第23章 - 任務の失敗
読者の皆さまへ
しばらくの間、物語の更新が突然止まってしまい、本当に申し訳ありませんでした。主な理由は、私の仕事環境でいくつかの問題が起きてしまい、執筆と翻訳を続ける時間を確保することが難しくなっていたためです。
楽しみにしてくださっていた方々には、ご心配とご迷惑をおかけしてしまいました。改めてお詫び申し上げます。
その代わりとして、これからしばらくの間は更新を**毎日投稿**の形で再開し、少しでも読者の皆さまにお返しができればと思っています。
これからも『Hero of End』をどうぞよろしくお願いします。皆さまの応援や感想が、大きな励みになっています。
リアムとニラは、ヒカルが姿を消した地平線から目を離すことができず、その場に立ち尽くしていた。沈黙は永遠に続くかのように感じられ、遠くから聞こえる風の音と、周囲に静かに降り積もる雪の音だけが、その静寂を破っていた。二人は、寒さだけでなく、その瞬間の重圧のせいで、息をするのもやっとだった。
ニラはようやく、まだショック状態のまま動き出し、崖の端までためらいがちに数歩進んだ。冷たい風が顔を叩いたが、彼女はその感覚を無視した。彼女の目は、下にある白い広大な空間をくまなく探り、ヒカルの痕跡を探していた。彼が本当に、鳥のように飛び去って消えてしまったなんて信じられなかった。信じられないという気持ちが彼女の心を重く圧迫した。彼女は拳を握りしめ、胸の中で募る苛立ちを感じた。
「もし私に翼があれば……」その考えが矢のように彼女の脳裏を貫いた。「彼の後を追っただろう。彼を捕まえていたのに。」ほんの一瞬、彼女は吸血鬼の翼の力を、かつて自分の一部だったその力を、記憶の中で感じ取れるような気がした。今、残っているのはただ虚無、失われた何かの影だけだった。
「彼は本当に去ってしまったのね……」彼女は呟いた。その声は低く、風の音にほとんどかき消されそうだった。
その瞬間、リアムが近づいてきて、彼女の横に立ち止まった。彼も下を向いたが、すぐに視線をニラへと移した。その瞳には、心配と疑念が入り混じっていた。
「ああ、彼は本当にいなくなったんだな……」リアムは、ほとんど信じられないという口調で答えた。
雪の上を走る足音が近づき、ナイラとリアムの間にある張り詰めた沈黙を遮った。二人は振り返り、カズキと向き合った。カズキは背筋をピンと伸ばして現れ、そのすぐ後ろにはアユミとリヤが続いていた。三人は息を切らしており、追跡で明らかに疲れ切っていた。マントは雪に覆われ、その瞳には切迫感が宿っていた。
「あいつはどこだ?」カズキは遠回しな言い方はせず、まるでヒカルがまだそこにいるかのように辺りをきょろきょろと見回しながら尋ねた。「捕まえたのか?」
ニラは深く息を吸い込み、腕を組むと、リアムに一瞬目を向けてから答えた。
「もういないわ」彼女の声には、隠しきれない苛立ちがにじんでいた。「ええ、文字通り、飛んで行ってしまったの」
アユミは眉をひそめ、リヤと困惑した視線を交わした。一方、カズキは目を細めた。
「飛んで?」彼は信じられないという口調で繰り返した。「どういう意味だ? 何かアーティファクトでも持ってるのか、それとも……?」
リアムは首を横に振った。その表情には、今この瞬間の重みがまだ色濃く残っていた。
「アーティファクトじゃない。彼はソウルマナを使ったんだ。まるで風に運ばれるかのように、背中に緑の翼が生えてきた。それは……非現実的だった。あんなものは見たことがない」
それまで黙っていたリヤが、真剣な表情で一歩前に踏み出した。
「彼がソウルマナで翼を出現させたって言うの?」 「彼女の声には驚きが混じっていた。まるで、今語られたことの重大さを理解しようとしているかのようだった。「それは、普通の使い手にはできないことだ」
「彼は間違いなく普通じゃない」とニラは呟き、再び崖の方を向いた。「ヒカルについて私たちが知っていることに関わらず、彼にはまだ理解できていないことがたくさんあるのは明らかだ」
「ただの宝石泥棒を追っているだけだと思っていたのに……」カズキは腕を組んで目を細めた。その声には苛立ちがにじんでいたが、それ以上に、理解できないものに対する深い不安も感じられた。「だが……これは……見た目以上に大きな問題だ。一体、あの男は何者なんだ?」
ニラは深くため息をつき、首を横に振った。
