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ハタチになりたくない!

作者: 七村 沙友

 明日で20歳になる。おめでとう、と言われたら素直に嬉しいし、私がこの世に産み落とされて20周年だなんて思えば、なんだかすごいことだと自分を鼓舞したくなる。19歳の誕生日よりも盛大にお祝いしようと居酒屋を予約して着々と準備をしてくれている友人を思えば、明日が待ち遠しくて早く布団に潜り込みたくなる。



 しかし、利点をいくつ並べても、私は20歳になるのが嫌だなと思った。永遠の10代でいたいなあと泣きそうになりながら思った。




 小さい頃の私は誕生月になればわくわくして、どこのお店のケーキを買ってもらおうか思い悩んで、プレゼントにねだるものを長い時間かけて吟味していた。歳が増えるごとに大人に近づける気がして、自由になれるようで嬉しかった。


 高校生になって初めての誕生日は、こんなにも多くの人がお祝いしてくれるのかと心底驚いた。沢山のLINEのメッセージと、一人では食べきれないくらいの大量のお菓子をもらった。



 みんなは「シックスティーンおめでとう!」と、それまで「○○歳」なんて日本語で言っていたのがださいみたいに、誰もがそう使っていた。私も誰かの誕生日にはよく使って、「いい一年になりますように」とか、「今度遊ぼうね」などの文章を続けて送っていた。



 17歳のときは、先頭に華をつけて、「華のセブンティーン」と呼ぶのが流行った。18歳のときは、大々的には言わないけれど、こっそり自分の中で「18禁解禁!」だった。これも嬉しかった。



 でも、19歳はどうだろう。「ナインティーン」と使う人は少数派だったかもしれない。「ラスト10代お互い楽しもうね」はあった気がする。その文面を見て、あと1年でハタチかあ……。とまだまだ子供でいたい私は悲しく思ったものだ。そうだ、19歳になるのはあまり嬉しくなかった。




 それがもう、20代に突入してしまうのである。制服に袖を通して朝早く家を出て学校に行き、全然勉強してなくてやばいと言いながらテストを受けて、早く帰りたいと嘆きながらそれでも楽しい部活をして、好きな男の子からLINEの返信が来ないことで友人と夜まで電話で語りあうような、青い10代は二度と戻ってこないのである。


 20代になったら何ができよう。大人に聞いたら、「20代も楽しいよ」って、「まだまだこれからじゃん」と決まり文句のように言われるけれど、私は本当にそうだろうかと疑っている。


 10代という黄金の台があったら、そこから背中をどんと押されて除け者にされるような感じがするのだ。私は真っ逆さまに底の見えない暗闇に落ちていく、そんな感じ。




 けれど、そんな思いを母に話したら、私が20歳になることを「私は嬉しいけど」と、それは素直に言ったのである。「20代だって楽しいよ」という大の大人からの教訓じみたアドバイスではなく、母の嬉しいという純粋な気持ちが、なんだか私を奮い立たせた。



 私の人生、10代でとどまってたまるものか、と前向きに、勇猛果敢に思った。やりたい仕事に就いて、美味しいお酒を飲んで、この人だと思える恋人を作って、10代のときには行けなかったような場所に旅行に行って、沢山笑って、喜んで、泣いて、そして、夢を叶えるのだ。



 そう考えを膨らませれば、20歳になるのも少し怖くない気がした。黄金の台から振り落とされてもいい。20代の、それはどんな色かは分からないけれど、台に乗るのだ。高くジャンプして、新たな台にしがみつくのだ。なんてことはない。楽しい20代の10年間にしよう。これまであまり思ったことがなかったけれど、明日はうんと自分を祝福しよう。


 ハタチになるぞ!


2021年10月、20歳になる前日に思いの丈をぶつけたエッセイです。

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