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とある傭兵の勘違い伝承譚~前世でゲームを作り続けて過労死した記憶を引き継いだおっさん、ゲーム世界にて神話になる~  作者: 間野ハルヒコ


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32.【チート・クリエイト】


 アステリアがグレイフォード監獄から出獄すると、途端声が聞こえてきた。


「チッ、マジでクリアしやがった。うわぁドン引き~。普通ここまでやるぅ~?」


 戯神ロキ。

 今回、アステリアをグレイフォード監獄へ入獄させた。世界を統べる神の一柱である。


 姿は見えない。

 いつものことだった。


「ドン引き~。じゃねえんだよ。まったく、めんどくせぇクエスト用意しやがって! おかげで何人殺らなきゃならなかったと思ってんだ。てめぇのせいだぞ。あァん?」


 アステリアは神に対しても容赦が無い。

 これまでも隙あらば命を狙われているので、当然と言えば当然だった。


「ア、アタシのせいだっていうのかよ…」


「そりゃそうだろうが! 物理的な脱獄不可、テレポートによる転移も不可。正規の手段での脱出以外認めないシナリオ能力なんて出されたら。全員洗脳して支配するしかねえよ。監獄内での商売も禁止しやがるからギブアンドテイクも使えねぇしよォ…」


「お…おう」


 アステリアは髪を振りかざしながらキレる。

 実際のところは結構楽しんでいたが、こうした方が有利を取れるとわかっているからだ。


 戯神ロキの権能【物語】は、主人公として指定した人物にシナリオを守らせる。


 今回用意された大罪人処刑シナリオは、どうあがいても回避できるものではないはずだったが、用意したシナリオから逸脱するほど状況が変わってしまえば、権能は機能しなくなる。


 アステリアは看守と囚人を支配することで、戯神ロキの【物語】を破壊したのだ。


「クソが。おかげですっからかんだぜ! ご丁寧に絞首刑にしやがりやがって! おかげで継続ダメージでみるみる金が減っていくしよォ~!」


 アステリアがウインドウを表示する。



――――――――――


【チート・クリエイト】:レベル309


【強制展開中】


・APL『愉快なFX』レベル210


所持金


2円


――――――――――


 はぁ~。

 とアステリアがため息をつく。


 円とはこの世界の通貨単位ではない。

 アステリアの前世で使われていた通貨の単位だ。


 アステリアは前世において、かなり金にがめつかった。


 金こそは命であり、命こそが金。


 それが当たり前だと思って生きていた。


 だからだろうか…アステリアはAPL『愉快なFX』の力により一切のダメージを受けない代わりに、与えられるはずだったダメージ分の所持金を消費する。


 絞首刑で首を吊られても死ななかったのはそのためである。


「それにしたってお前、おかしいだろ。今回こそ所持金をゼロにできたはずなんだが…」


 戯神ロキの疑問をアステリアが鼻で笑う。


「はっ、まだ気づいてなかったのか? いいぜ、教えてやるよ」


――――――――――


【チート・クリエイト】:レベル309


【ワールドチェンジ】


・RPG『マルクト戦記』レベル289


検索…


【ナイフ作成】◀ピッ



――――――――――


 コトンと、ナイフが生成される。


 途端、アステリアの所持金が減った。


――――――――――


【チート・クリエイト】:レベル309


【強制展開中】


・APL『愉快なFX』レベル210


所持金


-390円


――――――――――


「は? マイナス?」


 驚く戯神ロキを放置してアステリアはナイフを手の甲に突きつける。

 


