第8章 - 別れ
和樹は自分の目を疑った。 ストームホールド駐屯地への合格通知は、彼の胸を喜び、誇り、そしてわずかな不安が入り混じった感情で満たした。 それは、ずっと夢見てきた戦士になるための次の一歩だった。
「合格した!ストームホールドの駐屯地に入隊するんだ!」
和樹は興奮を抑えきれず報告した。
ポールと巴は和樹のもとへ歩み寄り、誇らしげな表情を浮かべた。 巴は強く抱きしめ、ポールは肩を軽く叩いた。
「お前ならできると分かっていたさ。 誇りに思うぞ、坊主。 」
ポールは満足そうに微笑みながら言った。
「おめでとう、和樹!あなたなら当然よ!」
巴は目を輝かせ、感情を込めて抱きしめながら言った。
リリーはまだ状況に少し驚いている様子だったが、控えめに微笑んだ。
「本当に嬉しいよ、和樹。 きっと立派な戦士になるね。 」
彼女は優しく言った。
皆が祝福する中、カレンだけは同じ熱量を共有していないようだった。 表情は硬く、どこか不安げだった。 再び乾杯が行われても彼女は黙ったまま和樹を見つめていた。 やがて気持ちを落ち着けるため席を立ち、ギルドのバルコニーへ向かった。 それに気づいた和樹は後を追った。
「カレン、大丈夫?なんだか心配そうだ。 」
和樹は気遣うように尋ねた。
カレンは不安を映した瞳で彼を見た。
「和樹... 私、賛成できない。 ストームホールドに行くってことは戦争に行くってことでしょ。 危険すぎるよ。 」
彼女は率直に言った。
和樹は彼女の手を握り、安心させるように見つめた。
「もしあなたに何かあったら?もう失いたくないの...」
カレンは不安げに言葉を続けた。
「気持ちは分かる。 でもこれは僕の信じるもののために戦うチャンスなんだ。 僕は進まなきゃいけない。 」
和樹は静かに答えた。
「違う!あなたは何も背負う必要なんてない!おとぎ話の英雄じゃないし、帝国戦争の偉大な英雄たちみたいでもないのよ…」
彼女はついに涙をこぼしながら叫んだ。
和樹は強く抱きしめた。
「落ち着いて、カレン。大丈夫だよ…」
彼は優しくなだめた。
「バカ…本当に私を置いて行くの?」
彼女はさらに泣きじゃくった。
和樹はしっかり抱き寄せ続けた。
「泣かないで。必ず戻ってくる。時間がかかっても会いに来るよ。約束する。」
彼は決意を込めて言った。
「本当に?」
カレンは涙で濡れた目で尋ねた。
「うん、約束だ。」
和樹は迷いなく答えた。
カレンは少しずつ落ち着き、和解の意味を込めてもう一度抱きしめた。その後、二人は皆のいる室内へ戻った。
「やっと戻ったか!まだ時間はある、楽しもうぜ!」
ポールはビールのジョッキを掲げて言った。
「うん父さん、楽しもう!」
和樹は笑顔で応じた。
「うん!!行こうー!」
リリーもできるだけ明るく声を上げた。
巴はその様子を見てくすっと笑った。
「もう、本当にかわいいわね。」
「ほんとね。」
カレンも柔らかく笑った。
和樹は家族のような仲間たちを見渡し、久しぶりに心からの幸福を感じていた。養父母のポールと巴、姉のようなカレン、そして新しい友人のリリー。再び満たされた気持ちだった。
「みんながここにいる…感謝で胸がいっぱいだ。これからの道は険しいけど、愛と支えがある。僕は戦う、皆のために。必ず帰る、家族のために。」
和樹は心の中で誓った。
夜は笑い声と祝いの言葉に満ちて続いた。温かな空気の中で、カレンも徐々にその雰囲気に溶け込んでいった。
皆は再びジョッキを掲げ、友情と絆を確かめ合った。カレンもまだ不安は残りつつ、和樹を支える決意で乾杯に加わった。