「それが、私たち全員が答えを知りたいことよ。彼は単なる目立ちたがり屋の泥棒のように振る舞っているけど、その裏にはいつも何かがある。常に隠された動機があるの」彼女はリアムの方へ視線を移した。「そして今や、彼は飛べるようになった。他に何を隠しているの?」
まだライアのそばにいたアユミは、ためらいながらも協力しようと声を上げた。
「たぶん、彼は単なる泥棒以上の存在よ。宝石の盗難なんて、ただの……目くらましじゃないかしら?」彼女は確認を求めるように他の人たちを見回した。「あれほどの能力を持つ人間が、単なる金目当てで動いているなんて、あり得ないわ。」
リヤはゆっくりと頷き、その考えを整理するように目を細めた。
「彼は金目当ての行動はしていない。よく考えてみて。完全に姿を消すチャンスは何度もあったのに、あえて人目にさらそうとしている。誰かに追跡されたいのか、それとも……俺たちに何かメッセージを送りたいのか」
カズキは深く息を吸い込み、顎に力を込めた。アユミとライアの言うことが正しいかもしれないと認めるのは嫌だったが、パズルのピースが不気味なほどにはまってきているのを感じていた。彼はナイラとリアムの方を向いた。
「何であれ、彼を単なる標的の一つとして扱うわけにはいかない。首都に戻り、起きたことすべてを報告しなければならない」
「首都に戻り、起きたことをすべて報告しなければならない」――彼の声は力強く、誰も異議を唱えようとはしないような切迫感に満ちていた。
ニラは目を細め、明らかに不満そうな表情を浮かべた。
「その通りよ、カズキ」――彼女は一歩前に踏み出し、その口調には苛立ちがにじんでいた。「さあ、急ごう。時間を無駄にはできない」
一行は動き出したが、さらに進む前に、リアムが周囲を見回し、素早くメンバー全員を視線でなぞった。荒い息をつきながら、彼はついに声を上げ、張り詰めた空気を破った。
「待て、エレナはどこだ?」
一行は一瞬足を止めた。カズキは眉をひそめ、アユミとリヤの方を見た。まるで誰かがその少女を見かけたのではないかと期待しているかのようだった。
「彼女には君たちと合流するように言ったんだ」リアムは苛立った口調で続けた。「もうここにいるはずだ」
アユミとリヤは、最後にエレナを見たのはいつだったか思い出そうとするかのように、困惑した表情で顔を見合わせた。
「ヒカルを追いかけていた時から、彼女を見ていないよ」とカズキは戸惑った表情で言った。
ニラは目を回し、腕を組んだ。
「また迷子になったんだね……」
数歩後ろにいたリアムは足を止め、うんざりしたようなため息をつくと、典型的な不機嫌そうな仕草で顔を覆った。足元の雪が踏みしめられる音が、その場の重苦しい雰囲気をさらに強めているようだった。
「ああ、エレナ……」と彼は呟き、首を横に振った。「森の奥深くに迷い込む前に、早く彼女を探しに行こう」
一行は森へと素早く向かった。冷たい風が空気を切り裂き、彼らの足跡がふかふかの雪に刻まれていく。木々を通り過ぎるたびに、凍てついた風景の静寂が、自分たちの足音以外のあらゆる音を飲み込んでいくようだった。
長い間、広大な白い森の中を探し回った末、一行はついにエレナを見つけた。彼女は木の陰に身を縮め、いつものようにぎこちない笑みを浮かべていた。
日が暮れ始める頃、一行は馬にまたがり、すでに都へと向かっていた。森での長い捜索はついに終わりを告げた。エレナが仲間に戻った今、失われた時間ゆえに、場の空気は重くなっていた。
「本当に皆を探していたのよ!でも木が全部同じで、どこへ行けばいいか分からなくて……」彼女は言い訳をしようとしたが、言い訳の余地がないことは分かっていた。
「ありえないよ、エレナ。雪の跡をたどるだけだったんだ!迷うはずがない!」リアムは、もう限界に達した忍耐力を振り絞って、きっぱりと答えた。
エレナは緊張を和らげようと、気まずそうに笑った。
「気が散ってて、足元を見てなかったの……」
「お前はいつもぼんやりしてるんだ!」リアムは冗談を言う余裕などなかった。「いつも言い訳ばかりしてるけど、実のところ、お前が迷子になるのは……純粋に注意力が足りないからだ!」
彼女は唇を噛みしめた。これ以上反論できないと分かっていた。彼の心配は正当なものだったし、それが原因で自分が厄介な状況に追い込まれるのが嫌だった。
