってくるとは思わなかった。」


その言葉が部屋中に響き渡ると、持ち帰った情報の重みを背負った部隊の面々は、発見したことを報告する準備を整えた。


ニラが真っ先に前に進み出た。事態の深刻さにもかかわらず、彼女の姿勢は完璧で、眼差しは揺るぎなかった。彼女は軽くお辞儀をし、王に相応の敬意を表してから、報告を始めた。


「陛下、サフィラおよびその周辺の状況に関する緊急の報告に参りました。任務の過程で、我が国に潜入した悪魔たちの存在を確認いたしました。それは一、二匹にとどまらず、複数の都市に広がるネットワークであり、明らかに我が軍の内部への潜入と破壊を目的とした戦略を敷いております。」


ナイラの言葉が響き渡るにつれ、部屋の緊張感は高まった。玉座を取り囲む王室騎士たちの存在感は一層強まり、ブライクとエドガーは静かに視線を交わし、一方、定位置にいたネイトはそれぞれの反応を注意深く観察していた。


アウレリウス王はしばらく沈黙を守り、ニラをじっと見つめていた。その深く鋭い眼差しには、懸念と決意が入り混じっていたが、弱さの一片も覗かせることはなかった。ついに王は口を開き、重厚で威厳ある声が静寂を切り裂いた。


「事態は深刻だ。だが、私はすでにそれを予感していた。」 第一師団はすでに動員され、奴らがどこにいようとも殲滅するよう命じられている。


第七師団の隊員たちは、互いに素早く視線を交わした。王は単に事態に対応しているだけではない。彼はすでにこの脅威を予見していたのだ。それは、王国が直面している危険の度合いを物語っていた。ニラは姿勢を崩さず、再び一歩前に踏み出し、王をまっすぐに見つめた。


「陛下、それは結構ですが、この浸透の規模を把握することが不可欠です。単に彼らを追い出すだけでなく、その活動の手口を解明する必要があります。彼らは幾重にも隠れており、そのネットワークは複雑です。第一師団は戦場では有効かもしれませんが、綿密な情報活動が必要です」


壁にもたれかかり、腕を組んでいたアユミが、気楽なため息をつきながら口を挟んだが、その声には真剣な響きがあった。


「そうよ、もし彼らがすでに要所にスパイを潜入させていたら? 私たちの動きを先読みし、私たちが反応するより先に首都を混乱させるのは、とても簡単でしょう。」


「アユミの意見に賛成だ」――リアムは一歩前に踏み出し、険しい表情を浮かべた。「陛下、第一師団は強力かもしれませんが、あの悪魔たちは戦略家です。慎重に行動しなければ、彼らの思うがままに振り回されてしまうかもしれません」


エレナは躊躇いながらも、ついに声を上げ、神経質に身振りを交えて言った。


「そ、それなら、もしすでに市民が操られたり脅迫されたりしているとしたら? つまり、疑わしい者をただ攻撃するわけにはいかないでしょう。知らず知らずのうちに巻き込まれている無実の人々がいるかもしれないし……」


彼女の隣にいたリアは、腰に手を当て、いたずらっぽい笑みを浮かべて軽く首を傾げた。


「もちろんよ、エレナ。それに、誰が知ってる? もしかしたら、悪魔たちは街の猫たちまで操っているかもしれないわ。念のため、猫ちゃんたちにも尋問すべきかしら?」 彼女は笑いをこらえようと、ウインクした。


エレナはすぐに顔を赤らめ、抗議するように手を振った。


「そ、そんな意味じゃなかったの! ただ可能性を考えていただけ……」


リヤは微笑みを絶やさず、彼女の肩をポンと叩いた。


「リラックスして、冗談だよ。でも、怪しい猫が現れたら、任務は君に任せるよ。」


それまで黙っていたカズキは、まるで目に見えない影が自分にかかっているかのように、胸に奇妙な圧迫感を覚えた。情報を処理し、散らばった点をつなぎ合わせようとしながら、彼はわずかに目を細めた。何かがおかしい。そして、空気中の張り詰めたような緊張感として、悪魔たちの存在をほとんど手触りがあるかのように感じ取っていた。


