3.落し物。
──『落し物?』
一ノ瀬さんがそう聞き返すと、
梨愛さんは頷きました。
──そう。落し物……
悲しそうにそう繰り返す梨愛さんが
一ノ瀬さんは何だか可哀想に思ってしまって
ニッコリ笑って、思わず頷きました。
「いいよ。探して来てあげる。
どこに落としちゃったの?
ウチの近く……?」
そこまで言ってハッとする。
「あ。でも待って?
俺今、家にいないんだ。
いや、いることはいるけれど
じいちゃん家にいるんだ──」
まで言ったら、梨愛さんがクスクス
笑い出す。
──ふふ。知ってる。
だって私、そこに電話してるじゃない?
「え? あ、そうか。……そうだよ……ね?」
コロコロ笑うその声に、一ノ瀬さんは
ほんの少しだけ、違和感を覚える。
だって梨愛さん、
なんで一ノ瀬さんがお祖父ちゃんの家に
いるって分かったんだろう?
一緒に来たことあったかな?
そもそも電話番号なんて、教えたっけ?
「……」
でも、考えても仕方がない。
電話は掛かってきたんだから、多分ずっと前に
教えたのに違いない。
とにかく落し物の場所を聞こう。考えるのは
それからだ。
一ノ瀬さんはそう思い、
受話器に耳を傾けました。
梨愛さんは続けます。
──そう。
そうなの。
今、むぅちゃんがいる所の近く。
西野川の河原に落としてしまったの──。
梨愛さんはそう、小さく呟いたのでした。
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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