11 今さら戻ってくれと言われても、もう遅い
「戻る? 俺が『王獣の牙』に今さら?」
俺は冷ややかな気持ちで彼ら三人を見据えた。
「ああ、ギルドは今かなりまずい状況なんだ。お前の付与魔術があれば、立て直せる!」
コーネリアスさんが続く。
「報酬なら以前の倍は用意しよう。結果次第では三倍でも──」
と、ゲイルさん。
「お断りします」
俺は首を左右に振った。
「やっぱり、あたしたちを恨んでいるの……?」
グレンダさんが俺を見つめる。
「俺は今、最高のギルドで働いています。他のギルドに移るつもりはない──それだけです」
「はあ? 最高のギルド?」
「こんなギルド、弱小もいいところだろう。我ら『王獣の牙』は大陸最強の一角だぞ」
コーネリアスさんとゲイルさんが言い募る。
「俺のことはどう言ってもらっても構いませんが、『青の水晶』のことを悪く言うのは許しませんよ」
俺は三人をにらんだ。
「ううっ……」
気圧されたように息を呑む三人。
「あ、あたしは別に……気を悪くしたならごめんなさい……」
「わ、悪かった、馬鹿にするつもりはないんだ……」
「儂も弱小といったのは取り消そう。申し訳ない……」
三人は以前の態度が嘘のように、俺に頭を下げた。
やけに気弱だな。
いや、それだけ苦境に立たされているということかもしれない。
彼らが俺に語った以上に『王獣の牙』はまずい状況にあるのかもしれないな。
「暗殺者に関する情報には感謝します。だけど『王獣の牙』に戻るつもりはありません」
俺はぴしゃりと言い切った。
「そちらのギルドが危機だというなら、そちらの力で立て直してください。用済みだと追放した俺の力ではなく、まだギルドに残っている者たちの力を結集して、危機に対処する──それが筋でしょう」
「ぐっ、それは……」
三人が言葉を詰まらせる。
以前とは完全に立場が逆転していた。
そこに爽快感はない。
優越感もない。
ただ──これで本当の決別だと思った。
俺はもう『王獣の牙』の冒険者じゃないし、これからも『王獣の牙』に戻ることはない──。