やがて夜が更け、宴が終わりに近づくと、ポールと巴は出発の準備を始めた。別れは避けられないが、そこには感謝と希望があった。
ポールは武器や装備を確認し、巴は忘れ物がないよう丁寧に荷物を整えた。出発前、ポールは和樹をバルコニーへ呼び出した。
「これから色々な試練が待っている。強くあれ。」
彼は真剣に言った。
「うん、父さん。」
和樹はうなずいた。
「勇敢な心を忘れるな。そして助けが必要な時は頼れ。お前は一人じゃない。」
ポールは静かに続けた。
「ありがとう、父さん。」
和樹は感謝を込めて答えた。
その言葉は和樹に力を与えた。二人が室内へ戻ると、巴はすでに準備を終えていた。
「寂しくなるわ。」
巴は和樹、カレン、リリーを見ながら言った。
「泊まっていけばいいのに。もう遅いよ。」
和樹は本音をこぼした。
「ミッドガルドに早く戻らないと。家と仕事があるからね。」
ポールは優しくもはっきり答えた。
「またきっと会えるわ。」
巴は愛情を込めて言った。
「うん、絶対に。」
和樹は笑った。
巴は最後に和樹とカレンを抱きしめ、二人は旅立った。
カレンはその後、和樹とリリーの部屋を手配した。
「和樹は左の最初、リリーはその隣よ。」
彼女は説明した。
「えっ、やだ!」
リリーが抗議した。
「どうしたの?」
カレンが聞いた。
「このバカと一緒に寝たい!」
リリーは和樹を指さした。
「え!?なんで!?」
和樹は驚いた。
「一人になるのが怖いの…」
リリーは顔を赤らめて俯いた。
和樹は同情して受け入れた。
「分かった、いいよ。」
彼は穏やかに言った。
リリーは跳ねて喜び、カレンは微笑んだ。
「本当に仲良しね。」
彼女は楽しそうに言った。
00:24 深夜。
「もう遅いな。明日早いし。」
和樹はつぶやいた。
「おやすみ、和樹。」
カレンは柔らかく微笑んだ。
部屋にはベッドが一つだけだったが、和樹はリリーをただの年下の友人として見ており、特に気にせず横になった。リリーは強く抱きついた。
「どうした?」
和樹は小声で尋ねた。
「また一人になるのが怖いだけ…」
彼女もささやいた。
和樹は抱き返した。
「もう家族がいるよ。」
彼は優しく言った。
「あなた、彼に似てる…」
リリーはぽつりと言った。
「彼って?」
和樹は聞いた。
「昔の親友。村が襲われたとき離れ離れになったの…瓦礫の下に閉じ込められて、暗くて、お腹も空いて…死にそうなところで衛兵に助けられた。」
彼女は静かに語った。
「今は思い出さなくていい。もう安全だよ。」
和樹は落ち着かせた。
「ありがとう、和樹。」
彼女は安心して言った。
「そうだ…悪魔の襲撃は世界中だった。僕だけじゃない…」
和樹は心の中で思った。
やがてリリーは眠り、和樹も穏やかな風の入る部屋で眠りについた。
07:13 朝。
和樹は頭痛で目覚めた。リリーはまだ抱きついたまま眠っていた。初めての二日酔いだった。
「頭が痛い…気分も悪い…倒れそうだ…」
彼は内心つぶやいた。
静かに起き、廊下をよろめきながらトイレへ向かった。
到着すると激しく吐き、床に座り込んだ。そこへ通りかかったカレンが気づいた。
「和樹?大丈夫?」
ドア越しに尋ねた。
「ちょっと…」
彼は弱々しく答えた。
「入っていい?」
彼女は心配そうに聞いた。
「どうぞ。」
和樹は応じた。
カレンは背中をさすった。
「顔色ひどいよ。」
彼女は優しく言った。
「自覚ある…」
和樹は苦笑した。
「お茶入れるね。」
彼女は支えて立たせた。