すぐ後ろを歩いていたカズキは二人をちらりと見たが、黙ったままだった。一方、ニラは笑いをこらえようとしていたものの、少しほっとした様子だった。
「リアム、もう十分わかったわ」とアユミは、場を和ませようと口を開いた。「首都に戻って、もう言い争いはやめましょう」
それまで黙っていたアユミは、こっそりと小さな笑みを浮かべた。リアムは口は悪いけれど、表現するのが苦手であれ、みんなのことを気にかけているのだと彼女は知っていた。
リアムは深く息を吐き、肩に力を込めた。
「それだけじゃない。集中しなきゃいけないんだ。これはただの遊びじゃないんだ」
エレナは床を見つめながら、素早く頷いた。
「わかってる。もっと気を付けるよ」
しばらくの間、会話は途絶え、それぞれが自分の馬に集中していた。凍てつく風が風景を切り裂く中、一行は首都へと向かって進んだ。そこでは、新たな試練が間違いなく彼らを待ち受けていた。
「あいつは逃げた……」リアムはついに口を開いた。その声には、隠しきれない苛立ちがにじんでいた。「俺たちは失敗した」
エレナは彼を見つめ、詳細が語られないことに驚いた。
「『逃げた』ってどういう意味?」彼女は状況の深刻さを理解しようと、食い下がった。「どういうこと?」
リアムは彼女を睨みつけ、その目には疲労と懸念が入り混じっていた。
「彼はただの泥棒なんかじゃない、エレナ」彼は声を低くしたが、それでも力強く言った。「あの男……彼は宝石目当てだけじゃない。彼には使命がある。そして最も危険なのは、彼が我々が理解できる以上のことを知っているということだ」
その言葉がしばらく空中に漂う中、グループの全員が、この任務が当初想像していたよりもはるかに複雑な事態へと変化したことを悟った。
「でも……私が一番気になっているのは、彼の名字、カゼ……のことよ」
「リアム……」
「名前がどうした?」
「カズキ……」
「『風』という意味だ。自分の力に見合った名字を持つことの意味は? まるで、生まれてからずっと風とつながっていて、だからこそその名前を与えられたかのようだ……」
「でも……一番気になるのは、彼の名字、カゼだ……」リアムは呟き、考え込むように前を見つめた。
隣で馬に乗っていたカズキは、リアムの観察の深さに戸惑い、眉をひそめた。
「その名前について何か?」――カズキは、よりよく聞こえるように少し身を乗り出して尋ねた。
リアムは真剣な表情を崩さなかったが、その眼差しには新たな不安の色が浮かんでいた。
「カゼ……」――彼は、その言葉に以前とは違う重みがあるかのように、繰り返した。「風という意味だ。自分の力に見合った名字を持つことの意味は?」彼は顔をわずかにカズキの方に向けた。「まるで、生まれてからずっと風とつながっているかのように、そんな名前を授かったんだ。」
まだ明かされた情報を整理しようとしていたエレナは、困惑した表情でリアムを見つめた。
「つまり、彼は……選ばれたってこと?」
リアムはすぐには答えなかった。その代わりに、まるで答えがどこからともなく現れるかのように、彼は地平線を見つめた。
「わからない」彼はついにそう認め、その声には苛立ちがにじんでいた。「でも、そこには何かとても奇妙なことがある。人は理由もなく、そんな名前を選ぶことはないんだ」 それに、彼のあの性格は、とても自由で……
リアムは首を横に振った。その瞳は、好奇心と疑念が入り混じった光を放っていた。
「まるで、彼には本当に風との深いつながりがあるみたいだ。僕自身よりもずっと深い……
「それ、私の名前を思い出させるわ……」ニラは声を低くして言った。まるで、一瞬だけ弱さをさらけ出すことを許したかのように。「母は、私の白い髪から、雪を意味するんだって言ってた……」
一同は一瞬、静まり返った。まるで皆がニラの言葉を噛みしめているかのようだった。カズキが真っ先に反応した。
「雪? でも、雪って『ユキ』だろ……そういえば、ニラ、君みたいな名前の人は今まで会ったことないな……」
ニラは悲しげな笑みを浮かべ、ゆっくりと首を振った。
「いいえ、私たちが話す言葉じゃないの……」彼女は言葉を切り、声の調子を和らげた。「母は、それはとても古い、とても古い言葉に由来するんだって……」
鋭く好奇心旺盛な眼差しを持つリヤは、眉をひそめた。
「古い? つまり……第一次大戦の頃のこと?」
ナイラは素早く首を横に振り、遠くを見つめるような表情で地平線を見つめた。
