劉備「雲長メンドクセ……」
後漢末期、政治の腐敗から国は大きく乱れ群雄が割拠する事態となってしまった。群雄たちは互いに覇権を争い、とうとう曹操の魏。孫権の呉。劉備の蜀と三国時代に突入するのである。
◇
ところで、この劉備という群雄は、戦下手の政治下手で一つのところに定住できない。あまり素質のない男であったものの、なぜか人が多く集まってくるという才能だけはあった。
助けてやりたい。力を貸してやりたいと思うものが集まるのだ。だからいつも彼の回りには人がいた。
その中に関羽、字を雲長という智勇兼備の将がいた。劉備の旗揚げ時代からずっとくっついており敵将の首をあげ、良いアドバイスを送る。劉備と一度離れて曹操の配下となるも、居場所を突き止めると彼をしたって千里を縦断してその元に戻ったという美談もある。
ことあるごとに劉備、劉備で彼が落ちぶれても見捨てることなどしなかった。これが劉備にとっては大きかった。この危険な戦国の世に命を落とさなかったというのが、彼にとっては大きな幸運だったろう。
劉備は関羽を厚遇……というよりは寵愛といっていいだろう。劉備は人間として関羽を愛し、関羽も劉備を慕った。
であるから、関羽は劉備の配下では自分が一番の理解者であり、守護神であるとの自負があった。
そんな劉備も流浪の末、赤壁の戦いで曹操が破れたのち、荊州に居を定め、さらに益州、漢中を取った。中国の四分の一の広大な大地である。
これには、劉備の旗揚げ時代からの関羽、張飛、そして軍師の諸葛亮の力が大きかった。
ここで劉備は、漢中王を称した。文武百官、自分たちの主君が王になったと大喜び。
劉備は今までの戦功に対してそれぞれに地位を与えた。そこで二品官である、前左右後の四人の将軍を任じた。
序列は前、左、右、後の順で、前将軍に関羽。左将軍に馬超。右将軍に張飛。後将軍に黄忠というものであった。
この時、関羽は遠くの荊州を守っていたので費詩という文官に任命書を預け荊州に向かわした。
◇
さて劉備にはもう一人弟分がいた。先にあげた右将軍となった張飛だ。
右将軍になった張飛は大喜びである。自分の地位は軍閥で第三位。
この張飛という人物は、世のため人のために劉備と立ち上がったが、権威や高貴な人が好きで、逆に自分より目下のものを軽んずる傾向にあった。
それが大きな役目を与えられ、忙しくて目の前がグルグルである。
ある時、その張飛が漢中王の宮城で竹巻を持ってキョロキョロしている。竹巻とは、当時の紙の代用品で、細く切った竹を横一列に編み込んでそれに書くといった代物であった。
それを見つけた劉備。共に連れていたのは軍師の諸葛亮である。慌てて物陰に隠れて張飛の挙動を見守っていた。
「おいおい孔明見てみろよ。あの燕人張飛がちっちゃくなって竹巻抱えながらウロウロしてらぁ」
「おやおや本当ですねぇ」
「なんだなんだ? 上奏かなぁ? 余りにも様子が変だ。ひとつ脅かしてやろうじゃねぇか」
「それは誠に面白くなって参りました」
まるで王様とは思えない言動だが、劉備は田舎の出で大将の器ではあるものの、非常になつっこく軽口を聞くので、頭の良い儒者という人たちには軽蔑されたりもしていた。
だが軍師の諸葛亮はこんな劉備を好きになり、生涯をくっついて回ろうと決めた、劉備一家の一人であった。
二人は張飛の後ろにそっと迫り、大声を出した。
「わ!!!」
「わぁ!?」
張飛が飛び上がって驚き振り向くと、劉備と諸葛亮は腹を抱えて大笑いである。張飛は恥ずかしくて真っ赤になっていた。
「なんでぇなんでぇ。兄者……いや漢中王さまと孔明先生じゃねぇか。なにを脅かしやがるんでぃ!」