ギルドのテーブルで休ませ、温かいお茶を持ってきた。
「これ飲んで。」
彼女は差し出した。
「ありがとう。」
和樹は一口飲んだ。
「どういたしまして。」
カレンは微笑んだ。
「他のみんなは?」
和樹は尋ねた。
「今日は休み。」
彼女は答えた。
※カレンはギルドのマネージャー。
「今日、ストームホールド行きの新兵の荷車が出るよ。」
カレンは知らせた。
「今日?」
和樹は驚いた。
「ついに来たね。」
彼女は言った。
そこへリリーが現れた。
「本当に行くんだね。」
彼女は少し寂しそうに言った。
「ずっと待ってた瞬間だから。」
和樹は答えた。
「待ってるよ!」
リリーは明るく言った。
「ありがとう。」
和樹も笑った。
数時間後、出発の準備は整った。制服、武器、覚悟。
カレンとリリーは入口で待っていた。
「もう時間だ。」
和樹は言った。
「7年か…早かったね。」
カレンは感慨深げだった。
「うん。」
和樹はうなずいた。
「寂しいよ。」
リリーは言った。
「僕も。」
和樹は笑った。
「私も戦士になる!傭兵になる!」
彼女は決意した。
「すごい目標だ。」
和樹は感心した。
「帰ってきたらもっと強くなってるから!」
リリーは胸を張った。
「信じてる。」
和樹は微笑んだ。
カレンは笑った。
「本当に仲良しね。」
彼女は言った。
和樹は二人を抱きしめた。
「必ず帰る。」
彼は約束した。
「絶対だからね!」
リリーは笑った。
「信じてる。」
カレンも続けた。
和樹はギルドを後にし、ストームホールド行きの荷車へ向かった。途中、ゲイルのパン屋に寄ることにした。
賑わうニクスヘイヴン中心街を抜け、「Nyx’Oven」に入ると店は満席だった。
「おお和樹!」
ゲイルは明るく迎えた。
「繁盛してるね。」
和樹は笑った。
「今日は甘い物セールだ。」
ゲイルは誇らしげだった。
「なるほど。」
和樹はうなずいた。
「何か食べる?」
ゲイルは聞いた。
「いや、軍に合格したって伝えに。」
和樹は真剣に言った。
「それはすごい!」
ゲイルは喜んだ。
「今日出発なんだ。」
和樹は続けた。
「分かった。来い。」
ゲイルは奥へ案内した。
二人は座った。
「早いな…」
ゲイルはしみじみ言った。
「本当に。」
和樹は同意した。
「木の剣を持ち上げるのも大変だったな。」
ゲイルは笑った。
「弱かったから。」
和樹は苦笑した。
「でも成長した。」
ゲイルは誇らしげだった。
「一人で鍛えたから。」
和樹は振り返った。
「それでも人生は別のことを教える。」
ゲイルは諭した。
「分かってる。」
和樹はうなずいた。
「戦争は厳しい。でもお前は立派な戦士になる。」
ゲイルは肩に手を置いた。
「信じてくれてありがとう。 」
和樹は感謝した。
「失敗を恐れるな。 」
ゲイルは言った。
「覚えておく。 」
和樹は答えた。
ゲイルは抱きしめた。
「寂しくなるな。 」
彼は言った。
「必ず戻る。 」
和樹は誓った。
「有名になったら特製菓子だ。 」
ゲイルは笑った。
「楽しみだ。 」
和樹も笑った。
「行け、和樹。 」
ゲイルは背中を押した。
「ありがとう。 」
和樹は言った。
「息子みたいなもんだ。 」
ゲイルは小声で言った。
その言葉に和樹は胸を打たれた。
「ありがとう... 父さん。 」
彼は涙ぐみながら店を出た。
希望を胸に街を駆け、駐屯地へ向かった。
荷車はすでに並んでいた。 受理証を見せ、乗り込む。
期待、不安、決意。
和樹の新しい旅が始まった。 ストームホールドという軍都へ向けて。




