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夏の夜の紫子さんとオレンジゼリーとかなり塩っぱい胡瓜揉み。  作者: YUQARI
終章 見つかってしまった、帰り道。
12/13

12.未練

 夏の夜。

 

 ……いえ、夏の早朝。



 何とも奇妙な会談が執り行われました。

(怪談……じゃないよ。──え? 知ってるって?)

(……)

 



 ……えっと、参加者は5名。

 

 1人はガイコツ。

 1人は化け猫。

 それから3人の人間。

 

 ──違う違う。

 えー……コホン。言い直します。(キリッ)


 1人はガイコツ。1人は化け猫。

 そしてもう1人、お化けがいるじゃないの。

 

 

 …………。


 あぁ、……紫子(ゆかりこ)さん? 紫子(ゆかりこ)さんのことですか?

 紫子(ゆかりこ)さんは、ああ見えても

 れっきとした人間で──

 

 

 

 ──違う違う。

   お化けなのは(・・・・・・)──

 

 

 

 

 

一ノ瀬(いちのせ)さん?

 私はちゃんと最初から、分かっていたの。

 ですから、隠す必要はないんです」

 紫子(ゆかりこ)さんは居間のソファーに

 腰掛けながら、ふわりと微笑みました。

 

 お茶の用意をしていた一ノ瀬(いちのせ)さんの手が

 ピタリ……と止まる。

 

「分かって……いた?」

「はい」

「……」

 何を……とは、一ノ瀬(いちのせ)さんは聞かない。

 そうかも知れないと、半ば

 勘づいてはいたから。

 

 はぁ……と一ノ瀬(いちのせ)さんは

 溜め息をつきました。

 

「だったら何故、俺に近づいたの」

「──お菓子のためです」

「……」

 キッパリと答えた紫子(ゆかりこ)さんに

 一ノ瀬(いちのせ)さんはぐうの音も出ない。

 

「……いやでも、俺、気持ち悪──」

「──今日のおやつが楽しみです」

「……」

 言葉を奪うように答える紫子(ゆかりこ)さんに

 圧倒されて、一ノ瀬(いちのせ)さんは

 言葉をなくしてしまいました。

 

「──おやつ……」

 ポツリ……とガイコツ──もとい梨愛(りあ)さんが

 呟く。

 

「そうだ。

 ……あれ(・・)が食べたいな。

 むぅちゃん。私、オレンジゼリーが食べたい」

 

「え?」

 

「ほら。むぅちゃんが初めて私にくれた

 おやつ。

 オレンジの皮のカップに入れた、

 オレンジ色のふるふるゼリー……」

 

「……覚えていてくれてたの?」

 

 驚く一ノ瀬(いちのせ)さんに、梨愛(りあ)さんは

 可愛らしく微笑みました。

 

「……私は、むぅちゃんのおやつ

 好きだから」

梨愛(りあ)……」


「ふふ。私も一ノ瀬(いちのせ)さんのおやつ

 好きですよ」

 紫子(ゆかりこ)さんも負けじと参戦。

「あの! あのあのあの。ボクも……

 ボクも一ノ瀬(いちのせ)さんのお菓子、

 大好きです……!」

 

 自分のしっぽをにぎにぎしながら、

 玉垂(たまたる)も参戦。

 

「……(可愛い)」

「……(可愛い)」

「……(可愛い。けどいつ食べたの? By一ノ瀬(いちのせ))」

 



「……あ、えっと、じゃあ丁度その問題のゼリー

 作り置いていたから持ってくるね」



 そう言って、一ノ瀬(いちのせ)さんは台所へと

 消えて行ったのでした。




 ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤✤••┈┈┈┈••✤••┈┈




 「あのぉ……。

  むぅちゃんは……死んで

        しまったのかしら……?」

 

 

 

 一ノ瀬(いちのせ)さんが台所へと消えてから

 梨愛(りあ)さんがポツリ……と呟きました。

 

「……はい」

 

 その言葉に、紫子(ゆかりこ)さんもポツリ……と

 言葉を返す。

 

「私たちが出会った時には、既に──」

 

 紫子(ゆかりこ)さんは、出された紅茶を

 飲みながら、ふぅーと息を吐く。

 

「交通事故だったようです。

 この世に未練──があるようには見えません

 でしたけど。でも、あの世(・・・)には

 まだ逝けないようです……」

 

 そう言う紫子(ゆかりこ)さんの言葉に、

 梨愛(りあ)さんはフフフと笑う。

 

「そんな事はないのよ?

 むぅちゃん、とてもパティシエに

 なりたがっていたから……」

 



 だから今もここに居てくれた──

 

 

 

 梨愛(りあ)さんは、どことなく、

 嬉しそう。

 

「……。

 あの……梨愛(りあ)さんは──?」

 

 紫子(ゆかりこ)さんは尋ねます。

「ん? 私?」

 

 梨愛(りあ)さんは少し考える。

 ──考えて、それから小さく微笑んだ。



「ふふ。

 私も未練(・・)があったから」

 

「未練──」

 

「そう。未練──」

 

 

 

 

     大好きなあの人の傍に

         いたかったから──。

 

 

 

 

 そう言って梨愛(りあ)さんは、

 一ノ瀬(いちのせ)さんが消えて行った

 台所の方を見たのでした。

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

     気軽にお立ち寄り、もしくはポチり下さい♡


        更新は不定期となっております。

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