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終末の英雄  作者: leon02d2
英雄の誕生
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第10章 ― 訓練

まだ太陽は昇っておらず、ストームホールドの街は冷たい空気に包まれていた。 空は厚い雲に覆われ、兵舎の各寝室では新兵たちがまだ深く眠っていた。 そこへ軍曹がカズキの寝室に入り、突然ラッパを吹き鳴らした。


カズキは他の新兵たちとともに驚いて目を覚ます。 ラッパの大音響が寝室に響き渡り、混乱の中で皆が慌てて起き上がる。 寝室は一時的な騒ぎに包まれた。 「もう起こされるのか?!眠いし、すごく寒い…」カズキはそう思いながら、隣で同じように目を覚ましたハルノを見る。


「おはよう、カズキ!」とハルノが騒ぎの中で声を張った。

「そんなにいい朝とは思えないけどな...」とカズキはまだ眠そうに答えた。


「新兵たち、注目!気をつけ!」と軍曹が大声で命じる。


混乱の中でも新兵たちは素早く整列し、敬礼を行う。 軍曹はその間を歩き回った。


「ベッドを整える時間は2分だ、急げ!」


軍曹の命令で、皆が制限時間に追われながら急いでベッドを整え始める。


「ベッド確認!次は食堂だ!朝食は30分!」と軍曹は全員に聞こえるように叫び、そのまま部屋を出て行った。


軍曹が去ると、新兵たちはまだ目を覚ましきれないまま、冷たい朝の空気の中を食堂へ急いだ。 カズキとハルノも並んで歩き、新しい生活リズムに慣れようとしていた。


「どうやら楽はさせてもらえなさそうだな。 」とハルノが雰囲気を和らげようと話す。

「そうみたいだな。 」とカズキは半分笑いながら答えたが、まだ眠気は残っていた。


食堂に着くと、新兵たちは列を作って食事を受け取る。 硬いパン、野菜スープ、少量の干し肉という質素な内容だった。 カズキは皿を取り、ハルノと長いテーブルの一つに座る。 食堂は満員だが、会話はまだ控えめで、皆環境に慣れようとしている様子だった。


「せめてスープが温かいのは助かるね。 」とハルノが息を吹きかけながら言う。

「ああ、体が温まる。 」とカズキは一口飲みながら答えた。


「おーいカズキ!」とハルノが急に弾んだ声で呼んだ。

「どうした、ハルノ?」


「ほら、あの黒髪の子見てよ!すごく綺麗だ。 」とハルノが隣のテーブルを見ながら小声で言った。


「女の子を眺めるタイプだったのか、ハルノ。 」とカズキは笑う。


「そうだよ、早く結婚相手を見つけたいんだ。 」とハルノも笑って返す。


「結婚か…まだ若すぎるだろ。それに強くなる目標はどうした?」


「もちろん強くなりたい。でも恋もしたいんだ、カズキ。たぶん誰も俺に惹かれないと思うけど、だからこそ強くなって認められたいんだ。」


「なるほど…大きな夢だな、ハルノ。」


ハルノは気楽に笑った。「ああ、全部叶えてみせるよ!」


カズキも静かに笑った。「きっとできるさ。」


「結婚…愛か…考えたこともなかったな。誰かを愛するってどんな感覚なんだろう。カレンのことは好きだけど、恋愛感情とは違うし…。特別な誰かと結婚するのも悪くないかもしれないな…」とカズキは心の中で考えた。


