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外れスキル【チート・クラフト】の勘違い伝承譚~前世でゲームを作り続けて過労死したおっさん、ゲーム世界にて神話になる  作者: 間野ハルヒコ


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17.メテオレイン


 ルシアンは困惑した。


 技を放った瞬間、「失敗した」と感じたのだ。


 そんな馬鹿な。

 ただ立っているだけの人間に向けた攻撃が外れるわけがない。


 ルシアンの【連続斬り】はスキル【軽剣士】が習得できるクラススキルだ。


 素早く何度も斬撃を放つため一撃の威力は下がるが、その分確実に命中する。


 はずだった。


「なぜだ。なぜ当たらない……!」

 

 否、命中している。

 オズワルドが構えた剣に……。


 キンキンカン! キンキンキンキンキン! キン!


「すげーー!」

「流石、隊長!」

「何度見てもわけわかんねぇ…!」

「なんで全部弾けるんだ?」


 境界警備隊たちが歓声をあげる。


 オズワルドは刀を下段に構えたままだった。


 ただそれだけ。


 それだけで放たれる刃のすべてが、オズワルドの剣に吸い込まれてゆく。

 攻撃しているルシアンにもなぜこうなっているのかよくわからない。 


「こ、この! まだだ!」


 ルシアンは攻撃の手を止めることができない。

 止めたらすべてが終わると剣士の直感が告げていた。


 ここで止まるわけにはいかない。


 更に攻撃を加速させる。


 キンキンカン! キンキンキンキンキン! キンキンキンキンキンキン!


 

 それでも攻撃の一切が届かない。


 オズワルドからすればやっていることは至極単純。


 剣の後ろに隠れることで斬撃の位置を誘導し、次の斬撃が到達するまでの間に剣を僅かに揺らしているだけ。


 キン!


 素早く放たれた刃は横からの力に弱い。

 斬撃を先読みして軌道に剣を置けば、弾くことはたやすい。


 それはかつて魔王を倒した勇者たちの一人。

 剣聖を極めし者・チトセが行っていた…ただの待機動作だ。


「カッカッカ! まったく、オズは本当に才能が無いなァ。あれだけ稽古をつけてやったのに何のスキルも習得できないんだからサァ!」


 過去、魔物蔓延る魔界深くで。

 胸にサラシを巻いた女剣聖が快活に笑う。


「ま、でも立ち姿だけは様になったな! よくやったよホント!」


「うるせぇな。俺だってチトセみたいに因果とか切断したかったよ!」


 まだ若いオズワルドを流し見て、チトセはこうぼやいた。


「ハッ、冗談じゃねえ。才能なしでそこに到達できることがどれだけやべえか…わかってねぇんだからな…」


 それを聞いた当時のオズワルドはへこんだ。


 一切の才能なし…か。


 確かにそうだ。

 俺には才能が無い。


 思い返せば、チトセと同じ【剣聖】を授かったカルドも下段に構えていた。


 あの頃はチンピラみたいな構えだと思っていたが、ちゃんと意味のある構えだったのだ。


 俺は愚かだ。


 ただ人より多く努力しているというだけで、弟の才能を否定し、見下していたんだ。


 誤解である。


 稽古をサボり続けたカルドは構えを知らなかった。

 それ故に、なんとなく剣を持っていただけだ。


 カルド、すまなかった。

 きっとお前はもう…因果とか切断できるんだろうな。


 俺はそこまではいけなそうだ。


 だからせめて、何年かけてでもこの構えを極めてみせる。

 お前が誰に習うともなく、即座に習得したこの構えを。

 

 誤解である。

 この時点でオズワルドはカルドなど遠く及ばぬ、遙か高みにいた。


 ビーーーッ!


――――――――――


あなたのターンではありません


――――――――――


 不思議な音とともにルシアンの前にウインドウが表示される。


「何だ…これは」


 次に世界からの制約を受けるのはルシアンの方だった。

 すべての攻撃動作がキャンセルされ、うまく身動きが取れない。


「ぐっ、メモリリークで本番環境クラッシュ…。違う…この記憶は…。ターン制RPG…。だんだん思い出してきた」


 オズワルドが展開しているワールド。

 RPG『マルクト戦記』はターン制だ。


 一方が攻撃する時、もう一方は攻撃できない。 


 オズワルドは冷や汗をかく。


 今回は相手がルシアンだから助かっただけだ。

 もし、何らかの手段で先手をとられ、広範囲爆裂魔法や即死系攻撃を受けていたら俺は終わっていた。


 所詮、俺は剣の後ろに隠れているだけに過ぎないのだから。


 やはり、検証してよかった。

 世界を作り、その理を書き換える【チート・クラフト】は危険すぎる。


 もっと使いこなさなければ。


 オズワルドはウインドウを開く。


 

――――――――――


【チート・クラフト】:レベル4


【ワールドチェンジ】


・RPG『マルクト戦記』レベル2


ワールドスキル


【通常攻撃】

【戦技】

【魔法】

     ・プチファイア◀

     ・ヒール

     ・キュア

     ・メテオレイン

     ・ライトニングシールド

     ・氷獄の嵐ブリザード・デス

     ・炎獄の怒りヘルブラスト

【防御】

【換装】

【逃げる】


――――――――――

  

 氷獄の嵐ブリザード・デスと炎獄の怒りヘルブラストを使う選択肢は無かった。


 ルシアンが死にそうだからだ。


 プチファイア、ヒール、キュア…ライトニングシールド。

 これらを使ったところでルシアンに効くとは思えない。


 消去法でメテオレインだが、オズワルドにはその意味が半分しかわからなかった。


 レインはわかる。雨のことだ。

 

 だが、メテオってなんだ?


 これは当然の疑問である。

 君は隕石が目の前に落ちてきたことがあるだろうか?


 そして「ああ、これがメテオだな」と思ったことはあるだろうか。


 おそらくほとんどの場合でないはずだ。


 何らかの書物、映像、それこそゲームなどの知識でメテオとは隕石…落下した星屑のようなものと認識したのではないだろうか。


 そうした記録や伝聞がない時代に生まれたオズワルドがメテオという単語を見て思ったこのは…。


 ダリオとかヒデオのような男性名詞っぽい感じがする。


 である。


 メテオレイン=メテオさんの雨。


 そう認識したのも無理はない話であった。


 説明を確認すると、やはり「メテオの雨を降らせる」とある。


 恰幅のいいメテオおじさんがじょうろで花に水をやりながら、こちらに向かって真顔で手を振っている姿が幻視された。


「よくわからないが、使ってみるか」  



――――――――――


【チート・クラフト】:レベル4


【ワールドチェンジ】


・RPG『マルクト戦記』レベル2


ワールドスキル


【通常攻撃】

【戦技】

【魔法】

     ・プチファイア

     ・ヒール

     ・キュア

     ・メテオレイン◀ ピッ

     ・ライトニングシールド

     ・氷獄の嵐ブリザード・デス

     ・炎獄の怒りヘルブラスト

【防御】

【換装】

【逃げる】


――――――――――


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― 新着の感想 ―
ルシアン、死ぬなよ…! 技が全部物々しいですね、さすが隊長!!
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