「いいえ、リア、もっとずっと昔のことよ。どんな戦争よりもずっと前のこと。世界がエルドリウムと呼ばれるようになる前の、最初の文明たちが話していた言葉なの……」
あゆみは明らかに驚き、その驚きを隠せずにいた。
「うわあ、それは本当に古い話だけど……お母さんは、あの古代語で『nyra』が『雪』を意味していたことをどうして知っていたの?だって……古代文明が統合されてから1500年以上も経ち、世界は今の姿になったんだし……」
ニラはしばらく沈黙し、その瞳は少し暗くなった。まるで、母の記憶が今も深く胸に響いているかのようだった。
「私……母がどうしてそれを知っていたのかは分からない。母は学者で、たくさんのことを知っている素晴らしい女性だった……」ニラの声は震え、彼女は一瞬言葉を詰まらせた。「母が……本当に恋しい……」
再びグループの間に沈黙が訪れた。皆、ニラの言葉に込められた感情を胸に刻んでいた。彼らは皆、何らかの形でつながっていた。そしてニラの思い出は、その絆をさらに深めるものとなった。
「その気持ち、わかるよ、ニラ。僕も母さんのことがすごく恋しいけど……もう僕たちは一人じゃない。君には僕たちがいて、僕たちにはお互いがあるんだ」カズキは優しく言った。その低い声には、沈黙の理解が込められていた。それは、すでに喪失を経験した者だけが持つことができるものだった。
ニラは彼を見つめた。彼の言葉の誠実さに、少し驚いていた。彼女は白い髪を指で梳きながら、彼の言葉を噛みしめる間、周囲をそよ風が吹き抜けていった。
「ありがとう、カズキ……」彼女は答えた。その声は、今や一段と穏やかになっていた。「時々、誰かがそばにいてくれることが、どれほど素晴らしいことか忘れてしまうの」
いつも現実的なリヤも近づき、励ますような微笑みを浮かべてニラを見つめた。
「その通りよ。私たちにはそれぞれ過去があるけれど、今大切なのは、私たちが一緒にいて、助け合えるってこと。未来に何が待ち受けていようとも、私たちはチームとして立ち向かうわ」
優しい眼差しを浮かべたアユミが、そう付け加えた。
「それに覚えておいて。その重荷を一人で背負う必要なんてないの。私たちがここにいるのは、そのために。負担を分かち合い、勝利を祝うために」
ナイラは深く息を吸い込んだ。彼女を覆っていた憂鬱な気分が、安らぎの感覚に取って代わられ始めていた。彼女は仲間たちを見渡し、彼らが示してくれる信頼に感謝の念を抱いた。
「わかってる……本当に感謝しているわ」彼女は再び、今度は心からの笑顔を見せた。「あなたたちがいなかったら、どうなっていたかわからない」
一行は進み続けた。馬たちは雪の中をゆっくりと進んでいったが、ナイラの心からは重荷が一つ消えていた。旅はまだ終わりの見えない道のりだったが、彼らは、共にいる限り、どんな逆境にも立ち向かえることを知っていた。
カズキは馬に乗りながら地平線を見つめた。静寂に包まれた風景が、彼の思考を映し出していた。フロストガードの刺すような風でさえ、この2ヶ月間の記憶を吹き飛ばすことはできないようだった。
「フィリトスとのあの大戦から、もう2ヶ月が経った。時間が過ぎるのは早すぎる。振り返ってみると……すべてがどれほど変わったことか、とつい考えてしまう。」
「戦いの直後、僕はニラの部隊に配属された。その準備ができていたとは言えない。何しろ、すべてが穏やかだった新兵の第13師団に慣れていたからだ。だが、国家の再編がすべてを変えた。第8師団は第7師団となり、今や我々の責任は変わった。国内防衛、つまり国家内部の平和を維持することだ。戦争への直接的な任務も、最前線での活動もない。ただ、国内の問題を解決し、自分たちの領土を守るだけだ。」
「最初の数日間は、まるで水から上がった魚のような気分だった。だがすぐに、他のメンバーたちが加わり始め、そこから事態は……面白くなってきたんだ。」
「ニラ……最初は、彼女もまた、あの堅物な連中の一人に過ぎないと思っていた。あの堅くて、何にも屈しないような雰囲気で、他に何も入り込む余地がなかった。でもその後、お互いを知っていくうちに、彼女がどれほど……違う人間なのか気づいたんだ。あの氷のような仮面の裏には、優しさが隠されている。時々、彼女は何かを隠そうとしているかのように、とても重い荷物を背負っているように感じるけど、グループが彼女を必要とする時はいつでも、彼女はためらうことなくそこにいてくれる。彼女は、自分でも気づかないうちに、みんなに安心感を与えてくれる。とにかく、仲間のために戦うことをためらわないし、それを尊敬せずにはいられない。」
