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いつまでも咲く花をきみに  作者: 塩味うすめ
手紙の降る夜
13/32

夜戦

□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□□


 宿泊所の灯りが消え、さっきまで騒がしかった声も明日に備えて大人しくなる。昨日の夜は、疲れているようで言葉数が少なかった兵士達。今日はまるで人が変わったみたいに話し合っていた。

 セルジュは黙ってその様子を眺めていたが、灯りが消えるとドニのモーターサイクルコートを持って外へ出た。ゆっくりと、夜警をする兵士達を躱して歩いて行く。夜の闇が気持ちをひどく落ち着かせた。


 前線基地の外れで腰を下ろし、じっと足元を見つめる。もう考えることも、何かを思い浮かべることにも疲れて、このまま消えて楽になりたいと願う。空には星が数えきれないほどに輝き、一本の路を作っている。


「私は....」


「敵襲!敵襲!総員直ちに司令部前に集合せよ!」


 伝令が基地を駆け巡り、建物に光がともる。照らされた前線基地に焦燥感が満ちていく。

 

 司令部前には既にかなりの人数が集まっており、点呼がなされていた。セルジュは、偵察部隊の隊員を探す。ヴァレリーの姿を見つけると、その列に加わった。


 上官達が兵士達の前に並び、点呼の結果を受けとる。レミ少佐が頷くと、リュドヴィック少尉が前に出た。


「先程、歩哨に出ていた者より連絡があった。それによると日没後、退いていたグロンダン王国軍が再び侵攻を開始したとの事だ」


 兵士達の間に少しばかりの動揺が見られ、ざわつている。間を置いてリュドヴィック少尉がより大きな声を出す。


「敵軍の目的はこの前線基地の占拠もしくは破壊だ。詳細な戦力は不明だが総力を上げているものと思われる。こちらも全力で対応する事になる。各部隊はこの後、部隊長の指示に従い行動するように」


 そう言うとリュドヴィック少尉は下がり、レミ少佐と代わった。


「皆、王国政府からの情報ではこの戦争の終わりは近い。今日を乗り越え、共に帰ろう」


 希望に満ちた眼差しで発された言葉は、兵士達の士気を上げる。さっきまでの焦燥感はなくなり、今は高揚した顔がそこかしこに見てとれる。皆一様に帰れる事を期待しているのだ。だがセルジュは自分にはそれは許されないように思う。



 隊列を組み、前線基地を出る兵士達。ルブラン王国軍は人海戦術でこの夜戦に当たり、偵察部隊の隊員達も歩兵部隊へと組み込まれた。

 セルジュはヴァレリーの後に続いて行く。夜とはいえ、星空は明るく歩く分には問題ない。銃撃戦が始まろうというのに、セルジュの気分は落ち着いていた。


 どれくらいの距離を歩いただろう、急に前の方が明るくなった。光は先行していたルブラン王国軍の姿を露にする。


「光球を消せ!」


 レノー中尉の声が聞こえると同時に魔道銃の発砲音が鳴る。慌てる兵士達の様子に、予想だにしない場所で戦闘が開始されたのが分かる。


「こんな遮蔽物の無い所で」


 ヴァレリーが呟きが聞こえた。


「北西に向かい一斉射撃」 


 レノー中尉が指揮を執り、体勢を整える兵士達。発砲のあった方角へ一斉に魔道銃が撃ち込まれた。

 反撃へと移行するルブラン王国軍。

 銃弾が飛び交い、兵士に当たる。光に晒されている分、被害はルブラン王国軍の方が大きい。光球が消されるまでの間に何人もの兵士が倒れていった。

 

「散開しろ!」


 光球対策に散らばるように指示が出る。それを受けてセルジュは、魔道銃を片手に走りだす。対するグロンダン王国軍はルブラン王国の兵士達が散開するのに合わせ、前進してきた。


「特攻する気か!?」 


 驚きを隠せない声が後ろで聞こえ、前からは草原を踏み鳴らす音が響いていた。


□□□□□□□□□□□□■□□□□□□□□□□□

お読みいただき、本当にありがとうございます。

評価の方をしていただけると、大変参考になりますので、もし、よろしければお願いいたします。

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