私の能力
翌朝――。
窓の外から、これでもかというほどの朝日が差し込んでいた。
「おはようございます、サラ様」
「……おはよう、ジル」
まだ少し眠気が残る頭を振りつつ、私は体を起こした。
「今日のご予定はどうなさいますか?」
「うーん……この“神秘の森”を散歩がてら見て回りたいのと、あと“魔光石”っていうのも見てみたいかな」
「かしこまりました。ただ、サラ様が起きられても、皆まだ夢の中のようです。起こしましょうか」
ジルは軽く手を叩いた。パンッという音とともに、部屋のあちこちからもぞもぞと動物たちが起き出す。
「ふわぁ……おはよ~」
「眠いよぉ……」
眠たそうに目をこすりながら、動物たちは静かに部屋を出ていった。
「これで大丈夫です」
「今の、魔法?」
「はい。“目覚めの魔法”という簡易魔法です。あまり魔力は使っていませんが、魔力を持たない動物たちには効果てきめんですね」
「魔力があるかどうかで、魔法の効き方も違うんだ」
「ええ。魔力を持っている存在は魔法に対してある程度の耐性があります。逆に、魔力がないと魔法が素直に通ります」
「そっか……私も魔法、使えるのかな」
「もちろんです。サラ様は非常に強い魔力をお持ちです。“ステータス”という魔法を試してみませんか? 自分自身の能力が分かりますよ」
「うん、やってみる。“ステータス”!」
その瞬間、私の目の前に淡く光る長方形のウィンドウが現れた。
名前:森守 サラ
種族:人
性別:女 年齢:15 生年月日:2006年2月4日
職業:神秘の森の守護
【スキル】
・自然の恵み
・動物の恵み
・不老
・精霊眼
【称号】
・神秘の森の守護者
・容姿端麗
・妖精霊に愛されし者
・動物に愛されし者
・自然に愛されし者
「……すごい、まさに個人情報のかたまりだね」
「ご安心ください。ステータスは本人が『見せたい』と望まなければ、他人には見ることができません」
「それなら安心かな。……でも、“スキル”ってよく分からないや」
「スキルとは、その人に備わっている特殊能力のことです。才能で得るものもあれば、努力で習得できるものもあります。試しに気になるスキルを“長押し”してみてください。詳細が表示されます」
【自然の恵み】
風、火、水、土、光、闇、植物――自然のあらゆる属性を操れる。自然の声を聞くこともできる。
【動物の恵み】
すべての動物が味方になる。動物たちの第六感を通じて危機を察知し、彼らの声を理解できる。
【不老】
加齢による肉体の衰えを受けない。ただし、死ぬことがないわけではない。
【精霊眼】
通常は見えない精霊の姿を見ることができる。
「なるほど……。でも、こっちの“称号”は?」
「称号は、何らかの条件を満たすと自然に与えられるものです。中には能力に影響を及ぼすものもあります。スキルと同じく、詳細を表示できますよ」
【神秘の森の守護者】
神秘の森を守る存在に与えられる称号。森に関わる行動時、すべての能力が大幅に上昇する。
【容姿端麗】
あらゆる状況下でも容姿の美しさが維持される。魅力値が上昇する。
【妖精霊に愛されし者】
妖精霊の信頼を得た者に与えられる称号。妖精霊から力を借りる際、魔力消費が大幅に軽減され、妖精霊たちは称号保持者のためなら何でもする。
【動物に愛されし者】
動物たちの信頼を得た者に与えられる称号。動物たちは称号保持者の頼みを何でも聞く。
【自然に愛されし者】
自然の加護を受ける称号。風や木々、土、水などが意志を持ったかのように称号保持者を助ける。
「……ありがとう、ジル。よく分かったよ」
「いえ、私はただお伝えしただけです。それより、サラ様がご自身を理解されたことが何よりです。では、“魔光石”を見に行きましょう」
「うん、ジル」
「それでは、こちらへ」
ジルが寝室の一角にある本棚の一冊を軽く引くと、棚がゆっくりと動き、奥からエレベーターのような四角い空間が現れた。
「これは“上下移動式魔道具”と呼ばれる装置です。魔力を使って上下に移動します。……ただ、ここから先、私は同行できません。世界樹の中心は“守護者”のみが立ち入れる場所なのです」
「わかった。ちょっと行ってくるね。10分くらいで戻るよ」
「はい、お気をつけて」
私は“上下移動式魔道具”に乗り込んだ。中央には手を置くための突起がある。それに手を触れると、機械のような音声が響いた。
「守護者の搭乗を確認。その他の生命体、確認されず。システム起動」
扉が静かに閉じ、上へと動きだした