と啖呵を切るものの、二人とも先ほどの張飛の顔を思い出しては笑い、鼻まで吹いていた。
「だってだって可笑しいじゃねぇか」
「あの勇猛な将軍が『わぁ!?』だって……」
笑いが治まらない二人に張飛は呆れた。
「誰だって驚くことくらいあるでしょう。もう二人には敵わねぇな」
それに劉備は笑顔で問う。
「まぁまぁ怒るなって右将軍。なんだって竹巻持ってウロウロしてやがんでぃ」
「ああ、これか? これは尚書令の劉巴どのへの手紙でい」
尚書令とは王様の文書を取り扱う役人である。高官で劉巴は貴族の地位にいた。
「劉巴に手紙だって? 何て書いたんだ、見せてみろ!」
と、劉備は張飛の手から無理やりむしりとると、諸葛亮とともに広げてそれを見た。
するとそれは「今後は仲良くなって国の未来を語り合おう。貴家に赴きたいがよいか」という内容だったので、二人とも感心した。
「お前……。お前さんは綺麗な字を書くねぇ」
「いやいや、それは嫁に書いて貰ったんでぃ」
「ほぅ。なるほど三娘が。こら手がこんでるねぇ」
張飛の嫁は、夏侯三娘と言い、魏の名将、夏侯淵の姪である。敵国魏の頂点である曹操の父と夏侯淵の父は兄弟なので、張飛の嫁は曹操とは縁者。幼い頃より女の教育を受けてきたので、字などお手のものだった。
「これを劉巴どのに渡して、これからさらに漢中王の国をよくするのよ。お。劉巴どのだ!」
ちょうど劉巴は会議の席から出てきたのか、張飛は走っていって頭を下げて竹巻を渡していた。
劉巴は立ち止まりも挨拶もせず、歩きながらそれを受け取ってさっさと行ってしまったが、嬉しそうに劉巴の背中を見守る張飛を二人は遠目に見ていた。
「本当に良くできたご舎弟ですな。張飛将軍は。国を思った良い心掛けにございます」
「いやいや。しかし劉巴の態度は何か変だったな。変わりモンか? アイツは……」
と劉備は義弟を誉められて謙遜したものの、逆に劉巴の態度には嫌悪した。
さてそれからしばらく経って、諸葛亮は宮城に張飛を見つけたので呼び止めると、眉間にシワを寄せておっかない顔をした張飛は振り返って、顔を緩めた。
「ああ先生じゃありませんか!」
「右将軍。なんという顔をしてらっしゃる。いつもの朗らかな顔をして頂かないと困りますな」
と言って羽扇で口元を隠して笑った。
「いえいえ先生。これが顔をこわばらせずにいられますか!」
「なんです。仰ってください」
「劉尚書令のお話は先日いたしましたが、あれはヒドイ」
「何がどうヒドイのです?」
「オイラは劉巴どのから返事がなかったので、彼の屋敷に赴いたのです。すると使用人が迎えてくれて応接間に通されました。劉巴どのがいつくるのかお待ち申し上げましたが、いつまで経ってもこない。土産にもってきた美酒を飲むわけにもいかず、その酒瓶を眺めながらいつしか眠っておりました。気付くと朝でしたので、使用人を呼ぶと、すでに劉巴どのは出仕して留守だと。オイラは劉尚書令が話をする気が無いことを知り、頭に来て屋敷を出ました。もうこんなこと懲り懲りですよ」
と口を尖らせたので、諸葛亮も思うところがあったので、張飛をなだめてその場は別れた。
そして劉巴の元に急いだのである。その顔は引き締まっており、静かに怒っていた。
劉巴を見つけると、諸葛亮は小走りしてそれを捕まえた。
実はこの時、劉巴は尚書令、諸葛亮は軍師将軍であり、官位は劉巴よりも下だったが劉巴は諸葛亮を尊敬していたので、素直に立ち止まって話を聞いた。
「おや先生ではございませんか。先生の日々のご健勝をお祝いいたします」
「いやいや、尚書令どの。私は貴殿に少し意見したいがよろしいか?」
