8 剣を鑑定してもらう
マルチナに案内され、俺たちは武器庫のような場所にやって来た。
周囲には何本もの剣や槍、あるいは盾や鎧が並んでいる。
「なんだ、おめえらは」
部屋の隅にいて剣を見つめていた人物が振り返る。
五十代くらいだろうか、壮年の男だ。
「今仕事中なんだがな」
男が俺たちをにらみつけた。
不機嫌そうな感じだ。
どことなく怒っているようでもある。
「宮廷付きの鑑定術師アルベルトさんよ」
と、マルチナ。
「武器や防具、アイテムなんかの能力や効果、あとは本物か偽物か、とか色々と調べるお仕事なの」
「もしかして……ここにあるもの全部を?」
「当然だ。ウラリス国中から集められたモンを俺一人で鑑定するんだからな」
と、アルベルトさん。
「おめえらと会話してる時間も惜しいんだ。用がないならさっさと帰んな」
「実は、あなたに見てもらいたいものがあって来ました」
俺は彼の前に進み出た。
腰に下げていた鞘入りの剣を差し出す。
「ほう」
アルベルトさんの眉がぴくりと動いた。
興味を抱いたようだ。
「『燐光竜帝剣』――か?」
「はい」
「こんなもん、鑑定するまでもねえ。間違いなく伝説級の剣だよ。本物だ」
と、アルベルトさん。
「さ、用事は済んだか? なら帰んな」
「もう。こっちの話も聞いてよ、アルベルトさん」
マルチナが苦笑した。
「もっと剣を見たいって顔してるじゃない。不機嫌そうに見せて、本当はご機嫌なんでしょ。あたし、分かっちゃった」
と、いつものドヤ顔をする。
「うるせえ、小娘」
「ふふふ、図星だ」
ムッとしたようなアルベルトさんにも、マルチナは微笑んだまま。
「まったく……」
対するアルベルトさんはちょっとだけ照れているようだった。
「と、とにかく、もう一度剣を見せろ。今度は『鑑定』してやる」
――というわけで、アルベルトさんに剣を見てもらった。
『鑑定』はその名の通り、対象の能力や属性などを見る力である。
ひとくくりに『鑑定』といっても、術者によって『何が対象か』や『何が見えるか』は異なる。
アルベルトさんの場合は武器や防具、アイテムといった『無機物』に特化したスキルだそうだ。
だから人間のスキルやステータスなどを見ることはできない。
その代わり、武器や防具などの詳細な情報を得る力はズバ抜けているらしい。
「こいつは――!」
鞘から抜いた『燐光竜帝剣』を見て、アルベルトさんがカッと目を見開いた。
「確かに『蒼天牙』と同レベルの剣……だが、何か違う……!? こいつは――信じられねえほど強化されてやがる……なんだよ、こいつは……!」
「俺は付与魔術師なので、その剣に強化ポイントを注ぎこんだんです」
説明する俺。
「き、強化ったって、ちょっとやそっとのレベルじゃねえぞ」
アルベルトさんは声を震わせた。
「伝説級も飛び越えて、神造武器レベル――いや、もしかしたらそれ以上……!? こんな剣、お目にかかったことがねえ……!」







