2.電話の相手
──あぁ……良かった。
ホッとしたような、電話の向こうの相手の声に
一ノ瀬さんの心臓は跳ね上がります。
「え? り、梨愛?
もしかして、 梨愛なの?」
一ノ瀬さんは電話の向こうの
相手のその声に、思わず目を丸くする。
ゴロゴロと鳴り響いていた雷が、一気に
なりを潜めて消えていく。
だって、電話の相手は幼なじみの……
しかも
初恋の相手だったんですもの。
──うん。そう。
覚えて……いてくれたの?
コロコロと、笑うその声が可愛らしい。
忘れるわけなんかない。
一ノ瀬さんの声は
思わず大きくなる。
「あ、当たり前だろ?
忘れられるわけなんか──」
──ふふ。良かった。
あのね、むぅちゃん……。
お願いがあるの。
『むぅちゃん』──
むぅちゃんは、六月の『むぅ』。
一ノ瀬さんの愛称。
だけど、ただの愛称なんかじゃない。
まだ小さかった、幼なじみの
梨愛さんが
舌っ足らずの口で、初めて
『六月』の名前を
呼んだのが始まり。
大好きな彼女が作った、大切な愛称。
あ。でも言っておきますが、これでも言い方
成長したんですよ?
だって最初は『むぅたん』でしたから。
さすがに大きくなってから
語尾に『~たん』なんて言えませんから、
『~たん』から『~ちゃん』に
なりました。
え? そんなに変わらないって?
そこは……私には分かりかねます。はい。
とにかく、以来一ノ瀬さんを
『むぅちゃん』と呼ぶのはこの
梨愛さん1人なわけです。
「ん? お願い?」
一ノ瀬さんは聞き返します。
──…………。
けれど梨愛さんは、黙り込んでしまいました。
余程言いにくいお願い事なのでしょうか?
「…… 梨愛?」
──あの。
あのね、……。
『落し物をしてしまったの』──
梨愛さんは、小さくそう
言いました。
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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