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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

前世の俺はお前さんの恋人だ?んなもん信じられるわけねーっつの!…前世で恋人と主張する変わった女の子に付き纏われて困ってます

作者: rime



「ネオ、今日こそ思い出してもらえますか?」


「悪いが…お前さんと愛し合った記憶なんてないねェ」


「そうですか…。ですが、私の身体は貴方の唇の感触や、力強い抱擁はもちろんですが…そ、そのっ激しく打ちつけられた時の貴方の」


「ハーイ。ストップ。ルシフェルちゃん、それ以上はノクターンノベル行きだ」


「…?の、のく?」


「いや、知らねェならいいや。」


目をぱちぱちと瞬きさせて、俺を見つめてくるババ……いや、少女の名前はルシフェル。

しっかり胸元を強調するような礼装は、腰回りなどもわかるぐらい体のラインがはっきりと分かる。

……その辺のおじさんなら、この色香にイチコロなんだろうな。


どうやら前世のオレは、この子と相思相愛だったらしい。

……らしい。正直信じてない。

毎日毎日、求愛行動されて貞操の危機に何度陥った事だか。

その度にルシフェルを炎魔術で燃やし、灰にしてきた。……すぐ生き返ったけど。


「とにかくっ!私はまたあなたに会う為に、この地上で長い間待ち続けていました」


何を言っているのか、まるで分からないだろう?

面白おかしい事に、ルシフェルちゃんは自分をうん100年前から存在する、堕天使であると主張するのだ。

最初は電波入っているのかと、俺はこの子を本気で心配した。

しかし、戦闘時の圧倒的な魔力量と質から推測するに、恐らく人間ではない人外の力を持っている事は確かだった。

おまけに不死身の体。燃やそうが、切り刻もうが、潰そうがすぐに再生されてしまう。

とんでもない女の子につきまといされている俺。

……モテる男は辛いってこういう事なのか!?


ついでに、女から好意を示される事が無かったために、こうも露骨だと正直面食らう。

愛しい、という感情を俺が他人に向ける事など、本当に有り得るのだろうか。

他人に興味自体は元来かなり薄い。

そんな俺には強い者と己の技術を競う事が、人生での楽しみだった。

俺はフリーの傭兵だ。幸いな事に、俺はこの世界では類まれな魔術の才能と身体能力があった。

不死身の体なんてルシフェルと全く一緒だ。


「…俺はやめときなって。だいたい何を根拠に信じりゃ良いんだよ」


後ろ頭をかきながら、ため息をついて俺はルシフェルの対応に戸惑っている。

その時、一瞬彼女の表情が曇ったのを見逃さなかった。


「そう、ですよね……ネオは目覚めたばかりですもんね!でも大丈夫ですよ、これからずっと一緒にいれば自然と思い出しますよっ」


いつも俺に向ける笑顔と違う。困り笑いだった。



○●○●○



「最近アイツを見ないねェ……」


俺は街中の酒場でパスタを食べながら、ふと呟く。

あの辛そうなルシフェルの顔を見て以来、会う機会がなかった。

普段のアイツが何をして、どんなとこで暮らしているかなんて考えたことがなかったのに。

少しだけ、気になっている自分に驚いた。


酒場は、現在夜の20時あたり。

大盛況で店内のウエイトレスはかなり大忙しだ。


「おい、知ってるか?」


「ん?何がだよ」


「新しい奴隷が入荷してきたんだけどよ、その奴隷がかなり“使える“かもしれないって噂なんだ」


「いつもみたいな、つるぺたじゃなくて?」


「……かなりの上玉ときた」


「おいおい、勿体ぶるなって!どんな見た目なんだよ」


「オレンジの髪で、紅い目をしてる。……神官みたいなローブ着てるからシスターみたいな清楚系だなあ」


――あ、聞きたくなくてもオッサンたちが、隣でデカイ声で話すから聞こえてきた。

確かに美女は良いが、下世話すぎて趣味じゃねー。

見た目の特徴から、ルシフェルを連想してしまった。

ああ、忘れよう。


「首に十字架の首輪してるけど、外したら飼い主に危険が及ぶらしい。なんでも、種族が悪魔の類だと」


……早くパスタを食べてしまおう。


「へー、珍しいな。もう売れたのか?」


「かなりの高値だ。オークション開いて、貴族が落札していったよ」


パスタを口に運ぶ手が止まってしまった。

あぁ、チクショウ!


「おじさん達、その話…俺に詳しく聞かせてくれるかい?」


あれから、俺はごろつき2人組にその貴族についての話を聞いた。

最初は怪訝な顔をされたが、金貨をチラつかせたら態度は一変だ。

……ルシフェルがワケの分からん奴隷商人に捕まるわけがない。

それは戦いぶりを見れば、俺には分かる。

それがどうして、何を俺は焦っているのやら。

毎日しつこく粘着されているのに、困っているのに、どうしてだ。


ひっかかっているのは……以前、あいつは教会や聖職者を避けている印象があったからだ。

その時の俺は何も気づいてなかったが。

十字架があいつは弱点で、本当に堕天使なのか?


そんな考えを巡らせても、答えは出ない。

貴族の城を魔術で半壊状態にしながら、俺は何を焦っているのだろう。



「ね、お……」


うわ言のように呟く、その少女は牢屋の中でぐったりと横たわっている。

首輪に十字架が添えられてる。

いつもは元気に俺の名を呼んでくる声は、少し掠れている。


「何捕まってやんの?お前さんらしくないな」


にや、と笑って軽口を叩く。その方がいつもの俺でいられると思った。

檻を炎魔術で、大きく変形させ、横たわるルシフェルを抱え起こす。

首輪の十字架を俺は握りしめると、拳の力で思い切り粉砕した。


「また、助けてくれた……」


「さぁね、俺は前の事なんて知らないねェ……って、おい」


虚だった目に光が戻ってきた。

俺は安堵したその時、ゆっくりと俺に腕を回して抱き締めてきた。

……暖かい。

何故か、とても懐かしい気持ちと小っ恥ずかしさが湧き上がってくる。

調子が狂う。ほんとに勘弁してくれよ。


「今は、気付かなくても良い。私の事、好きになってって言わない。だけど……あなたのこと、想い続けるのは良いですよね」


「…俺はとことん逃げるぜ。」 


「思い出すまで、あなたと一緒にいます……ずっと」


こいつは出会った当初から、犬っころみたいに俺に懐いてきた事を思い出す。

つれない俺に対して、めげずに好意を示してくるとこは一生懸命さがあって、可愛いと思うとこも正直ある。

ほんっとーにしつこいけど。


「だって、私はあなたの事を愛してますから」


甘ったるい声で、照れながら大胆な愛の告白。恥ずかしそうにしてるのに、しっかり目を見つめてくる。

あーーー、本当にこういうの無理だ。


面食らって、油断していると…ちゅっ、とリップ音が俺の頬で響いた。

こいつに聞こえるんではないかってくらい、心臓がバクバクと鳴っている。


「えへ」


「……今回はくれてやるが、次はないからなァア!小娘ェ」


俺はルシフェルを抱えて城を後にする。

慣れない刺激に俺は戸惑っているだけで、きっとこの気持ちは恋ではないと思う事にした。

だけど、お前さんに危険が及ぶなら俺はすっ飛んできてやるよ


それだけは、約束だ――。




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