それまで沈黙を守っていたカズキは、まるで目に見えない影が自分の上にのしかかっているかのように、胸に奇妙な圧迫感を覚えた。情報を処理し、散らばった点をつなぎ合わせようとしながら、彼の目はわずかに細められた。何かがおかしい。そして彼は、まるで空気中の張り詰めたような緊張感として、悪魔たちの存在をほぼ実体があるかのように感じ取っていた。


彼は周囲の第7師団の隊員たちを見渡し、頭の中で思考が駆け巡った。サフィラの洞窟で目にした光景、ドレイゴンが情報を隠蔽し目撃者を抹殺しようとした様子、難破船――すべてが不気味なほどに、一つの筋道へとつながり始めていた。これは単に悪魔を狩るという問題ではなく、彼らがどのような手口で動いているかという問題だった。


カズキはためらうことなく一歩前に踏み出し、部屋中に漂っていた沈黙を破った。彼の声は大きくはなかったが、確信に満ちていた。


「陛下、皆様……」彼はそう切り出し、緊張が高まるのを感じながら一呼吸置いた。「何かがおかしい。悪魔たちはただ潜入しているだけではない……彼らはすでにここ、首都に、我々の間にいるのです」


その瞬間、広間は凍りついたかのようだった。皆の視線が、その声の真剣さに驚きながら、カズキへと向けられた。アウレリウス王は眉をひそめ、鋭い眼差しをカズキに向けた。


「どういう意味だ?」王は尋ねた。その声には緊張がにじみ出ており、部屋には高まる不安が充満していた。


カズキは、自分に向けられたすべての視線の重みを感じたが、動じなかった。口にしようとしている言葉の一つひとつが、彼自身の確信の重みを帯びているようだった。信じてもらうのは容易ではないと彼は分かっていたが、パズルのピースが不気味なほどにはまっていくのを感じていた。


彼は深く息を吸い込み、それでもなおアウレリウス王をまっすぐに見つめ続けた。


「これは単なる潜入の問題ではない……」彼は声を低くして続けた。「サフィラの洞窟で見たんだ。サフィラに潜入した悪魔がいた。そして、洞窟に難破した船があった。」 あいつはただそこにいただけじゃない。まるで見張り役のように、侵入の痕跡を隠蔽し、何かを察知した目撃者を排除していた。そして……それが漁師の失踪の原因だと我々は考えている。


彼は言葉を切り、その言葉が形を成すにつれて、部屋の緊張感は高まっていった。


「奴らはただ潜入しているだけじゃない。おそらく数週間、いや数ヶ月前からここにいるはずだ。大攻勢をかける絶好の機会を待っているのだ!」カズキは、今や皆が耳を澄ませている第7師団の隊員たちを見渡し、それから王へと視線を戻した。「我々の目に映っているのは、氷山の一角に過ぎない。彼らはすでにここにいる。要所に潜入しているのだ。彼らは変装し、我々の間に紛れ込んでおり……いつ攻撃を仕掛けてもおかしくない!」


カズキの言葉に続く沈黙は、耳をつんざくほどだった。部屋にいる全員が、その言葉を頭の中で整理しているようだった。その衝撃的な事実の重みが、押し寄せる波のように彼らを襲っていた。アウレリウス王は玉座にじっと座り、カズキをじっと見つめていた。緊張感は手に取るように感じられ、まるで空気そのものが事態の深刻さで重くのしかかっているかのようだった。


「太陽の騎士」ブライクが一歩前に踏み出し、その目は決意に燃えていた。彼は、堅く、しかし明らかに懸念を帯びた声で言った。


「本当にそうなのか、カズキ? 君の言葉によれば、我々は城壁の内側で破滅の瀬戸際に立っているということになるが」


カズキは頷き、その目は鋭く輝いていた。


「はい、閣下。あらゆる兆候がその結論を示しています」


それまで落ち着きを失っていたリヤが、呟いた。


「怖い……相手は誰だってあり得るわ」


ニラはリヤの肩に手を置き、決意を込めて答えた。


「相手が誰であろうと関係ない。どんな犠牲を払っても、我々が彼らを食い止める」


「もちろんそうするわ」アユミは肩をすくめて答えた。「必要なのは、目を光らせ、正しい戦略を立てることだけよ」


「そう!準備と戦略さえあれば、どんな敵でも倒せるわ!」エレナは自信たっぷりに拳を突き上げて付け加えた。「それに、もしかしたら、戦わずに解決できるかもしれないわ。悪魔たちも、自分たちが間違った道を進んでいると気づくには、論理的な説得材料さえあればいいのかもしれないし」


