表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

4.出る柳は打たれる

昼休みのイベントに満足したのか放課後に城泉寺(じょうせんじ)は絡んでこなかった。

一人で帰ろうとしたところでニヤニヤとした悪い笑みをした悪友に鞄を掴まれしょうがないから道哉(とうや)と帰ることにした。


「さてと、りょーじくーん。何から聞くべきか。」


「…お前に話すことはなにもない。結果なんてわかってんだろ。俺は城泉寺と付き合う気はないんだ。そっとしておいてくれ。」


「そうは言うけどよ、涼弛。お前だってそろそろ前を向いてもいい頃だろ。いつまで中学時代の話を引きずってんだよ。」


「その話を引きずっているつもりなんてない。俺にだって普通に人と関わっていきたいとは思っている。

ただ、相手が相手だよ。それに、俺は城泉寺に好意を持たれるようなことはしてないから謎なんだ。」



俺にだって恋愛をしたいという気持ちもある。いわゆる普通の恋愛をしたい。

徐々に()かれ合ってお互いに幸せになれるような関係を築きたいところだが、そういった思いを裏切った展開に困惑している。



そしてなぜここまで好意を持たれているのかが未だに謎に包まれている。

直接聞く選択肢を忘れるほどに彼女のペースに飲まれているのが現状だ。


そもそも昼休みの道哉の立ち回りさえなければそういう機会もあっただろうにというボヤキも出てくるが、とにかくわからないことが多いのである。



「ま、恋愛をなんてそんなもんだろ。海賊女帝(ハ◯コッ◯)だって恋はハリケーンなんて言ってるぞ。」


「馬鹿野郎、世の中には理由があるんだよ。嵐がだって突然は来ないんだからそんな流れと勢いで丸め込まれんぞ。」


「はあ、相変わらず理屈っぽいんだよ涼弛は。ま、それでも一つだけはっきりしたことがある。」


「なんだよ。」



「別にお前、城泉寺が嫌いってわけじゃないってこと。それと恋愛に興味がないわけじゃないってことだよ。

これだけわかれば俺は明日からは学園生活をさらに楽しんで送れそうだぜ。」



能天気(のうてんき)にはしゃいでいる道哉の話を聞きながら自分に問いかける。

本当に城泉寺が嫌いじゃないか。これの答えはその通りだろう。


正確に言えば好きでも嫌いでもなく、よくわからないといったところだ。



二つ目に恋愛に興味がないか。これについては自分でもよくわらない。


異性と関係を深めることに恋愛感情が必要なのかは昔から疑問に思っている。

仲がいいならそれでいいのではないか。男女問わず交友関係を広く持つことが悪いことではないと去年までの涼弛ならそう思っていた。


その考え方の在り方に迷っている最中(さいちゅう)で、この疑問については答えを用意できないでいた。



「まあどっちにしろ、そういうつもりはないってことだけは伝えておくつもりだよ。」



力なく俺は道哉に向かって再度自分の出した結論を伝える。

道哉もこれ以上は無駄だと感じたのか、まあ好きにしろと会話を流す。



体調のこともあってか、道哉は珍しく母親が送迎をしてくれていたようで、駐輪場と校門の分岐点で別れた。



帰るために自転車カゴに鞄を入れようとしたところ、カゴの中に違和感を感じてそれを手にした。


B5サイズの紙が二つ折りになって入っていた。俺は開いて文章に目を通す。


城泉寺泉へ近づくな。



たった一文の殴り書き。

そのささやかな一文だけで平穏が遠のくことを想像し、涼弛は顔をしかめながら帰路へつくのであった。

毎週月曜日と金曜日の11時更新予定です。

続きを見ていただける方はブックマークをしていただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