第11章 ― 恐ろしい知らせ
夕焼けがアヴァロンの首都ヴァロリアを黄金色に染めていた。王宮の塔は夕日の光を反射し、住民たちの心をほんのひとときでも落ち着かせるような壮麗な光景を作り出している。影は長く伸び、また一日の終わりと、長くなりそうな夜の始まりを告げていた…。
一羽の伝令フェニックスが薄暮の空に現れ、赤と橙に輝く羽を紫に染まる空へきらめかせながら優雅に飛んでいた。そして首都の重要な通信を扱う「伝令の庭」へと降下していく。
庭では、伝令フェニックスの到来が重大な知らせを意味することを知る伝令たちが、不安げに待っていた。フェニックスは中央の空き地へ優雅に着地し、その炎は魔力を帯びたように揺らめいている。
伝令たちは近づき、フェニックスの足に結ばれた赤い封蝋付きの巻物を受け取ろうとした。それは極めて緊急の証だった。
王宮の内部では緊張した空気が漂っていた。伝令が絶え間なく行き来し、何か重大な出来事が迫っていることを物語っている。大広間ではアウレリウス王が玉座に座り、大扉を見据えていた。その傍らには護衛のエドガー、そして右腕であるブライク隊長が立っている。
重々しいきしみ音とともに扉が開き、一人の伝令が駆け込んできた。彼は息を切らしながら王の前に跪いた。
「陛下、緊急事態です!」
伝令は息を切らしながら叫んだ。
「何だと?」
王は眉をひそめた。
周囲の者たちが固唾をのんで見守る。
「大規模な艦隊がアヴァロン沿岸で確認されました。そして現在、ミランドの街が魔族の攻撃を受けています!」
「何だと?!」
王は驚愕した。
「長年の沈黙を破り、ついに再侵攻ですな…」
零番隊隊長ブライクが低く言った。
「状況報告を!」
王は命じた。
「ミランドは陥落寸前です。騎士団は市民の避難に全力を尽くしています。魔族は推定一万。首都を目指している可能性が高いです。」
「猶予は?」
「沿岸からここまで行軍で三週間。ただしストームホールドを通過するなら六日です。どうなさいますか?」
「動ける全部隊をストームホールドへ送れ!」
「第一・第二師団は国外任務中。第三師団はサフィラで間に合いません。出せるのは第七、第八、そしてまだ訓練中の第十三新兵師団です。」
「全て送れ。首都到達前に阻止せよ。」
「ですが第十三師団は未熟です。実戦には…」
「構わん。総力戦だ。」
「…それは虐殺になります。」
「それでも守らねばならん。」
「承知しました。」
ブライクは伝令を見た。
「第七・第八師団をストームホールドへ。魔族を迎撃せよ。」
「はっ!」
伝令は走り去った。
「これからどうなる、ブライク。」
王は不安げに問う。
「五年ぶりの首都圏侵攻です。将軍級の魔族が指揮しているでしょう。」
「魔族将軍か…失敗したら?」
「その時は私とカオリが最後の盾になります。」
「だが若い戦士たちにも期待せねばならんな…」
「ええ。特にアキヒロには大きな可能性があります。」
「どの将軍だと思う?」
「断定はできません。」
王は静かに頷いた。国の未来は若い戦士たちに託されたのだった。
――その頃。
ストームホールドでの訓練開始から四ヶ月。夕日が地平線を橙色に染める中、カズキとハルノは緑の野原で木剣を交えていた。
「行くぞ、ハルノ!」
カズキは笑いながら激しく攻めた。
「それだけですか、師匠!」
ハルノは笑い返し、攻撃をかわして反撃した。
激しい打ち合いが続く。息を切らしながらも二人は止まらない。ハルノの動きは以前より速く、強く、そして自信に満ちていた。
剣だけでなく拳、蹴り、足払い、回転、跳躍。木剣が打ち合う音が遠くまで響く。やがて互いの急所に同時に刃が触れた。
「引き分けだな…」
カズキはハルノの剣を首に感じながら息を整えた。