「なんなりと仰ってください」
「ではお話申そう」
その頃になると、二人の回りには人が集まっており、何が始まるのかとその様子を見守っていた。
「貴殿は張右将軍より国家の話をしたいという手紙を受けましたね? しかし右将軍が貴殿の屋敷に赴いても貴殿は話もしなかった。それは何故です」
とやるので、劉巴は胸を張って答える。
「ええもちろん。大丈夫たるもの四海の英雄を招いて天下を語るべきです」
と前置きをした。二人の視線は中央でぶつかったままだ。劉巴は続けた。
「しかし私は小人と話すつもりはありません。兵卒と天下を語ってなにになります」
小人とは、行いの正しくないもののことで、貴族が庶民をバカにしていう言葉だ。諸葛亮は羽扇で口を隠して細くため息をついた。そして声を張り上げる。
「小人!? 小人ですと? 右将軍は天下の大器! だからこそ漢中王より右将軍を賜った! この天下は未だに落ち着いて居らず、魏の曹操は虎視眈々と帝位を狙っている! 敵は外にあるのにわざわざ内側に敵を作るなど、どちらが小人でしょうか!」
と怒った。劉巴とて尚書令につく程の才気ある人物である。すぐに諸葛亮の言葉を受け入れ、頭を下げた。
「尚書令。頭を下げるところが違いますぞ」
「ええ。分かってございます」
その夜。張飛の屋敷を訪れるものがあった。門番が中に取り次いで、張飛の妻である夏侯三娘がそれを取り次いだ。
「あ。これはこれは尚書令さま──」
「おお。右将軍のご内儀か。張飛どのはご在宅か?」
「えっと……、主人は……、ちょっとお待ちください」
三娘は張飛が劉巴のことを怒っていることを当然知っていたので、来訪を告げたら怒り出すのではないかとハラハラしながら張飛の元へといくと、やはり怒り出した。
「なにがくぬヤロー! 今さらご在宅もあったもんじゃねーやな!」
と寝台にゴロリとなってしまった。妻の三娘も張飛の気持ちが分かったが意見した。
「でもねぇ。兄者さんの国作りには必要な人なんじゃないの? 益徳さんはそれでいいの?」
「………………」
しばらくそのままだったが張飛は跳ね起きた。
「そうこなくっちゃ。さすが益徳さん!」
「まったく。兄者をだされちゃしょうがねぇ」
張飛は貴賓を迎えるよう正装に着替えてから足を鳴らして劉巴の元に笑顔で赴いた。
「おおー! これはこれは尚書令どの。先日は暇も乞わず帰ってしまい申し訳ございません」
と自分に非があるようにいうので、劉巴は張飛に背中を向けてしまった。
「いえいえ。拙者が物知らずなために張将軍に非礼を働いたのに、そうこられては立つ瀬がございません」
しかし張飛は、劉巴の手を取って屋敷の中に誘おうとしたが、劉巴は足を踏ん張ってそれを固辞した。
「実はこれを持ってきました」
と言って出すのは酒瓶。蓋をしてあっても僅かに薫る芳醇さに酒好きな張飛は舌なめずりをした。
「おお。では早速飲み明かしましょう!」
と言うが劉巴は首を横に振って笑う。
「これは罰杯ですよ」
「ああ罰杯ですか!」
罰杯とは、友人同士の付き合いで、詫びるときにやる行為である。酒を波々に杯に注いで貰い、それを一息にあおる。
一息で飲めないからと言って罰があるわけではないが、互いにその様子を笑い合うというものであった。
それをしなければ劉巴は屋敷の中に入れないというわけである。
張飛は屋敷に向かって叫んだ。
「おおい! 三娘! 罰杯だ! 杯を持ってこい!」
すると中からバタバタと足音が聞こえたかと思うと、三娘が杯を持って駆けてきた。それは大きな杯だった。
「う。右将軍のお屋敷の杯は大きいですな」
「あたぼうですよ。罰なんですから」