リヤはその返事に思わずむせそうになり、笑いをこらえた。


「ああ、もちろん、エレナ。外交会議を開いて、お茶を振る舞いながら、彼らの人生選択について話し合おうじゃないか」


エレナは、ライアの冗談めいた口調に気づかずに微笑んだ。


「そうしたら最高じゃない? 流血も減るし、平和も増えるわ!」


リアムはため息をつき、腕を組んだ。


「それは今まで聞いた中で最も非現実的な楽観論だが……その信念には感服するよ、エレナ」


それまで玉座の後ろで黙っていた「月の騎士」ネイトが、一歩前に踏み出した。普段は控えめな彼の存在感は、今や権威と切迫感に包まれているようだった。彼は腕を組むと、まるで既に不審なものを探しているかのように、鋭い眼差しで広間を見渡した。


「もし悪魔たちがすでに我々の間に潜んでいるのなら、一秒一秒が重要だ」彼の声は穏やかだったが、決意に満ちていた。「直ちに都内を巡回し、不審な動きをすべて調査する。もし彼らがここにいるなら、長く隠れ続けることはできないだろう」


アウレリウス王は頷き、厳しい表情を浮かべた。


「そうせよ、ネイト。何か見つけたらすぐに報告しろ。そして、気を付けろ」


それ以上何も言わず、ネイトは敬意を表すように軽く頭を下げ、ほとんど足音も立てずに広間を後にした。その去り際の迫力は、事態の深刻さを反映しているかのようであり、彼が大きな扉の向こうに姿を消すまで、全員の視線が彼を追った。


王は第7師団の方を向き、厳しい表情を浮かべつつも、その瞳には一抹の確信が宿っていた。


「この情報を持ち帰ったことは、素晴らしい仕事だ。さあ、警戒を怠るな。解散とするが、いつでも行動に移せるよう、全員準備を整えておくこと。」


ナイラが一歩前に進み出て、軽く頭を下げた。


「承知いたしました、陛下。」


一行は王の間を出ていく際、一人ひとりがその場の緊張を肩に背負っていた。首都は今や静寂に包まれた戦場と化しており、彼らはいつ何時、隠れた敵と対峙することになってもすぐに対応できるよう、身構えていなければならないことを理解していた。


扉をくぐると、彼らの足音が城の廊下に響き渡った。命令は明確だったが、悪魔たちの次の攻撃がいつ、どこで起こるのかという不確実性が、全員の心に重くのしかかっていた。彼らにできることは、ただ待ち、避けられない事態に備えることだけだった。


宮殿の正門が彼らの背後で閉ざされ、その重々しい歯車の音が、事態の深刻さを思い知らせるかのように響き渡った。第7師団は首都の街を黙って歩き、一人ひとりがそれぞれの思考に没頭していた。空は淡い灰色に染まり始めており、周囲の人々の喧騒は、彼らが今まさに報告した事柄の前では、ほとんど無関係なものに思えた。


カズキは左右を見渡し、通り過ぎる市民たちの気のない表情を観察した。果物でいっぱいの籠を運ぶ若い女性、買い手候補の注意を引くために大声で叫ぶ行商人。すべてがあまりにも普通で、差し迫った危険とは無縁のように見えた。


「奇妙だと思わないか?」リアムは周囲の建物を見渡しながら、沈黙を破った。「ここがこれほど穏やかに見えるなんて。ほんの数歩先に悪魔が潜んでいるかもしれないと分かっているのに。」


