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終末の英雄  作者: leon02d2
影の攻撃
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特別章 - アヴァロン第1部

第一師団の本部は、ほとんど荘厳といえる静けさに包まれていた。武器の点検音や、石床を打つ軍靴の響き、ときおり漏れるささやきだけが、その沈黙をわずかに揺らしている。空気には規律と力が満ち、隊員たちはまるで精密に組み上げられた機械のように、無駄のない動きで任務をこなしていた。だが、その静寂はしばしば、リュウザキの苛立った大声によって切り裂かれていた。


— ねぇ〜、信じらんないニャ〜!アエテリスの前線から引き上げて、こんなとこに戻されるなんてニャ!国家安全の任務なんかで時間を無駄にしてる間に、戦場で悪魔どもをぶっ潰せたのにニャ〜! — 彼はそう不満をぶちまけながら、干し肉の欠片を口に放り込み、椅子にどっかりと腰を沈めた。軽く打ちつけられる爪が、肘掛けに小さな音を立てる。


周囲の隊員たちは口をつぐんだ。リュウザキの機嫌が悪いときは、好きに文句を言わせておくのが一番だと、皆よく知っている。だが、シャオはそうした不満を聞き流すような性格ではなかった。


— 黙れ、リュウザキ。— シャオは冷たく鋭い声で言い放ち、鎧を固定する革紐を静かに締め直した。その堂々たる姿は、周囲に畏敬と恐怖を同時に抱かせる。氷のような視線をリュウザキに向け、続ける。— アヴァロンに差し迫った攻撃の情報がある。お前は民の安全を気にかけるべきだ。


リュウザキは鼻を鳴らし、腕を組んで大げさに頭を後ろへ反らせた。


— ニャ〜!そんなの、第三師団を送ればいい話だニャ!あいつら、狩りと排除の専門だろニャ?なんで第一師団がこんな仕事をするんだニャ?俺たちは攻めるためにいる、悪魔をぶっ壊すためにいるんだニャ!首都の子守なんてするためじゃないニャ〜! — その声には苛立ちと軽蔑が混じっていた。


シャオは腕を組み、表情一つ変えず、完璧な姿勢を崩さない。その声は本部内に重く響く。


— この決定は軽々しく下されたものではない、リュウザキ。前線での最後の戦いを見ただろう。我々が討った副将は、消える前に重要な情報を残した。アヴァロンへの攻撃が迫っていると、そしてそれは上位の将軍によって率いられる可能性があると。ベテランだ。


リュウザキは眉を上げ、まだ不満げではあるものの、その情報には興味を示した。


— ベテランの将軍ニャ〜…それなら騒ぎになるのも納得だニャ。でも、死にかけの悪魔の言葉を本気で信じてるのかニャ?


シャオは冷然と彼を見据え、その鋭い眼差しに、リュウザキはわずかに身を引いた。


— 無視しないだけの価値はあると判断している。王に直接報告し、直々に調査を命じられた。もしこの情報が真実で、ベテランの将軍が関与しているなら、この件に対処できるのは我々以外にいない。


その言葉の後、本部にはしばし沈黙が落ちた。周囲の隊員たちは、二人のやり取りを静かに見守っている。リュウザキは不満げな様子を崩さないまま、それでもシャオの理屈には納得したようだったが、その表情にはなお苛立ちが残っていた。


— ニャ〜、分かったニャ、分かったニャ。でももし空振りだったら、この退屈の分はきっちり埋め合わせてもらうからニャ〜。— 彼はようやく折れ、肩を鳴らしながら大げさにため息を吐いた。


シャオはその言葉を完全に無視し、他の隊員たちへと向き直る。その声音は、先ほどよりもさらに実務的で無駄がない。


— 準備しろ。直ちに出発する。やるべきことは多い。


第一師団の面々は、互いに決意のこもった視線を交わすと、すぐさま動き出した。リュウザキも文句をこぼしながら、自分の持ち場へと向かう。任務の重圧が静かにのしかかり始めていたが、攻撃部隊としての自負が、彼らの意識を揺るがせることはなかった。


全員の準備が整うと、シャオは第一師団の隊員たちを本部外の中庭へと集めた。すでに夜はアヴァロンを覆い、街は深い闇の帳に包まれている。揺れる街灯の灯りと、澄んだ空に浮かぶ月の冷たい光だけが、静寂の中で淡く周囲を照らしていた。


リュウザキはいつものように後方に立ち、手をポケットに突っ込み、無関心そうな表情を浮かべている。その一方で、シャオは最後の確認を行っていた。月光の下で、そのシアンの瞳は鋭く輝き、揺るぎない決意を映し出している。


— 迅速に、かつ目立たずに動く。各自、指定された区域を調査し、敵対活動の兆候を確認しろ。失敗は許されない。— シャオの声は力強く、中庭全体に響き渡り、すべての隊員へと届いた。


隊員たちは静かにうなずき、誰一人として副隊長の言葉に異を唱える者はいない。リュウザキでさえ、気だるげにため息をつきながら一歩前へ出て、手に装着した金属の爪を調整した。


— ニャッシュ、分かってるニャ、シャオ。隠密行動、騒ぎは起こさない…まあ、目立つのが好きってわけでもないしニャ〜。— 皮肉混じりにそう言いながらも、その瞳の奥に宿る緊張は、この任務を軽く見ていないことを物語っていた。


すべての準備が整うと、シャオは片手を静かに掲げ、作戦開始の合図を送った。彼らは一切の音を立てずに動き出し、その姿は夜の闇の中へと溶けるように消えていく。つい先ほどまで活気に満ちていたはずの王都の通りは、今や人気を失い、第一師団の隊員たちの確かな足取りも、ほとんど音としては残らなかった。


夜風が静かに吹き抜け、夜咲きの花の香りを運びながら、鎧と武器がわずかに触れ合う微かな余韻を漂わせる。満月が彼らの行く手を照らし、その銀色の光が一行を淡く包み込む。やがて彼らはアヴァロンの城壁から離れ、安全圏の外へと足を踏み入れ、深い薄闇の中へと沈んでいった。


先頭を進むのはシャオ。そのすぐ後ろにリュウザキが続き、さらにその後方に他の隊員たちが連なる。全員が神経を研ぎ澄ませ、まるで夜に紛れて獲物を狩る影のように、静かに、しかし確実に進んでいく。


こうして第一師団は闇の中へと消えた。薄闇に潜む捕食者のごとく、その存在を悟らせることなく、アヴァロンの闇に潜むいかなる脅威にも対峙する覚悟を胸に秘めて。



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