――――――――――


【チート・クリエイト】:レベル309


【強制展開中】


・APL『愉快なFX』レベル210


所持金


-1010円


※ロスカット無効スキル発動

※強制借入中


――――――――――


 負の値になってもなお、所持金が減っていく。

 しかし、アステリアは無傷である。


「これでわかったろォ? アタシの所持金をゼロにしたところで何の意味もねぇんだよ! マヌケ! アーヒャッヒャッヒャッヒャ!」


 戯神ロキは閉口した。

 そういえば、アステリアはグレイフォード監獄で10億もの借金を肩代わりさせていた。


 少なくとも所持金がマイナス10億になってもアステリアは死ななかったということだ。


 一体、何をどうすればこの悪魔を倒せるのか見当がつかない。


 だが、少なくともアステリアは所持金が減ることを嫌がり、所持金が増えると喜ぶ。


 なんらかのデメリットがあるはずだが……。

 わざわざ教えてくれるはずもないだろう。


「わかったわかった。わかったってぇ。お前を倒す方法はまた後で考えるよ」


「いい加減、諦めてくんね? あ、他の神にも言っといて」


「お前みたいなイレギュラー放置できるわけないじゃん。馬鹿じゃないの? バーカ! バーカ!」


「なんだとゥ! バーカ! バーカ! バーカァ!」


「バカバカバカバカバカバカ!」


「バーカバカバカババーーーーーーーカ!」


 蝶が羽ばたく監獄前の野原で、アステリアと戯神ロキが互いを馬鹿にしあう。

 この二人はいつもこんな感じであった。


 だが、流石に小一時間も罵り合っていると疲れる。


「はぁ、もうやめようぜ。こんなこと…一円にもならねえしよォ…。無駄だって無駄無駄無駄無駄……無駄の無駄…」


「え、じゃあ金になるならやるのかよ」


「やる」


「マジかぁ~。じゃあさ、こいつ殺してくんね?」


 アステリアの前にウインドウが表示される。

 オズワルド・ブラックフォージの顔だ。


「えええ~! オズじゃん! 何コイツ! マジで!? 何やらかしたの?」


「やらかしたっつーか。最近チートスキルに目覚めて、なんかスキル構成がお前に似てるんだよ」


 オズワルドの【チート・クラフト】とアステリアの【チート・クリエイト】は確かに似ていた。


 アステリアは急に上機嫌になって「マジで~?」と笑いながら、ウインドウを操作する。



――――――――――


【チート・クリエイト】:レベル309


【ワールドチェンジ】


・LIFE『■■■■■の世界』レベル309


管理者権限を行使


閲覧


【ワールド】

【キャラクター】◀ ピッ

【武器・防具】

【アイテム】

【クエスト】


――――――――――



――――――――――


【チート・クリエイト】:レベル309


【ワールドチェンジ】


・LIFE『■■■■■の世界』レベル309


管理者権限を行使


閲覧


キャラクター【オズワルド】の全履歴を簡易展開中……


――――――――――



「うわ、マジじゃん。最近のオズやばくね? だいたいアタシと同じっつーか、スキル使用に所持金を消費してねーじゃん! ズッル~~!」


「およそこの世で起きたすべてを閲覧できる【管理者権限】を持つお前の方がズルいだろ…」


「ハッ! お前ら神のことはまだ閲覧できねーけどな! ま、そのうちレベルが上がったら見れるようになるだろうけどォー!」


 戯神ロキは苦笑いした。

 その前にコイツを殺さないと本当に手がつけられなくなるな。


 でも、それは今ではない。


「まーなんつーかさ。お前みたいなのがもう一人出てくると困るわけ。わかるだろ?」


「ええ? 別にいいじゃん。もうなんか世界が滅茶苦茶になりそう! ヒューーッ! 最高ーー!! 滅亡ーーー!! イエーーーイ!」


 混沌の申し子め…。

 戯神ロキは歯噛みする。


「むしろ、一緒に世界とか滅ぼしたい! 黄金とか無限に作成してハイパーインフレ起こそうぜ! あいつ今どこ? へぇ! グレイフォード砦かァ! 案外近いんだなァ!」


「待て待て待て待て! 違うんだって! 殺して欲しいっつってんの! 金なら払うからさ!」


「はぁ? バカじゃねえのォ? 今のオズならレベル上げれば金くらい無限に作成できるようになってもおかしくないだろがァ! この世のすべてを無価値に引きずり下ろしてやる!」


「オズワルドがそういうことに付き合う人格じゃないのはお前もわかってるだろ!」


 ピタッとアステリアが停止した。


「それも…そうだな。はー…くっだらねー。じゃあ、意味ねーじゃん。殺すか。で、いくらくれんの? アタシ安い仕事はしたくないんだよね」


「前金1億。クエストクリア報酬10億」


「乗った! 取引成立! 毎度ありィー!」


 アステリアの所持金がみるみるうちに回復してゆく。

 悪魔の力で未来の悪魔の芽を摘む。


 それは一見、賢い方法かのように思えた。


「どうやったら最悪になるかなァー! 阿鼻叫喚! 地獄絵図! たーのーしーみーィー!」


 歓喜に震えるアステリアを見て、戯神ロキは違和感を覚える。


 アステリアのスキルはほぼオズワルドの上位互換だ。

 オズワルド一人倒すなら、そう難しい話ではないはずだ。


 その違和感が何なのか…うまく言葉にできなかった。 



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