「また引き分けか…」
ハルノも胸元の剣を感じながら苦笑した。
「疲れたな…」
カズキは草に寝転んだ。
「うん…」
ハルノは隣に座り夕焼けを見る。
「綺麗だな。」
「本当に。」
「夕焼けを見るとさ、どんなに夜が暗くても、また朝が来るって思えるんだ。俺たちの戦いもいつか終わる。その時の光はきっと一番綺麗だ。」
「でも本当に朝は来るのか?」
「分からない。でも信じるから戦えるんだよ。希望がなきゃもう負けてる。」
「…そうだな。」
「なあカズキ、戦争で死ぬの怖い?」
「正直…怖くない。村が襲われてから、ずっとその覚悟で生きてきた。夢のために戦って死ぬなら悔いはない。」
「すごいよ、お前…」
「でも愛する人を残すのだけは辛いな。」
「それは…確かに。」
夜が訪れ、星が一つずつ現れた。冷たい風が草の匂いを運んでくる。
「戻ろう。明日も訓練だ。」
カズキは立ち上がった。
「そうだな。」
ハルノも最後に星空を見て歩き出した。
二人は静かに歩き、兵舎へ戻った。
「風呂入ってから寝ようぜ。」
カズキは温泉小屋を指差した。
「賛成。」
湯気に包まれた湯に浸かると疲労が溶けていく。筋肉の痛みが和らぎ、心も落ち着いた。
しばらくして湯から上がり、体を拭いて服を着る。体が軽い。新しい力が湧くようだった。
外へ出ると女子寮の近くで談笑する少女たちが見えた。ハルノの視線はその中の一人――黒髪のヒラリーに釘付けになった。
「おいカズキ、見ろよ…ヒラリーだ。」
「お前ほんと偵察兵みたいだな。」
「だって綺麗なんだよ…あの白い肌とか…」
「話しかければ?」
「まだ無理。強くなってからだ。」
「遅いと他の奴に取られるぞ。」
「それは困る!」
カズキは笑った。ハルノは拳を握った。
(四ヶ月ずっと彼女を見てるんだな。うまくいくといいけど…)
二人は寮へ戻り、ベッドに腰掛けた。
「明日もきついぞ。」
カズキは靴を脱いだ。
「でも一歩ずつ強くなってる。」
「戦うだけじゃなく、生きることも忘れるな。」
「分かってる。」
静かな夜が訪れ、やがて眠りについた。
翌朝、ラッパの音が石造りの廊下に響いた。二人は飛び起き、食堂で温かいスープとパンを急いで口にした。
そのまま訓練場へ向かう。朝日に照らされながら黙って歩く。
そこへテレンス隊長が現れ、腕を上げて全員を制した。
「新兵諸君、首都から重大な報告が届いた。」
場が凍りつく。
「魔族がアヴァロンへ侵攻した。ミランドは陥落。我々は迎撃に向かう。」
ざわめきが広がる。
(ついに来た…俺の努力が試される時だ。)
「諸君はまだ訓練中だが王命だ。第七・第八師団と合流し、五日後に出撃する!」
(未熟なまま戦争…多分地獄だ。でも逃げない。)
ハルノはカズキを見た。恐怖と決意が混ざっている。
「訓練の成果を見せる時だ。」
カズキは静かに言った。
「うん、全力で戦う。」
隊長は準備を指示し続けた。責任の重みが全員にのしかかる。
「これより諸君はアヴァロンの兵だ。祖国の誇りを示せ。」
解散後、二人は並んで歩いた。
「一緒だぞ、ハルノ。」
「もちろん。」
こうしてストームホールドの若き兵たちは迫る戦いへ備え始めた。アヴァロンの運命が彼らに託されていた。
夜、二人は静かに横になった。星と月の光が若い顔を照らす。
この平穏な夜が、しばらく最後になるかもしれないと知りながら。
注記:
章の中で言われたかどうかは分かりませんが、なぜ軍がまだ訓練中の新兵である第13師団を戦争に送ったのか疑問に思った方のために説明します。理由は、他のすべての師団が国の外または緊急の任務に出ており、侵略軍と戦力を均衡させる必要があったからです。そのため、準備が整っていなくても、利用可能な限りの兵士を戦争に送る必要があったのです。