「奇妙だし、腹立たしいわ」リアは道端の小さな石を蹴りながら答えた。「彼らは何の心配もなく暮らしているのに、僕たちはみんなを救うという重荷を背負っているんだ」


「そうあるべきなのかもしれないわ」アユミは、どこか遠くを見つめるような表情で言った。「もし彼らが僕たちの知っていることを知ったら、街はパニックに陥るだろうから」


先頭を歩いていたニラは、深く息を吐いた。


「でも、その『パニック』は僕たちの助けになるかもしれない」 見張っている目が増えれば増えるほど、不意を突かれる可能性は低くなる。


カズキの横を歩くエレナは、落ち着かない様子だった。彼女は周囲を見回し、まるで風景の中に迷い込んだかのように見えた。やがて、彼女は口を開いた。


「たとえ短い間だとしても、彼らが自分の人生を生きているのは良いことだと思うわ。私たちが仕事をきちんとこなせば、彼らが知る必要なんてないんだから」


カズキは軽く頷いたが、その表情には不安が浮かんでいた。敵はすでに首都に深く入り込んでおり、どんなに努力しても全員を守ることは不可能だと、彼はどうしても考えてしまうのだった。


「じゃあ……これからどうする?」リアはグループを見渡しながら尋ねた。


「いい質問だ」リアムは腕を組んで答えた。「明確な目標がない。ただ『警戒を怠らず』待つだけだ」


「待つのは嫌だ」とリヤが不満を漏らすと、ニラは思考を整理しようとしながら地平線を見つめていた。


賑やかな通りを歩いていると、前方から響く高くて苛立った声に会話が遮られた。


「あ、やだぁ!」 「あと少しだけここにいられないの?!」――その声は甲高く、苛立ちに満ちており、市場のざわめきの上に響き渡っていた。


「今すぐ行かなきゃいけないって言ったでしょ」――別の声が返ってきた。その声は堅く、苛立ちに満ちており、まるで刃物のように鋭かった。


第7師団はすぐに足を止め、その声の方へと振り返った。少し先、市場の出口の一つ近くで、ある光景が目を引いていた。長い黒髪の少女が、明らかに苛立った様子で、両手を腰に当てていた。彼女の目は頑固な光を放ち、彼女を動かせようと腕を掴んでいる年上の青年と対峙していた。


「変な光景だな……」リアは、何か興味深いことを理解しようとしている子供のように、好奇心に満ちた表情で首を傾げながら呟いた。


「些細なことのように見えるけど……確認してみよう」カズキはそう提案し、目を細めた。その口論の激しさには、単なる喧嘩以上の何かがあるかのような、彼に微かな不快感を与えるものがあった。


ゆっくりと近づきながら、一行は会話の調子に耳を澄ませていた。進むにつれて、言葉がより鮮明に響いてくる。


「でも、ここに着いたばかりじゃない!もう少しだけここにいられないの?」明らかに不満そうな少女は、再び声を張り上げた。その挑発的な態度とは対照的に、彼女の表情はまるで子供そのものだった。


「ユキ、もう言っただろ!今すぐ行かなきゃ!」少年は切迫感と苛立ちが混じった口調で答えた。まるで彼女が走り去ってしまうのを恐れるかのように、指で少女の腕をぎゅっと握りしめていた。


少女は大きく鼻を鳴らし、大げさな仕草で腕を組んだ。


「あぁ、もういいわよ、うるさい!今行くから……」彼女は、苛立ちと諦めが入り混じった表情で顔を背けながら、ぶつぶつと呟いた。


二人の間の緊張は、ただ見ている者にとってもはっきりと感じられた。カズキはニラと視線を交わした。ニラはすでに、その鋭く分析的な眼差しで状況を測っているようだった。一方、エレナは少女の大げさな態度を見て、笑いをこらえているようだった。


「単純なことのように見えるが、注意を払うことに損はない」とリアムは低い声で言った。その手は常に警戒態勢を保ち、刀の柄に置かれていた。


第7師団は引き続き間近で観察を続け、慎重な足取りで現場に近づいていった。その口論には何か異様な雰囲気が漂っており、言葉の表層の向こうに何かが隠されているかのようだった。


第7部隊が近づくと、二人の声は次第に小さくなっていったが、少女の姿勢からは不安がにじみ出ていた。部隊の存在に気づくと、彼女は硬直した。赤い瞳が一瞬輝き、その表情は苛立ちから不安へと変わった。ユキは素早く動き、少年のかげに隠れた。まるで保護を求める子供のように、彼の服の裾をそっと掴んだ。


