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いつまでも咲く花をきみに  作者: 塩味うすめ
手紙の降る夜
23/37

スゥクスの街

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■□


 昼前にアルク共和国へと到着したサラ達。可動橋を渡って、魔道車を波止場の近くに停める。辺りを見ると、照りつける日差しに蒸されてしまわないように、どの魔道車もルーフを開いて走っていた。


「この蒸し暑さよ」

「あまり長居はしたくないですね」 

「目的地のスゥクスは高地だから、ここよりかは幾分かマシって話だけど」

「...急ぎましょう」


 港でお昼を食べる予定を取り止めて、魔道車に乗り込む。二人でルーフを開き、アンリがハンドルを握る。歯車が滑らかに回転し始め、動き出す魔道車。サラは地図を取り出し、スゥクス迄の道のりを見る。


「あと2時間くらいかかりそうです。運転大丈夫ですか?」

「ええ心配無用よ」


 魔道車は山道へと入り、急カーブが続く。途中に大きな魔道車とすれ違う、この道は物資の輸送に使われているのだろう。山の木々が太陽の光を受けていて、その下で休む者もいる。現地の人だろうか、籠を横に置いている。こちらに気付くと、手を振り見送っている。手を振り返すと嬉しそうにして、更に手を振っていた。


 運転するアンリと初めて見る景色を堪能して、スゥクスに着いた。アンリの言っていたように港と比べると涼しい。街の入り口には[手紙の降る街]と大きく掲げられている。木造の建物が並び、商店では山羊への手紙に関する商品が並ぶ。それなりに観光地として作られているようだ。

 街の中を進みサラ達は手配していた宿で手続きを済ませる。宿屋も一週間後の手紙の降る日に備えて忙しそうにしている。案内された部屋に荷物を置くと、忘れていた空腹が蘇ってきた。

 

「お腹空きましたね」

「昨日もそうだった」


 宿の人に聞いたおすすめの料理がある店に行く事にしたサラ達。店の作りは歴史を感じさせるもので、中は香ばしい匂いがしている。店の人達の格好も、民族衣装なのか独特のものだ。

 

「あれはどうやって着ていると思う?」

「何だか難しそうですね。着てみたいですか?」

「う~ん、少し窮屈そうね。それに、店の中は涼しいから良いけど外だと暑くて大変そう」


 アルク共和国はマルテ大陸とは気候が異なり、また島国ということもあって独自の発展をしている。言葉にも訛りが見られ、サラの目には見るもの全てが新鮮に写る。おすすめされた料理はソバというものでパスタのような物らしい。


「あれ?口一杯に含まないのですか?」 

「私を何だと思っているのかしら」


 つゆに浸して食べるのは、少し慣れない。丁寧に口元へ運ばないと、跳ねてしまいそうになる。静かに進む食事。店の雰囲気も手伝って落ちついた時間が流れる。


「おや、ルリエーブルさん。こんな所でお会いするとは」


 そう感じていた時間が、塗りつぶされる。


「何か用?」

「あら。ベラ・ルイーズ・アンリ様とご一緒とは」


 笑顔を携えて声を掛けてきたのは、カミーユ・ベソンとミレーユ・ベソン。フィル商会に所属するベソン兄妹だ。

 ルブラン王国内で活動しており、オーベルを拠点としている。以前サラに何度もフィル商会の加盟店にならないかと誘ってきた事があり、その時から兄妹共にお金の事しか目に見えていないといった印象を抱いていた。


「いえ、用といった事はございません。見知った顔がいたものですから声を掛けた迄です」

「アンリ様こそ、どうしてルリエーブルさんと」

「あなた達には関係のないことよ」


 冷たく言いあしらわれても、ベソン兄妹の張り付けたような笑顔は変わらない。


「そうですね。では我々も食事をしますので」

「失礼いたします」


 奥の席へと去っていく、ベソン兄妹。アンブル商会のアンリとフィル商会のベソン兄妹は、もっと友好的な関係だと思っていた。アンリが考え事をするような真剣な表情になる。

   

「アンリさん?どうかしたのですか?」

「ちょっとね。サラ、宿に戻りましょうか」


 店を出て、スゥクスの街を歩く。やはりあの人達、ベソン兄妹も来ていた。サラはベソン兄弟と初めて会った日の事を思い出す。


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