そのとき軍曹が食堂に入り、鋭い視線で新兵たちを見渡した。


「朝食後は全員訓練場へ!残り15分だ!」と命じ、すぐに立ち去った。


新兵たちは急いで食事を終える。カズキとハルノは視線を交わし、互いの決意を確認した。


「行こう、時間を無駄にできない。」とカズキが立ち上がる。

「了解。」とハルノが続いた。


数分後、全員が広い訓練場へ向かった。そこには再びテレンス隊長が壇上に立ち、厳しい表情で新兵たちを見ていた。


「新兵諸君、今日から本格的な訓練開始だ!実力を見せてもらう!人生で一番過酷な訓練になるぞ!」と彼の声が響いた。


カズキは深く息を吸う。これは長い試練の始まりだと理解していた。自分の価値を証明し、誓いを果たすための第一歩だった。


「まずは持久走だ!訓練場を10周、今すぐ!」


新兵たちは走り出す。朝の冷気はすぐに汗と熱に変わった。カズキは一定のペースを保ち、血の巡りを感じていた。


「行こう、カズキ!」とハルノが隣で叫ぶ。

「ああ、行こう!」とカズキも応じた。


10周後、新兵たちは息を切らしていたが休みはない。


「ウォームアップは終わりだ!次は戦闘訓練!二人一組で近接戦だ!」と隊長が命じる。


カズキとハルノはペアを組み、剣を抜いた。互いに傷つけない前提の模擬戦だ。


「準備はいいか、ハルノ?」

「もちろん!」


「実力を見せてみろ。」とカズキは笑った。

「オーケー!」


隊長の笛が鳴り、各所で模擬戦が始まる。ハルノは正面から攻撃するが、カズキは軽く右へかわす。


「もっと速く!」

「やってるよ!」


再び横薙ぎの一撃。しかしカズキは簡単に防ぐ。


「もっと強く!」

「全力だ!」


ハルノの脚の踏ん張りが甘いと見抜いたカズキは、素早い足払いで倒す。


「足をしっかり固定しろ。攻撃だけに集中するな。」


「知らなかった…ありがとう。」とハルノは地面に座りながら言う。


「これが全力か?」とカズキは少し落胆した。

「言っただろ、俺は弱いって…」


「そうだな…俺は幼い頃から鍛えてきた。でも皆が同じじゃない。」とカズキは内心思う。


「大丈夫だ、ハルノ。強くなる手伝いをする。一緒に進もう。」とカズキは手を差し出した。


ハルノは目を輝かせ、その手を握った。

「ありがとう、カズキ!」


二人は笑い合い、友情が芽生えた。やがて隊長の笛が再び鳴り、模擬戦は終了した。


「模擬戦は自己理解のためだ。本番はこれからだ!」と隊長が叫ぶ。


「え、あれが訓練じゃなかったのか?!」とカズキは心の中で驚いた。


「全員、腕立て30回!」


新兵たちは一斉に腕立てを始める。楽な者もいれば苦しむ者もいた。こうして初日の本格訓練が始まった。


8時間後――


「もう限界だ…こんなに疲れたのは初めてだ。朝は剣の基礎を徹底的にやって、昼休憩の後は腕立て20回、腹筋40回、スクワット40回、5周ラン、プランク3分…覚えてるだけでもこれか…」


「体は燃えるようだし、筋肉は痺れてる。歩くのもきつい。途中で倒れた新兵もいたし、ハルノも離脱した。予想以上に過酷だ…耐えられるのか…」


そう考えながらカズキは寝室へ向かい、隣のベッドのハルノに気づいた。


「ハルノ…戻ってたのか。」


「カズキ、ここにいられるか分からない…」


「弱気になるな。きっとできる。」


「体の感覚がないんだ…」


「俺も似たようなものだ。でも耐えれば強くなる。」


「なあカズキ…ヒーローって想像したことある?すごく強くて人を救う存在…魔王を倒して世界を救うような…」


「強くはなりたいけど、童話の英雄みたいに考えたことはないな。」


「俺はある。魔王を倒すヒーローになりたい。それがここに来た理由だ。」


「もし今そんな英雄がいたら、戦争は終わってたかもな。」


「帝国戦争の英雄みたいに…」


「なら俺たちがなろう。」とカズキは力強く言った。


「うん、なろう。」


「じゃあ今からだ!」とカズキが立ち上がる。

「え、今?!」


「そうだ、教えるから来い!」


二人は木剣を持ち、誰もいない訓練場へ向かった。


「全力で来い、ハルノ!」

「分かった!」


ハルノは以前より速く攻撃し、明らかに成長していた。カズキは守りながらその努力を感じ取る。


「いいぞ!」


攻撃は続き、やがて単調さに気づいたカズキが指摘する。


「変化をつけろ、読まれるぞ!」

「分かった!」


訓練を続けていると、カイトが現れた。


「ほう、こんなところで何をしてる。 」


「何の用だ。 」とカズキが嫌そうに言う。


「散歩してたら見かけただけだ。 」


ハルノは黙って見ている。


「もう帰っていいだろ。 」


「努力は立派だが、戦争にはまだ早い。 辞めた方がいい。 」


「いやだ!」とハルノが叫ぶ。 「夢を諦めたら俺は何も残らない!強くなるためにここにいる!」


彼は剣をカイトに向けた。


カズキは驚きつつ、その決意を理解した。


「二人とも戦場に行きたがる愚か者だな。 でも止めはしない。 」


「傲慢さで人の本当の強さを見逃してる。 」とカズキが返す。


「若いのに立派な言葉だ。 ただし覚えておけ、お前は物語の主人公でも英雄でもない。 」


「物語の主人公じゃなくても、自分の人生の主人公ではある。 」


カイトは少し笑い、「その結末を見てみたいな。 幸運を祈る」と言って去った。


「今日はもう十分だな。 」とカズキ。

「同感だ、へとへとだ。 」とハルノ。


二人は木剣を片付け、寝室へ戻った。 疲れ切っていたが、ハルノは少し強くなった実感を抱いていた。


それから日々は流れ、訓練は週へ、週は月へと変わった。 初期の訓練は過酷で、肉体の限界を何度も超えさせられた。 カズキは自然な強さで頭角を現し、疲れていてもハルノを支え続けた。


1か月後、新兵たちは生活に順応していた。 夜明け前のランニング、筋力訓練、夜の戦術講義。 休憩時間も二人は自主訓練に費やした。


さらに1か月後、訓練は高度化。 テレンス隊長は剣術と護身術の応用を導入した。 カズキは仲間を励ます存在となり、ハルノも自信を持ち始めていた。


そして数か月。 訓練はさらに厳しさを増し、毎日が試練だった。 だがテレンス隊長の厳格な指導の下、新兵たちは少しずつ真の戦士へと鍛え上げられていった。


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『Hero of End』がより多くの人に届く大きな力になります。 ありがとうございます!

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