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いつまでも咲く花をきみに  作者: 塩味うすめ
手紙の降る夜
35/37

夜の虹

 


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 サラは沖の方で振りだした雨を見てグロンダン王国の船を思う。おそらくショヴァン将軍達の計画は手紙が降る時間に合わせてスゥクスの街に雨を降らせるものであった筈。もしそうなっていれば山羊への手紙は雨で濡れ読めなくなっていただろう。

 憶測で物事を進めるのは良くないが、サラにはサラの事情がある。その為には、まず山羊への手紙が無事に降らなければ始まらない。

 岬と沖で明暗別れたような空。頭上では雲ひとつない空が広がり、一つ目の月が輝く。

  

「虹が出て綺麗だったね。月の光でも虹が見えるなんて知らなかったわ」

「ね、アインにも見せたかったなぁ」

「何を言っている。そんな事より続きを」

 

 夜の虹を背にサラとベラは山の頂上を目指した。麓では出店があり多くの人で賑わい、山道は灯りで照らされて幻想的に見えた。紙が降るだけとはいえ2年に一度のイベント、皆がそれぞれ楽しそうに振る舞う中、サラとベラは楽しむ余裕もなく山頂へと急ぐ。


「オランドは?」

「会えたわよ。ほんの少しの間だったけど」

「どういうことだ?」


 サラとベラが山頂の広場に着いた時、歓声が上がった。一枚の手紙が空から落ちて、手紙の降る夜が始まったのだ。山道と同じように灯りが照らされた広場には、この瞬間をみる為に集まった人達がいて、そこにはオランドの姿もあった。

 星の河から山羊への手紙が一枚、また一枚と降り、不思議な天気が続く。懸命に手紙を手に入れようとする人もいる中、一枚の手紙がオランドを目掛けて降ってきた。


「今思えばあれは必然だったように思う」

「そうね、手紙は差出人から受取人へ届けられるのが当然だもの」


 その手紙を手にしたオランドは何度もそれを確認し、何度も空を見上げ、大事そうに胸のポケットにしまう。サラはその様子を黙って見つめていた。思いが叶う時や強い思い、それらには否応なく惹き付けらてしまう。 

 

「オランドさんは手紙を手に入れた後、呼び掛けた魔道具屋たち一人ひとりに感謝の言葉を掛け、広場を去っていったわ。魔道具屋達もその後を追うように居なくなってね」

「それで二人も帰ったのか?」

「いいえ、他に大事な事があったでしょ?」

「リヌスの手紙!」

 

 ベラの意地悪な問いかけに嬉々として食い付くアイン。サラは意外と二人は相性が良いのかも知れないなと思う。


「そう、リヌスの手紙。私達はそれを手に入れる為にも次々に降ってくる手紙を拾い集めたってわけよ」

「持っていった紙掴みとレターバッグが役に立って良かった」


 紙掴みはトングを掴み合わせて2回音を鳴らすと周囲半径1メートルの紙を集めて掴んでくれる魔道具。レターバッグは適当に手紙を放り込んでも整理してくれる魔道具だ。どちらもコモンの魔道具で郵送屋さんでは必需品となっている。


「それでリヌスの手紙はどうなった?」

「それが私がここに来た理由でもあるわ。はい、これがサラの取り分」

「ありがと。にしても早かったね」

 

 ベラがテーブルの上に出したのは300万フランの小切手、署名欄にはベソン兄妹の名前が書かれている。

 あの日手紙が降り終わり、回収をし終えたサラとベラの元に血相を変えたベソン兄妹が、グロンダン王国の軍人と共に現れた。そして息を切らしながらも広場に居合わせた人達に手紙を持っていないか聞いて回りはじめたのだ。

 彼らはどうにか手紙を回収しようと譲るように声を掛ける。サラとベラも当然譲るように言われたが、相手をしないとグロンダン王国の軍人は声を荒げはじめた。一悶着起きそうになり、割って入てきたのはベソン兄妹だった。


「ベラが煽るからヒヤヒヤしたよ」

「何だと?それは詳しく頼む」


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