表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつまでも咲く花をきみに  作者: 塩味うすめ
手紙の降る夜
28/32

サラの探し物

■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


『私が悪いって言うの』 


 酷い顔。被害者を装って、私に罪悪感を覚えさせる。


『あなたの事を思って言っているのよ』


 醜い顔。善人を装って、私を支配しようとする。


『どれだけ大変だったと思っているの』


 怖い顔。苦労を装って、私が普通ではないと告げる。



 私から私が奪われていく。感情のこめられた言葉が、私を私ではない何かにする。



「サラ」

「ん?おはよベラ。どうしたの?」

「どうしたのって、泣いてるから...」

「あ、ホントだ」

 

 もう何年も会っていない人達を夢で見た。既に忘れてしまったと思っていたけれど、顔も声も覚えていたようだ。ベラが泣きそうな顔で見ている。サラは涙を拭いながら、その様子がおかしくて口元を綻ばせてしまう。涙を流したくらいで、そんなに心配しなくてもいいのにと。


「大丈夫よベラ。心配しないで」

「そう。どこか痛いとかではないの?」

「うん...いえ、ベラの行動には頭を痛くしているかも?」

「もうっ」


 おどけて答えたサラに枕を投げつけるベラ。安心したのか、そのまま朝の身支度へと向かっていく。ひとりになったサラは目を閉じてゆっくりと呼吸を始める。


 頭の中に夢と変わらない顔と声が再生される。嫌な記憶。無かった事にしたいけど、過去を変える事は出来ない。もしあのままでいたら、どうなっていたのだろうか。逃れた過去の未来を想像しても仕方がない事だけど、何故か苛立っている姿が浮かぶ。

 最後に大きく息を吸って吐き、サラも朝の身支度へと行動を開始する。


「この国の人達は毎晩寝具を出して、毎朝片付けるんだっけ」


 昨夜、食事を終え部屋に戻ると敷かれていた布団。宿の人が収納にしまっていたのを出したのだと言う。ルブラン王国とは食事も衣服も違えば、寝る方法も違う。


「同じ世界に生きていても、違う世界で生きてきたように思っちゃうわね」

 

 サラの呟きが聞こえたのか、ベラが洗面所から声を出す。

 “”同じ世界に違う世界“”あのおとぎ話の中で、エーギルとリラは違う世界で暮らしてきたとあった。それでも二人は、互いに想い合えた。

 アインの言った1+1=2の世界と1+1=3の世界でも、それは可能なのだろうか。サラはぐっと伸びをして、窓の向こうの空を見上げた。


■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