7 護身用アイテム
「どう見ても、剣や格闘の素人じゃねえか! 舐めるな!」
マイゼルが俺に殴りかかる。
確かに、俺は素人だ。
彼の攻撃に反応がついていかない。
「けど──反応する必要もないんだよな」
がつんっ。
頬を殴られたけど、まったくのノーダメージ。
痛くもなんともない。
「ぐあっ……」
逆に全力で殴りかかったマイゼルの方が拳を痛そうにして後退した。
「な、なんだ、てめぇの体は……か、硬い……」
「加護アイテムを身に付けてるんだ。うかつに殴らないほうがいい」
俺はマイゼルに忠告した。
「ば、化け物がぁっ!」
逆上したらしいマイゼルが剣を抜く。
「俺を舐めるとどうなるか、思い知らせてやるからなぁっ!」
大きく振りかぶった。
さすがに、本当に斬るつもりはないだろう。
たぶん、脅しだ。
「それ以上暴れるな」
俺は懐から小さな杖を取り出した。
「痺れてろ」
キーワードとして設定した呪言をつぶやく。
「うあっ……」
マイゼルは小さな悲鳴を上げて、その場にへたり込んだ。
『麻痺の短杖』。
その名の通り、相手にしばらくの間、麻痺の効果を与える杖だ。
ただし、俺の付与魔術で+100の強化をしてあった。
……さすがに+1000とか+10000とか、あまりにも強化すると麻痺といっても、相手にとんでもないダメージを与えるかもしれない。
あくまでも最低限の護身用として調整した数値である。
「簡単に相手を無力化した……便利」
ミラベルが感心したように俺の杖を見ている。
「相手を傷つけずに制圧できるからな」
「私も欲しい」
「……悪用しないだろうな」
俺はジト目でミラベルを見た。
「……私も欲しい」
「今、目を逸らした!」
そういえば──。
ふと、思う。
俺の付与魔術は『光竜の遺跡』で新たな領域を得た。
アナウンスの内容からすると、この先もっと成長していくみたいだ。
今は無機物にしか──武器や防具、アイテムにしか付与できないポイントも、いずれはそれ以外のものに付与できるようになったりするんだろうか。
マイゼルは逃げるように去っていった。
それから二時間ほどここで時間を潰していると、リリィが戻ってきたという報告を受けた。
さっそく会いに行く。
「レイン様! お久しぶりです」
俺たちを見て、リリィが駆け寄ってきた。
一緒にいるのは黒髪をツインテールにした女剣士。
リリィの後輩、マーガレットだ。
以前にA級昇格クエストで一緒になった少女である。
「よう、俺もこの間のクエストでA級になったからな。あんたと対等だ」
マーガレットがふんと鼻を鳴らした。
俺と一緒のクエストでは、彼女は不合格になっていた。
けど、その次のクエストで合格した、ってことだろうか。
「そうか、おめでとう」
俺はにっこりとして言った。
「っ……! そ、そんなストレートに祝うなよ! 照れるだろ!」
なぜかマーガレットはちょっと怒っていた。