それは三合ほど入る大きさだった。劉巴がそれを両手を添えて持ち、張飛が酒を注いだ。そして笑う。
「さあ一息に!」
「ええ。私は張飛将軍に無礼を働いた。ここに詫びを入れます!」
と言って「くっ」と一息に飲み干した。だが足に来てしまい、張飛の胸元に倒れこんだ。
「劉巴どの! 大丈夫ですか?」
「いえいえ、これでお許し願いたい」
「もちろんですとも!」
張飛は、劉巴の前に回り跪いてから預かった酒瓶を天に向ける。
「私は劉巴尚書令に一時怒りの感情を持ってしまったことをお詫び申し上げる!」
そう言って酒瓶の中の酒を一気にあおり、二人は微笑みあった。そして屋敷の中で天下を語りながら飲み直したのである。
そのことを伝え聞いた諸葛亮は、早速劉備に申し上げると、劉備は悶絶してフニャフニャになってしまった。
「どうしました? 我が君」
「だって張飛のやつは可愛いじゃねぇか。アイツはいつも俺のことを考えてやがる。国のことを考えてやがる。本当に出来た義弟だ」
その言葉に、諸葛亮もニッコリと微笑んだのであった。
◇
さて張飛はそんな調子だったが、劉備のもう一人の義弟、関羽である。
彼は漢中王劉備の使者である費詩を歓待して上座に据え、自分は下座にひれ伏して口上を待った。
費詩は任命書を開いて読み上げる。
「関羽、右のものの今までの功績は数えきれず、上げる将の首は荷車でも運びきれず、その働きは誠に顕著である。よって前将軍に任ずる」
「せ、拙者が前将軍ですか! やれ嬉しや。兄者は分かっておいでだった」
と顔をほころばせ、今までの歴戦を思い出し涙した。
「して、儂が前将軍ならば同格に左右後の三人がおいでだ。一体誰が任命されたのか?」
と費詩に問うた。費詩は答える。
「さすれば左将軍に馬超どの。右将軍には御舎弟張飛どの。後将軍には黄忠どのでござる」
それを聞いた関羽は真っ青になって震えたかと思うと、今度は真っ赤になって烈火のごとく怒った。
「な、なに!? なんだと!? 張飛は分かる。儂の舎弟だからな。今まで共に戦った友だ! しかし馬超は降将! 黄忠など死に損ないの老いぼれではないか! そんなものとこの関羽が同格か! 命を掛けた儂の功績はそんなものか! そんな任官は引き受けられぬ。帰ってそう伝えてくれ」
とプイッと顔を背けた。まるで思いどおりにならないことを怒る思春期の子どもの反抗だと費詩は苦笑いをした。
「前将軍。そのお言葉は間違いでござる。どうか考えをお改めください」
「なにが間違いか!」
と怒りが冷めやらないので、費詩は声を張り上げた。
「なぜ漢中王さまのお心を前将軍任官だけと思われますか! 漢中王さまと将軍とはまさに一心同体! 漢中王さまは漢中に、将軍は荊州にいようと心は一つではなくてはならないのでは? 漢中王は将軍。将軍は漢中王と同格です。それが国作りに大切な任官が不服で官位の上下を気になさるのであればよろしい。そのまま漢中王さまにお言葉を伝えましょう」
と言って出口に颯爽と歩き出したので、関羽は泣きながら費詩の袖を掴んで止めた。
「ああ、とんだ勘違いを致しました。ご使者のおっしゃる通り、儂と漢中王は同格で共に死のうと誓った仲です。最近は漢中王と会えずに寂しい日々を送っておりましたので、ついいじけたことを申しました。どうかどうかご容赦を」
と言って、またもや下座にひれ伏した。費詩は笑って答える。
「いえいえお分かりになられれば結構でございます。この荊州の要地を将軍にお任せになっていることを考えれば、将軍への信頼度も分かりましょう」
「はい。申し訳ございませぬ。穴があったら入りたい気分です」
関羽は反省し、宴席を用意して費詩をねぎらった。
