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いつまでも咲く花をきみに  作者: 塩味うすめ
手紙の降る夜
20/36

魔道車に乗り

□□□□□□□□□□□□□□□□□□■□□□□□


 ルリエーブル魔道具雑貨店が小さく離れて行く。


 魔道車に乗り、サラ達は港街サールへと向かう。そこからフェリーに乗ってアルク共和国へと行くのだが、アンリは機嫌が良いらしくハンドルを握る手がリズミカルに動いている。店に迎えに来た時も、アンスリウムの花を飾ったアインを綺麗だと誉めていた。

 

「仕事は大丈夫なのですか?」

「大丈夫よ。みんな、私に気に入られようと動いてくれるから」

「そうなんですね」

「サラこそ、いいの?お店閉めてしまって」

「うちは、もともと不定休な所がありましたから。それに、オランドさんの依頼を達成すれば」


 サラはライトの先を見つめた。魔道車はオーベルの街を抜けて魔道車専用の道を走っている。カーブに合わせて二人の体が揺れ動いた。


「ごめんね、付き合わせちゃって」


 気を遣わせてしまったと思い、明るめの声を作って返す。


「いえ、こちらこそです。その、フェリー楽しみです」

「ふふっ。初めて?」

「はい。それで、海の上ってどんな感じがするんですか?」

「えっと、それはね・・・」


 日は暮れて、一つ目の月が空に浮かぶ。山を一つ、二つ越えると、港町の明かりが見えてくる。なだらかな下り坂を進み、二人を乗せた魔道車が、明かりの麓に着いた頃には、二つ目の月が浮かんでいた。


 サールはルブラン王国で一番の貿易港でもある。隣接する国以外の製品の多くは、ここを通ってルブラン王国内に流通している。サラも何度か魔道具を求めて来たことがあった。


「夜のサールは新鮮ですね」

「そうね、普段夜に来る事はないわね。うーん、でも初めての船旅が夜とは少し残念ね」 

「ですが水平線に昇る朝日が見れますよね?」


 サラの目に、暗い海に反射する様々な光が映る。遠くを見るその瞳は期待に溢れている。


「ええ」


 アンリも笑顔を見せて再び魔道車に乗り込んだ二人は、大型フェリーの船尾へと向かう。手続きを終えた魔道車は可動橋を渡り、フェリーの中へと入って行った。夜の7時に出港して、明朝の11時にはアルク共和国に到着する予定だ。


「お腹が空いたわね」

「はい」 


 フェリーのレストランで食事をとる事にした二人。サラはレストランの中を見回す。他の乗船客の姿もあるにはあるが、空席の方が目立っていた。


「観光シーズンではないんですかね?って、え?」

「ん?」


 パスタを口一杯に頬張るアンリ、よほどお腹が空いているのだろうか。その姿がいつものイメージとかけ離れていて、驚いてしまう。 


「何?」

「いえ、そんな急がなくても」

「だって、お腹空いてるんだもん」

「もんって」


 子どものような言い回しが可笑しくて笑ってしまう。アンリは口の中のパスタを飲み込むと、照れたように笑う。


「アルク共和国は今の時期、蒸し暑いから観光客は少ないんじゃないかしら」

「山羊への手紙が現れるというイベントは人気がないんですね」

 

 一枚100フランで売れるかどうかの魔道具だ。人気がないのは分かっていたが、それが現れるという不思議な現象は見る価値はあると思う。


「それね。アルク共和国ではエーギルとリラの手紙って呼ばれているのよ」

「エーギルとリラの手紙?」


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