7 俺とみんなの強化
その日も、俺は討伐クエストに挑んでいた。
「モンスターはどこだ……?」
懐から懐中時計くらいの大きさの魔獣探知機を取り出す。
その名の通り、モンスターの位置を測定する魔法道具だ。
ただし、こいつには俺の強化ポイントを『+5000』ほど注いである。
おかげで通常のレーダーとは桁違いの探知性能を備えていた。
「──前方にいるな。竜魔法で空間迷彩をかけてるのか」
空間を変質させ、通常探知をすべて無効化するハイレベルの隠密魔法。
だけど、俺の強化レーダーの前にはその位置は筒抜けである。
「とりあえず、あぶりだそう」
俺は投石機を使い、石を放った。
当然こいつも強化済み。
音速を超えて飛ぶ石が、空間の向こうにいるモンスターを直撃する。
があっ!?
驚きと怒りの声とともに、空間が揺らいだ。
その向こうから現れる巨大な赤い竜。
「こいつがフレイムマスタードラゴンか」
炎を統べる竜と呼ばれ、七種の火炎のブレスを操るA級モンスターだ。
そして今回の討伐クエストの対象──。
「いくぞ、『燐光竜帝剣』」
俺は剣に声をかけた。
こいつには『+10000』の強化ポイントを注いである。
俺がマックスで注げる強化ポイント量は+30000だが、そこまで注ぐと、いくら伝説級の武器といえども耐えられるかどうかわからない。
とりあえず+10000で様子見をしているところだった。
まあ、+10000でも今のところすべてのモンスターを瞬殺しているから問題ない。
ごうっ!
俺が振り下ろした『燐光竜帝剣』がフレイムマスタードラゴンを両断した。
火炎のブレスも一緒に両断されている。
「よし、快調だな」
伝説の剣だけあって、+10000の強化ポイントを注いでも刃こぼれ一つしない。
そしてA級モンスターを倒しただけあって、大量の強化ポイントが手に入った。
分量は+3000だ。
俺はギルドに戻った。
「今日もみんなの武器に強化ポイントを込めます」
「いつもありがとうございます、レインさん」
「レインさんに武器を強くしてもらえるのが心強いです」
「他のみんなも前よりもずっとクエストがやりやすくなった、って言ってますよ」
『青の水晶』所属の冒険者たちが礼を言う。
こんなふうに感謝してもらえると、俺としてもやりがいがある。
以前のギルドじゃ『やってもらって当然』って態度だったからな……。
「あ、次で1500を使い果たしますね。今日はここまでです」
5人の武器や防具に強化ポイントを込めたところで打ち止めになった。
みんなも遠慮していて、いつの間にか、手に入れた強化ポイントの半分を俺に、残りの半分をみんなの武器に込めていく、というルールになっているのだ。
だから今日はフレイムマスタードラゴンから手に入れた+3000の強化ポイントの半分──+1500をギルドのみんなに使うことになる。
また、この作業にはギルドから報酬が出る。
以前のギルドではただ働きだったからありがたいし、嬉しい。







