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子爵の13番目の娘です。なぜか王太子と恋に落ちた演技をして公爵令嬢の婚約者と婚約破棄させてほしいと王太子自らお願いをされてしまったのですが。

作者: あかり

「恋に落ちた演技ですか」


「頼む君が一番条件に合いそうだったんだ」


 私はユーレル子爵の13番目の娘アトラシア、私の名前の意味はそのまま13番という手を抜いたのがまるわかりでした。


 王太子殿下がなぜかお忍びで魔法学園の私が住む寮の部屋にやってきてお願いをしたことというのは。

 恋人のふりをして今の婚約者であるマリシア公爵令嬢と婚約破棄の口実にしたいということでした。


「私の爵位がマリシア様よりはずっと下でマリシア様とは正反対のタイプである。そして13番目という持参金すら出ない娘であるというのが条件とは」


「マリシアはきつい顔立ちの美人だ。だから正反対のタイプなら浮気をしたというのに言い訳としては最適だ」


 たしかに顔立ちはとてもきつめの美女でした。

 あとはこうぼんきゅっぼんっと……私はありませんからね。


 私はふうっとため息をつきました。でもそんなことをしたら我が家の評判は悪くなりませんか?


「ユーレル子爵には了解を得ている。13番目が一時とはいえ王太子の婚約者になれれば財政も潤うと」


「……あのバカおやじ!」


「……」


 私はバカおやじの実の娘なんですよ。それに跡取りの息子が生まれるまではと頑張って作ったのに13番目まですべて娘。

 母親がしかもすべて同じという。

 あきらめて妾でももてばいいのにお母様を愛しているからってふざけんな!


