優しい夕日
今日は夕日がきれいだった。いつもは真っ赤な夕日だ。
自分を強く照らして、オレンジ色に染め上げてしまうような夕日だ。
しかし、今日の夕日は、いつもの力強い夕日と違って雲に少し隠れていた。
そこからもれてくる優しい光が世界をオレンジ色に包み、一日の終わりを告げていた。
いつもは眩しいぐらいに、眩いぐらいに一日の終わりを照らす。
だけど、今日は淡く優しく照らしていた。
ドンと背中を押す光もなかなかに感慨深いものがある。淡い夕日も味わい深い。
前者は「明日、がんばれよ」と励ます感じがする。
後者は「今日も一日頑張った。無理せず人文のペースを大切に」と優しく肯定してくれる感じがする。
そんな一日を振り返ると、お世話になった2人を思い出す。
どっちもいい人だったけど、どっちも今は疎遠になってしまった。
今日の夕日は、そんな私たちをみんなてらしてくれてるのだろうか。
漏れなく照らしてくれるだろうか。
照らされた旧友は、私のことを思い出してくれるだろうか。
思いだしてくれたらうれしいなと思いつつ、こみあげてくる感情をぐっと抑え、別れ際は思い出さないようにする。
楽しかった思い出ばかりを見つめても、今は何も変わらない。
苦かった記憶を噛みしめても、過去は何も変わらない。
そんなことを思っても、こころは理性を知らんぷりし、物思いにふけってしまう。
そんなことを思いつつ、懐かしい海岸を通り過ぎてゆく。