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1.寝耳にお嬢様の告白①

初投稿になります。

誤字脱字や感想などがございましたら、お気軽にご連絡頂けますと幸いです。

話は今朝にさかのぼる。

涼弛(りょうじ)の通っている藤原学園は自宅から自転車で15分ほどかかる距離だ。

冬にも差し掛かる時期だというのに最近は比較的、暖かいような気がする。


もっとも、数年前の冬と比べるとそう感じるだけであって、朝起きるのはとても辛い。

7時前に起きて顔を洗い、妹が用意してくれている朝食にありつく。

比較的早い時間だというのに妹は部活動の朝練ということでこの時間には既に家を出ている。

親父は早朝には家を出ていく忙しい男で、現状この家には誰もおらず一人で朝食を頂いているわけだ。


朝食を済ませ、身支度をして学校へ向かう。

布団から出る前は死ぬほど出たくなかった冬の世界であったが、外に出るとそこまで寒くはないように感じる。


自転車を走らせ野球部の練習風景を尻目に、いつも通り8時前に学園に着き教室にいた

数名のクラスメイトに挨拶をした後に机に座り今日の時間割で必要なものを確認した後に2度寝を決め込む。


中学時代の終盤に二度寝の良さを知ってしまったおかげで遅刻を繰り返したことを反省し、2度寝は教室でするという結論に落ち着き、このスタイルで生活をするようになった。

机に顔を伏せ数分。俺はウトウトしてきたところで、バン!バン!と机を叩かれたことで飛び起きる。


「なんだよ、予鈴まで時間があるのに叩き起こすなんて、…常識ねえのかよ。」


「あら、柳さん申し訳ありませんね。少しお話したいことがありますのよろしいでしょうか。」


「えっと、城仙寺(じょうせんじ)か。誰であろうと睡眠の時間を邪魔した罪は重いところだが、まあいい。それで話ってなんなんだ。」


話しかけてきたのはクラスメイトの城仙寺 泉(じょうせんじ いずみ)であった。

成績優秀で運動神経抜群という絵に書いたような女子生徒である。

長く(つや)のある髪はまるで生糸(きいと)のような質感をしており、おまけに城仙寺財閥(じょうせんじざいばつ)のご令嬢ということで学校内ではかなりの有名人だ。


ただ、この起こし方からもわかるように少し常識はずれというか、自己中心的で品行方正からは離れている人物でもある。

スペックの高さからは家庭内の英才教育も賜物(たまもの)だろうに、育ちの良さは見えないので、財閥の教育方針には少し疑問を抱く。



「ここで話すのも少し気が引けますので、少し別の場所に移動してお時間を頂いてもよろしいですか。」


「いきなり人を叩き起こして今度はどこかに移動したいか。

別に構わないが、朝は部活動の朝練でどこも埋まっている状況を知っていて言っているか。」


「あら、そうですのね。なら尚更悪いことをしましたわね。

そうしましたら昼休みの中庭でいかがでしょうか。」



そうは言っても非常識さの中にも礼儀が見え隠れ。掴めない人物だな、この女子生徒は。

ただ、話を聞かれたくないような素振りをしているが、今の発言を聞くからに学内の事情についてはあまり詳しくないのだろうか。

ことごとく彼女の提案する時間は生徒の出入りが多い時間帯ばかり指定をしてくる。



「昼休みこそ人に聞かれたくない話をするならどこも空いてないだろ。

そこまで思いつめた話なら放課後のほうがいいと思うぞ。部活動で空いている場所も多いだろう。」


「承知しましたわ。そうしたら放課後の中庭でよろしいかしら。」


「わかった。色々と注文つけてわるかったな。」



とりあえず彼女の注文通りの内容に合わせて時間と場所を決めたところで満足そうに長い銀髪をなびかせて座席へ戻っていく。

SHRまでは後五分か。さすがに今の会話で頭も冴えてきたせいか寝直す気にもなれないので座り直してあたりを見回す。



(そりゃ、視線を集めるよな…。なにがここで話すのは気が引けるなんだか。)



俺と城仙寺の会話風景は予想通り周りからは目立ちすぎたようで、SHRが始まるまでの5分間は入学史上とても居心地が悪い5分間であった。

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