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いつまでも咲く花をきみに  作者: 塩味うすめ
手紙の降る夜
27/37

少し困った友人

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 ベソン兄妹が泊まる宿屋がわかったのは、それから二日後。スゥクスの街の魔道具店にオランドが来ていないか確認しにいった帰りの事だった。オランドはまだこの街には来ていないようだったが、偶然ベソン兄妹の二人が、ある宿屋から出ていくのを見かけたのだ。

 サラとアンリは急いで変装しに戻り、その宿の側で張り込むこと数時間。再び戻ってきたベソン兄妹は、高級そうな服を着た人を連れていた。

 

「あやしいね」

「うん。でも、これ以上はどうしよもないよ」

「...サラ!これ」


 アンリが〈臨時清掃係募集〉と書かれた張り紙を指差して、目を輝かせる。名案を思い付いたととでも言いたげな表情だ。


「ねぇ。一応聞くけど、ここで働くつもり?」

「そう!その通り。さすがサラ!」


 楽しそうにするアンリ。そんなの上手くいくはずがないとか、ばれたらどうするのかとかそんな心配する方が間違っている気さえしてくる。


「さぁ行くわよ。ここから私の事はベラって呼んでね、私達は従姉妹ということにするから」

「従姉妹って。待ってよアンリ」


 サラの呼び掛けに応えること無く、遠ざかっていく背中。


「アンリ...っもう!ベラ」

「何?」

 

 立ち止まって、嬉しそうな顔を見せるベラ。前から名前で呼んで欲しいと言っていたが、こうまでして呼ばせたいものなのか。アルク共和国に来てベラの印象はすっかり様変わりしてしまった。もう随分と敬語も使っていない。


「何かな?サラ」


 こうして隣に並んでくる、少し困った友人。


「はぁ、何でもないわ。ほら行くんでしょ」


 あまりベソン兄妹には関わりたくはないが、山羊への手紙に関する事で何かあるのなら確かめた方が良いに違いない。それに上手くいくわけないのだ。


「では、明日。お待ちしております」


 採用されてしまった。明日の一日だけ働くことになった。しかも清掃係ではなく、女中として。いや勿論、従業員として正式に採用されたわけではない。サラとベラは職場体験として、働くことになったのだ。

 繁忙期の1、2週間の臨時募集をしている所に、2、3日しか働く気がない者が雇われるはずもなく、はじめは断られた。だがそこで、旅の思い出にとベラが切り出した。

 最初からこの形を考えていたのか、宿の主人と話を始めて10分もしない内に話はまとまった。

 

 隣を上機嫌で歩くベラ。行き交う人々が、振り返って見ている。変装しても美貌は変わらない。宿の主人も圧倒されていた。世間で美人は色々とお得だと言われているのも納得だ。 


「上手くいくとは...」

「ふふん、見直した?でも、一日で分かるかしら」

「さぁ。分からなかった時は分からなかった時ね。もしグロンダン王国の人達が何かしてきたとしても、私がする事は変わらない。山羊への手紙を出来るだけ多く手に入れて、オランドさんに目当ての手紙を渡せるようにするだけ」


 確かにグロンダン王国の人達を含め他にオランドさんに依頼された人達の事も気になるが、出来る事しか出来ないのだからとサラは前を向く。今回の依頼は元々不確定要素が大きく、成功するかどうかも運によるところが多いのだ。


「それでこそ、サラよ」

「わっ」

 

 抱きついてきたベラに驚く。さっきの宿屋でもベラは自分達の事を従姉妹だと紹介していて内心、驚いてしまったけどそんなに親類に見られたいものなのだろうか。嬉しそうにはしゃぐ友人を見てサラは不思議に思う。


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