7.柳を強請って標的を出す
初投稿になります。
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何事もなく四限が終わるチャイムが鳴り昼休みに入る。
桐生から俺らの元へやってきて三人揃って芒野先生から指定の受けた生徒指導室へと向かう。
コンコンコンと三回ノックをすると、先生は既に室内にいたようで俺たちに入れと促す。
「柳に小野に桐生、朝は悪かったな。
俺も授業があったし、その場での解決が難しかったから時間を取らせてもらった。」
「いや、芒野先生気にしないでください。元はと言えば俺が一人で解決できなかったのが原因なので。」
「まあ、詳しい話は聞かなくても昨日の城泉寺の宣言は聞こえていたから大方予想はつく。
だが柳、お前がそのような問題を抱え込む態度でいるのはやめてくれないだろうか。
俺だって教員だ。生徒の問題に対して然るべき対処はする。」
芒野先生は俺の言葉に呆れながらも当然だといった雰囲気を出しながら話をすすめる。
「まあいい、概ねあの手紙の差出人に見当はついた。
本来であれば教員だけで対処すべきことだが、そう言ってお前らは納得しないと思うからな。
ひとまずはしっかりと差出人の正体については話しておこうと思う。
事情が事情なだけに一人召し捕ってそれで終いって話でもなさそうだしな。」
「芒野先生、そうはいっても先生がそんなことしていいんですか。」
俺たちは先生のまさかの言葉に唖然としながらも桐生が疑問を投げかける。
「くり返し言うが、本来であればこういった内容に対して教員が一丸となって事態の対応にあたるのが本来あるべき姿だ。
ただ、今回の色恋沙汰をそうして解決したとしても第二・第三の加害者が出てきてその度にイタチごっこになることが目に見えてる。
一人捕まえてまた次が出てくるなんてことが繰り返されたら柳の精神が持たないだろうと思ってな。
ひとまずは俺とお前らの秘密ということにして、どのように対処をするかは柳の意見を聞こうと思ったわけだ。」
真面目な顔をしながら芒野先生は俺の意見を尊重すると言ってくれた。
いじめ問題なんて有耶無耶にされやすいはずなのに、手段はともあれ生徒とよく向き合ってくれる先生だと思った。
「へー。てっきり藤原祭で1Cがトラブった時に先生があまりにもなんもしないから、熱血に見えてドライな先生だと思ってたわ。」
「ははは、そう言ってくれるな小野。俺だってその件は色々考えていたさ。
ただ、俺の在り方として教員ってのは月のような存在でなきゃいけないと思っている。
生徒っていう太陽の輝きを見守るのが教員の役目だ。基本生徒の自主性を重んじているんだよ俺は。
その結果、藤原祭の件は柳がなんとかしてくれたしな。
だからこそ、これはお前への評価と件の借りを返す事も合わせての判断だ。
まあとにかくだ、今回の件の差出人はこいつだろうよ。さすがに一年のノートやテストを見てたら嫌でも字でわかるわ。」
「…ああ、そういえば芒野先生は現代文担当ですもんね。納得です。」
おそらく、太陽と月といった文学的な例えの仕方と、犯人の見当の付け方の二つを理解したであろう桐生が相槌を打つ。
芒野先生の授業はとにかく板書が多く、定期考査だけではなく授業態度を見るためのノートチェックも欠かさない。
だからこそ朝のタイミングで差出人を特定するために俺たちにメモを預けるように言ってきたのだろう。
先生は一枚の紙切れを俺たちに渡してきた。協力するとは言っても言葉にするのは立場上問題があるのだろう。
紙切れにも薄っすらと筆跡がわからないよう限りなく消えそうな文字で二通の手紙の差出人を示す名前が書いてあった。
1D 蛙間 純平
芒野先生が差し出したメモには俺を二回も脅迫してきた人物の名前が書かれていた。
さて、実はそこそこ見覚えのあるこの人物をどのように対処するかを考えなくてはいけないのだが、好きにやれと言われても穏便に済ませたいと思うのが俺の本音であった。
が、その考えは即座に厄介な方向へと向かってしまう。
「話は聞かせてもらいましたわ。」
顔を見なくてもわかるやかましい声。ノックもせずにドアの蝶番が外れそうな勢いで入ってきた彼女は言葉を続ける。
「涼弛さんの危機でしたら私も協力を惜しみませんわ。」
招いていないどころか、騒ぎの張本人その二といっても過言でないお嬢様はこちらに協力すると胸高らかに言い張ったのであった。
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