5.3つの──
「いや、……ちょっと待てって……」
一ノ瀬さんは思わず唸る。
誰だっけ? 『土手にある』なんて言ったのは。
アレは絶対土手なんかじゃない。
あそこは、
河原って言うんだ──っ!
一ノ瀬さんは焦った。
朝から降り続いた雨のせいで、
増水した川の水は河原の方までせり上がり
水は今にも
白いその石をさらって行こうとしているのです!
そんなはずはないのに、一ノ瀬さんの目には
その3つの光る石が梨愛さん本人に見えました。
「梨愛……っ!」
思わず叫んで走り寄る!
ザア──……!
途端、バタバタと雨足が強くなり、
石に近づこうとする一ノ瀬さんの足を
鈍らせる。
一ノ瀬さんの持っていた傘に、
叩きつけるように降る雨は
ズシンと重みが増した。
「──っ、」
突風まで吹き荒れ始め
飛ばされそうになった──!
「くそっ……!」
──バタバタバタバタ……
風で傘が、今にも
折れそうな程に、しなる──!
考えてる暇なんてない。
躊躇していたら、小さなあの石たちは
綺麗に流されてしまう……!
一ノ瀬さんは傘を手放した──
ゴォ──…………
あっという間に傘は飛ばされ
見えなくなる。
けれど構っている暇なんてない。
一ノ瀬さんは慌ててその石へと
走り寄る。
それと同時に、上流から
龍のような濁流が押し寄せて来た──!
「っ、」
軽い悲鳴を上げ、慌てて手探りで
白い石を探す。
ない──!
ないないないない!
確かにここにあったのに!
あれほど綺麗に輝いていたその石は
何故だか跡形もないのです。
「嘘だろ……っ」
慌てて下を見たけれど、水はどんどん
勢いを増していく。
「梨愛! 梨愛!
返事しろ──!!」
ゴォオォォオオォォォ……!
地を揺るがすほどの轟音。
全てを飲み込むかの濁流。
まるで龍の雄叫びのようなその音に
一ノ瀬さんは怯んだ。
「……っ、
梨愛! 梨愛!?
何処にいる!?」
うねり狂う龍の頭が間近に迫った時
一ノ瀬さんの目の端で、
キラリと光るホタルを見た。
「梨愛──っ!」
そこからは、必死だった。
一ノ瀬さんだって、龍には捕まりたくない。
捕まる訳にはいかない。
けれど石を奪われるわけにもいかない。
だって、約束してしまったから。
──必ず拾ってくるよ。
って。
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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