費詩は荊州から帰って、劉備と諸葛亮の前でそのことを報告した。
劉備は深くため息をつく。
「そうなんだよなぁ。関羽、そういうとこあるからなぁ。よく諌めてくれた。ありがとうな」
「いえいえ、もったいのうございます」
「はぁ孔明先生よ。そんなめんどくさい関羽だけどこれからもよろしく頼むぞ」
「よく存じておりますから大丈夫ですぞ」
と諸葛亮は笑って見せた。
さてしばらくすると劉備の元に書簡である。それは関羽からのもので、見た瞬間、劉備はまたもやため息をついてしまった。
近くにいた諸葛亮は何事かと聞いてきたので手紙を渡した。
「関羽からだ。読んでみよ」
諸葛亮はそれを手にとって読み上げる。
「左将軍となった馬超どのの勇名は聞いております。西涼の錦と称される馬超どのが儂と肩を並べられる人物か、会っていないので分かりません。ここは漢中に赴いて、一つ手合せしたいと思いますのでお許し願いたい」
との内容で、諸葛亮が読み終わると劉備は顔を青くしてため息をついた。
「いや関羽は良くできた義弟でな、余の右腕とも左腕とも頼むヤツなんだよ、孔明」
「存じております」
「しかしこうも面倒くさいとなあ~……」
と、人事を引っ掻き回す発言にさすがの劉備も辟易してしまった。
諸葛亮、進み出て進言する。
「まあまあ我が君。関羽どのには一筆書けばおとなしくなりますのでお任せください」
「なに孔明、それは本当かい? いやぁ言ってみるもんだ。頼みにしているよ」
それからしばらくして関羽の元に諸葛亮から書簡が届く。見るなり関羽は破顔して呵呵大笑だった。
さて関羽の預かる荊州には関羽を補佐する文官に馬良がいた。眉毛が全て白髪で白眉と言われる名士だった。
関羽はせせこましく働く馬良の足を止めた。
「おいおい馬良。馬良」
「ああ関羽どの」
「これは孔明先生からの手紙でな。お前、声が良いから一つ読んでみなよ」
それに馬良は細長くため息をつく。
「またですか、関羽どの。これで七回目です」
「まあそういうな。そなたは孔明先生を尊兄と読んで義弟となったのであろう。これはその尊兄からの手紙だぞぅ。ありがたく読みたまえ」
もう勘弁して欲しいと思いながらも書簡を手にとって読み上げた。
『関将軍。馬超は希代の英雄で、文武両道、いにしえの勇者の風格があります。今後は張飛どのと戦功争いをするのが楽しみでございます。ですが髯殿とは別格。気にする人物でもございません』
と読み上げたところで関羽は馬良に向けてニンマリと笑う。
「分かるか? 意味」
「分かります」
「まあ聞け。この髯殿とは儂のことだ」
「存じております」
「はぁっはっはー! 孔明先生は我が陣中には儂以上の将はいないと仰っておるのだ!」
「誠にもって」
「このご恩に報いるために、儂も功績をもって応えねばなるまいなぁ。なにしろ儂は馬超や黄忠とは違うからな」
そう言って、城の城壁に立ち遠くを見つめて微笑んだ。見つめた先には敵国魏の首都があった。
関羽が馬超と手合せなど言わなくなって劉備はホッとして諸葛亮の神のような手紙を褒め称えた。
しかし天狗になった関羽はご恩に報いるためと魏を向けて兵を発した。
これは「荊州を守れ」という軍令に違反したものだった。
初戦は勝利を飾り、曹操すら首都を遷そうかと恐れるほどだったが、秘密裏に通じていたもう一つの勢力、呉が関羽の本拠地である荊州の城を取ってしまった。
関羽は魏と呉に挟まれ、呉によって捕らえられ、その首を取られてしまったのだ。
関羽の行き過ぎた行動に、兄弟を誓い合った劉備と張飛は身を切られる悲しみを味わい、この後、魏と呉とは泥沼の戦の歴史に突入していくのであった。