「一方、リアムは……ああ、あいつは謎だ。いつも動じないリーダーのような、あの強がった態度がある。でも、それでも、彼が私たち一人ひとりをどれだけ気にかけているかはわかる。私はバカじゃない。彼はそれを隠そうとするかもしれないけど……エレナを気遣うその様子……あれは嘘がつけないし、そこには何か特別なものがあると思う。彼は見せてる以上に大きな心を持っている。心の奥底では、たとえ認められなくても、私たち全員に対して責任を感じているんだと思う。」
「そしてアユミ……彼女のような人は他にいないよね。いつも眠そうで、いつもだらだらしているけど、任務が始まると真っ先に駆けつけ、いつでも手助けする準備ができている。彼女は、大騒ぎすることなく、物事を大きく変えることができる人なんだ。彼女がいなければ、このグループは今のバランスを保てなかったと思う。彼女の主な仕事は寝ることのように見えるけれど、その穏やかな存在感が、私たちを一つにまとめてくれているんだ。」
「リア……ああ、リア、グループのマスコットだ。いつも陽気で、いつも前向きで、いつも笑顔を絶やさない。時々、彼女のエネルギーこそが私たちを一つに結びつけているのだと感じる。彼女には、まるでその伝染するような楽観主義で闇を追い払えるかのように、困難を忘れさせてくれる、子供っぽくて活気あふれるオーラがある。あれほど元気な人は見たことがない。」
「それから、エレナがいる。私たちの中で一番おちゃめな子。いつも不器用で、あちこちで転びまくる。まるで自分だけの世界に住んでいるみたいで、何もうまくいかないのに……どういうわけか、彼女はいつも私たち全員の面倒を見てくれている。他人の助けに頼りきりなのに、どうやってそうしているのか分からないけど、彼女はいつも私たちを守ろうとしてくれる。まるで子供たちの世話をする母親のように、たとえ彼女自身が一番世話が必要な立場であっても。心の奥底では、私たち一人ひとりが、それぞれの違いを抱えながらも、互いに守り合っているのだと思う。」
「日が経つにつれ、部隊の真の強さは剣や戦闘能力にあるのではないと、ますます確信するようになった。それは団結にあり、私たち一人ひとりが互いに支え合う姿勢にある。そして、どんなに任務が困難であろうとも、私たちが共にいる限り、不可能なことなど何もないと知っている。この2ヶ月はほんの始まりに過ぎない。未来にはさらに大きな試練が待ち受けていることは分かっているが……この仲間たちがそばにいてくれるなら、もしかすると、ただもしかすると、私たちはすべてを乗り越えられると信じられるようになるかもしれない。」
カズキは首を振り、記憶を振り払い、意識を現在に戻した。馬の蹄音が小道の静寂を破り、フロストガードの厳しい寒さが、望まぬ旅の仲間のように彼らに付きまとっていた。彼は再び地平線を見つめ、沈み始め、空をオレンジとピンク色に染めていく太陽を眺めた。
「あと五日……首都に着くまで、この凍てつく道をあと五日も歩かなければならない。」彼はため息をついた。その待ち時間の重みを、肌で感じているかのようだった。「近道とか、あるいは魔法の通路とか、何かないものか。もう、何もない場所で凍えながら夜を過ごすことを考えるだけで、うんざりだ。」
彼は他の仲間たちを見やった。彼らはそれぞれの考えにふけっているか、旅の疲れでぼんやりしているようだった。「それに、僕らのような運の悪い連中なら、途中で何かトラブルが起きるに違いないよ。」
愚痴っぽい口調ではあったが、彼は口元をほころばせた。ほとんど気づかれないほどの、かすかな微笑みだった。なぜなら、心の奥底では、道中の時間や寒さ、過酷な夜についていくら不平を言おうとも、仲間たちと一緒にいることで、すべてが耐えられるものになると分かっていたからだ。そして、どういうわけか、この長い旅さえも、価値のあるものに思えてきた。
そうして一行は旅を続け、雪に覆われた道を首都へと進んでいった。馬が一歩踏み出すたびに、蹄の規則正しい音が、フロストガードの広大な平原の静寂を満たした。その風景は、その凍てつくような広大さにおいて美しいものの、単調で容赦のないものだったが、彼らは共に、寒さと距離に立ち向かっていた。