「レオン……」彼女はほとんど聞こえないほどの声で呟いた。その声には恐怖がにじみ出ており、彼女の目は彼の肩越しに第7師団を覗き見していた。


一方、レオンは全く動揺している様子を見せなかった。計算された動きで、彼は右腕をユキの周りに回し、彼女を保護するように引き寄せた。彼の赤い瞳は、近づいてくる集団を冷たく計算高く見つめ、空いている方の手を腰の刀の鞘の近くに軽く添えた。


その刀は紛れもないものだった。銀色の細工が施された黒い刀身、暗色の革で優雅に巻かれた柄は、謎と力のオーラを放っていた。カズキはすぐにそれに気づき、装飾の微かな輝きに視線を釘付けにした。あの刀は特別なものだった――市場をぶらついているような者が持つような、ありふれた武器では決してなかった。


「用件は?」レオンが尋ねた。その声は低く、しかし力強く、鋼の糸のように空気を切り裂いた。彼は軽く頭を下げたが、その視線は鋭いままで、部隊のメンバーたちを次々と見渡していた。


カズキは一歩前に踏み出し、落ち着きながらも警戒を怠らない姿勢を保った。彼は和解を求めるとうようとしたジェスチャーで両手を上げ、高まりつつある緊張を和らげようとした。


「大したことじゃない。ただ、言い争いの声が聞こえたから、大丈夫かどうか確かめたかっただけだ」彼の声は友好的だったが、その目はレオンの姿勢や、彼が少女を抱きかかえる様子を絶えず観察していた。


「大丈夫だ」 「心配はいらないよ」――レオンは議論の余地を与えないように、即座に答えた。彼はユキに腕を軽く押し当て、事態は収拾がついていると彼女に安心させようとした。


「ああ、もちろん……――」リヤが口を挟み、不思議そうに首を傾げた。「ただ、ひどい喧嘩に見えたからさ。余計なことはしたくないんだけど……まあ、人間ってそういうものだからね、好奇心旺盛で」 「彼女の明るい声は、空気に漂う緊張感とは対照的だったが、その目は、レオンの背後に不快そうに身を縮めているユキをじっと見つめていた。


観察眼の鋭いニラは目を細め、その視線はレオンの平静を装った表層を突き刺すように見透かしていた。何かがおかしい。彼の些細な動きの一つひとつから、彼女はそれを感じ取っていた。


一方、アユミはまるでその状況に全く興味がないかのように、怠惰にあくびをしたが、その指はこっそりと武器の鞘の近くに置かれていた。


「その剣は……面白いね」カズキはさりげなくそう言い、軽く顎を動かしてレオンの刀を指した。「こんなもの、毎日見られるものじゃないよ」


レオンは片方の眉を上げた。不快感を隠すために、ほんの少しだけ姿勢を緩めた。


「ただの剣だ」彼は淡々とした口調で、しかし断固とした口調で答えた。彼の手は刀の柄をわずかに握りしめ、いつでも抜刀できる態勢を整えているかのようだった。


嵐が迫るかのように、空気に緊張が漂っていた。カズキは、この二人には何か特別な関係があることを察していたが、あまりに踏み込みすぎると、とんでもない事態を招きかねないことも理解していた。


「ああ、邪魔はしないよ」カズキはそう言うと、少し後ずさりしたが、視線はレオンから離さなかった。「……何をしてるにせよ、頑張ってくれ」


「ありがとう」とレオンは答えた。その声には皮肉がにじんでいたが、彼の視線は依然としてそのグループに釘付けで、彼らが十分に遠ざかるまで、彼らの動きの一つひとつを観察し続けていた。


第7師団が再び歩き出すと、ニラはカズキに視線を向けた。


「何かがおかしいわ」彼女は、レオンとユキがいた方向から視線を外すことなく、小声で言った。


カズキはただ頷き、頭の中で歯車が回り始めていた。


レオンは、そのグループが視界から消えるのを待ってから、まだ明らかに緊張しているユキの方を見た。


「行こう」――彼はそう言うと、彼女の腕を軽く握り、市場の出口へと導いた。


ユキは肩越しに最後の一瞥を投げかけ、第7師団の面々が人混みに消えていくのを見て、心臓が激しく鼓動した。一瞬、自分たちが発見されてしまうのではないかと本気で思ってしまったのだ。