 持参金は8番目のお姉さままでしか出せないって言われたので、魔法学園に特待生として頑張って入って将来就職できるようにと思ったのに……。


「魔法学園在籍の特待生で君が一番身分が低くて、顔はかわいらしいんだ」


「はあ」


「それに性格もこう……」


「ひねくれてて王太子の心を奪うとかいう演技ができそうという」


「そうそう」


 どうも婚約者様は違う男性を想っているようでだから王太子のほうから婚約破棄してやればいいのだろうとかいう安易な考え。バカ王太子と思います。


「……いやその婚約者さんが違う男性が好きってそれって」


「僕を愛していないのは確実にわかる」


「……」


 護衛騎士のなんたらさんと相思相愛とかいいますけど私は当て馬とやらにされるのですか。

 女でも当て馬になるのですかね。


「かまいませんわ、ばかおや、いえお父様が承知されているのなら引き受けます」


「ありがたい!」


「まずは私と殿下の出会いから話し合いませんと」


「そうだな」


 私は殿下と出会いは中庭のベンチで転寝する私、それを起こす殿下そこから愛が始まったとしましょうと言います。


「それでいいのか」


「きっかけなんてそんなもんですわ」


 私はそこから私たちは語り合うようになり恋に落ちるまでは約一か月、婚約破棄宣言は12月の生誕祭にしましょうと言います。


 紙に書いて説明するうちに虚しくなってきました。私初恋もまだなのに。


 同級生である殿下のことはなんとも思ってませんでしたもの。だって持参金もないですしねえ。

 王太子なんて雲の上の上ですし。


「わかったありがとう」


「私をいじめたとかはなしで、殿下が一方的に婚約破棄するのだから殿下が悪いということで」


「それはわかっている」


 私はここから殿下と恋に落ちて円満に婚約破棄させる作戦をはじめることになったのです。




「……起き上がったときに君の頭が直撃するなんて」


「しかも顎に申し訳ありません……」


「いや大丈夫だから」


 中庭の転寝作戦でしたが私は起こそうとした殿下に頭を顎にヒットとやらをかましてしまいました。

 殿下は顎に私の頭があたってそのまま後ろに倒れて気を失い医務室に運ばれるはめに。


「これが恋のはじまりなんて……」


「これもありだろうし」


 私は殿下に慰められています。ああ殿下、顎が腫れてますわ。

 私は仕方ないとばかりに謝る私とドジな君がかわいいよということにしましょうと頷きました。

 しかし……作戦はあまりうまくいっておりません。




「手料理って……」


「男の手料理とお友達にもよく言われてましたが」


「いやこれはこれでおいしいよ」


 焼いただけの肉、切っただけの野菜。さすがにこれはないかと思いましたが。

 おいしいと食べてくれている殿下。中庭でお昼を食べていますがしかし周りの目が冷たい。


「ああ疲れる……」


「もう少しの我慢だよ。今は9月だから恋に落ちて1か月、あと3か月で……」


「わかりました」


 事務連絡をすませて私たちは別れます。


 周りからは婚約者がいる王太子に言い寄る女狐と言われもう私の神経が参っていました。

 これ精神が相当図太い人じゃないとつとまりませんわ。

 私一応精神は強いほうですがつらいです。




「あなたみたいな身分が低い方がどうして王太子殿下といつもいらっしゃるのかしら、殿下には立派な婚約者の……」


「私と殿下はただのお友達ですわ」


 公爵令嬢のおとり巻きたちに囲まれ今日も嫌味を言われています。

 まあ慣れてますけどお姉さまたちとの口喧嘩や食べ物やおやつに取り合い……。ああ女だらけの姉妹の闇がここで生かされるなんて。


「お友達って!」


「お友達はお友達ですわ。魔法の研究のお話などもありますし」


 特待生である私は学年から上位の成績です。うっとおとり巻きたちは黙りました。

 しかしねえ女って三人よれば悪口ですか、お姉さまたちもそうでしたけど。


「ではごきげんよう」


 私は胃がキリキリするのを感じていました。だってねえお姉さまたちとは血がつながっていますからまだ手加減はありますが彼女たちはないのですよ。





「……胃薬」


「大丈夫かい?」


「あと1週間ですから……」


 ああもう胃が痛い、私は胃薬を飲みながらもう少しで解放されると言い聞かせます。

 公爵令嬢は何も言ってきません。でもねえ護衛騎士との関係を見ている限り恋愛関係といわれても微妙だなと思い始めていました。


「殿下、二人は本当に愛し合っているのですね?」


「間違いない!」


 信用ならない。私はひそかに護衛騎士と手紙をやり取りして驚愕の事実がわかったのです。

 いやもうどうしましょうって感じです。だって1週間ですわよあと。しかも私と殿下は恋愛関係にあると皆もう思い込んでますわ。でもマリシア様を見ているとどうも殿下のことを愛してないと思えないのです。あの殿下に向ける微笑み、眼差し。しかも殿下はかなり鈍い。


「……これしかない」


 私は殿下に黙って作戦を変更することにしたのです。





「マリシア・ルーベル。私は……」


「お誕生日おめでとうございますマリシア様! 私と殿下の共同研究が完成しましたので一足早くご成婚のお祝いをしたいと思います!」


「はあ?」


 私は殿下の口上を途中で遮り魔法の用意をと合図しました。

 野外パーティーが行われており夜空に光が合図とともに舞い上がります。文字が光となり浮かびます。


「お誕生日おめでとうございますマリシア様ってあらあらまあまあ」


「マリシア様、私と殿下は魔法の共同研究でこれをずっと話し合ってまいりました。だから私たちは恋愛関係などという根も葉もない噂は噂ですわ。私たちはお友達です。そしてこのためにマリシア様に内緒にしようというサプライズを!」


「ありがとうございますアトラシアさん」


 私は殿下に目配せしました。だってあの護衛騎士さん恋人さんがいてそれがマリシア様の侍女さんだったのです。だから侍女さんとの手紙のやり取りをマリシア様は手伝っていただけだったのですわ。

 ああもうなんて間抜けな。


「殿下とマリシア様、これからご成婚ですね。おめでとうございます!」


「おめでとうございます!」


 なんとかごまかせた。マリシア様のお誕生日が生誕祭だったのが幸いしました。

共同研究はたしかにこれでして。助かりました。


 うう……胃が痛い。


 マリシア様は殿下のことを愛しており、って侍女さんから聞きまして。殿下もマリシア様のことを愛しているからこんな茶番を考え。

 すれ違いって恐ろしい。


 かくてなんとかハッピーエンド。

 私は胃が痛いのもなんとかなおって魔法の教師となるべく今日も勉強をしています。

 しかしなにやら教育実習でまたまたお騒がせの出来事がありまた相変わらず胃が痛い日々ですわ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 何度読んでもマリシアが笑える…… はっ!?主人公体質……??
[良い点] かくしてアトラシアはバカ殿下のやらかしを間一髪で塞ぎ、 マリシア様始め王妃殿下・宰相といった方々に「殿下がやらかした時のフォロー役」として目を付けられるのでした となってたら悲惨ですな …
[一言]  アトラシアさん苦労人!  なんかそういう星の下にうまれてそう………  平穏な日々が訪れるようお祈りします。
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