第7部隊が市場を歩き続ける間、一行は沈黙を守り、それぞれが自分の考えにふけっていた。普段なら気楽なあゆみでさえ、いつもより警戒心を強めており、何かがおかしいかのように周囲をじっと見回していた。


カズキが沈黙を破り、注意を引かないよう小声で口を開いた。


「あいつらは違う」彼の声には警戒の色がにじんでいた。「特にあの男は……」


「彼の剣……」ニラが軽く眉をひそめて言った。「ただの普通の武器じゃなかった。そこから何か……奇妙なものが感じられたの」


「それに、必要ならすぐにでも戦える態勢だった」リアムが付け加え、腕を組んで、あのカップルを置いてきた方向を肩越しに振り返った。「あの子も緊張しているようだった。ただの街頭喧嘩じゃなかった」


「たぶん、ただトラブルに巻き込まれた旅人たちだろう」とエレナは言ったが、その口調は不確かだった。まるで、もっと深刻な事態の可能性を遠ざけるために、そう信じたいかのように。


一方、リヤは興味深そうに、ぼんやりと空を見上げながら話した。


「もしただの旅人なら、なぜあの少女は私たちを見たとき、あんなに怯えた様子だったの? 彼女は彼の背後に隠れるようにしたわ……まるで、私たちが厄介者になるかもしれないと知っていたかのように。」


カズキはため息をつき、首の後ろを手のひらで撫でた。


「証拠は何もない。それに、通りすがりの人たちに詰め寄るのが俺たちの仕事じゃない。」彼は、まだ心配そうな顔をしているニラを見た。「でも、そのことは心に留めておこう。また彼らと出くわしたら、注意深く見張るよ」


一行は歩き続けた。まるでその話題を置き去りにしようとするかのように、彼らの声は再び人混みのざわめきに溶け込んでいった。


一方、市場の出口の一つでは、レオンとユキが早足で歩いていた。二人は離れていく間も、足並みをほぼ揃えていた。


「大丈夫か?」レオンはユキを横目で見て尋ねた。


「うん……ただ緊張しちゃっただけ。あの人たちは……」彼女は下唇を噛みながら言葉を濁した。「私たちを認識されるかと思ったの」


「認識されてないよ」レオンはそう断言した。その声は穏やかだったが、長年の経験がにじむような確固たる響きがあった。「でも、あの娘は静水のオーラを感じ取ったはず。彼らの目には、私たちは不審者に映ったんだ」


「もし彼らが……私たちの正体を知ったら?」ユキは囁くような声で尋ねた。


レオンは一瞬立ち止まり、彼女の頭に手を置いて、自分の目を見るように促した。


「それなら、いつも通りやるさ。生き延びるんだ。でも心配するな、すぐに奴らにはもっと大きな問題が起きるから。とりあえず、ここから一刻も早く脱出する必要がある」


ユキは不安げながらも、レオンを信じてうなずいた。二人は歩き続け、地平線に沈みゆく太陽の光が弱まり始める中、道へと消えていった。


一行が戻ると、第7師団が前進するにつれて、市場の喧騒はより静かな街並みに変わっていった。空気は少し和らいだようだったが、それでも不穏な気配が彼らの上に漂っていた。


「戻ったら、これを報告すべきかな?」 あゆみが沈黙を破って尋ねた。


カズキは少し考えてから答えた。


「報告すべきことは何もない。まだな」彼は前を見据え、決意に満ちた表情を浮かべた。「だが、何かが起きたら無視するつもりはない」


ニラは黙って歩きながら、夕暮れが落とす影を眺めていた。あの出会いには、どうしても頭から離れない何かがあった。


太陽が沈み、空がオレンジ色や紫色に染まっていく中、一行は旅を続けていた。あの一見何気ない出会いが、はるかに大きな何かの始まりとなることを、彼らはまだ知らなかった。



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