40 【探査】のメリーアン1
「止まっ……た……!?」
ヴィクターは呆然と目の前の光景を見つめていた。
黒いモヤはその動きを停止している。
まるで彫像のように固まっていた。
【停止】という能力のすさまじさを、あらためて思い知らされた気分だった。
ただし――、
「ジグ!」
リサが悲痛な声を上げて駆け寄ってきた。
「う……ぐ……」
ジグは力なく、その場に崩れ落ちていた。
顔が真っ青で、手足は土気色になっている。
いや――土の色、そのものだ。
「ジグ……君は……」
先ほどまで生気に満ちていたその手足は――今は『作り物』のように見える。
まるで人形の手足のような――。
「どうして」
リサがジグの側にしゃがみこむ。
「こんな……」
土の色になった手や足をさすり、うめいた。
「あのときと……同じ……君を、守りたかっ……た……」
ジグは力なく手を伸ばした。
リサがその手を取る。
「……メリーアン」
ヴィクターは彼女を見て、うめいた。
「あなたは未来を見ることができるんだろう。このジグくんを助ける方法は見いだせないのか?」
「だって、ポイント消費が激しいし」
メリーアンがニヤリと笑う。
「10回くらいでポイントをそこまで消費するものなのか?」
ヴィクターが表情を険しくする。
彼女の表情にわずかな違和感があった。
何かを隠している――。
あるいは、企んでいる。
そんな不気味な気配を。
「ふーん、意外と鋭いところを突いてくるじゃない」
メリーアンが笑う。
「ポイント消費は『天の遺産』によって消耗の度合いが違うのよ。あたしの力は『未来を見る』ことも可能な強力なスキル……その分、ポイント消費が激しいと考えて」
「では、ジグの未来を見ることはできない、と?」
「できなくはないよ。ただ、余分なポイント消費は避けたい」
と、メリーアンが肩をすくめた。
「あなたたちとは一時的に共闘しても、最後にはライバルになるのよ? 時には見捨てる判断をすることもある――」
「お前っ……!」
リサがメリーアンを燃えるような目でにらみつけた。
「そのリアクションは何? あたし、変なこと言った?」
メリーアンがキョトンとした顔になる。
「ジグを助けられる未来の道筋を探せ……!」
リサが立ち上がった。
メリーアンに向けた右手に、黒い光弾が出現した。
「断れば撃つ」
「ちょっとちょっとちょっとちょっと~。あなたにとってもジグはライバルでしょ? ここで脱落でも、まあ問題ないかな、って感じじゃない?」
どんっ!
メリーアンの足元が大きくえぐれた。
リサが放った【魔弾】によって。
「もう一度言うぞ。ジグを助けられる未来の道筋を探せ」
じじじ……。
空気が焼けるような匂いとともに、ふたたびリサの手に【魔弾】が出現する。
今度は紫色だ。
「次は当てる」
「ふうん?」
メリーアンの瞳に剣呑な光が宿った。
「本気なんだ?」
「何度も言わせるな」
リサの表情は険しい。
「あんまり手の内見せたくないんだけどなぁ……」
と、ため息をつくメリーアン。
「……何を余裕ぶっているの? あたしの能力は純粋な戦闘タイプ。あんたは違うでしょ」
リサの周囲に無数の小さな光球が浮かんだ。
その数がどんどん増えていく。
「千の【魔弾】の一斉発射――これを凌げる?」
気が付けば、おびただしい数の光弾がメリーアンを囲んでいた。
巻き添えを避けるため、ヴィクターはローザを伴い、後方に下がる。
「ま、確かにあたしの力はどちらかというと戦闘向きじゃないかもね」
メリーアンは光弾の群れに囲まれながら平然とした表情だ。
「だけどね、能力なんて使いようなのよ。あたしの【探査】こそが最強だと、あたし自身は考えてる」
「だったら、その最強ぶりを見せてみたら?」
きゅどどどどどどどどどどっ!
リサの千の【魔弾】が同時に放たれた。
全方位からメリーアンに襲い掛かる。
逃れる場所などない。
逃れられるタイミングでもない。
「既定のポイントを消費し【探査】第三術式を発動――」
呪文を詠唱するようなメリーアンのつぶやきとともに、その瞳が妖しく輝いた。
どくんっ!
ヴィクターは心臓の鼓動が異様に早まるのを感じた。
「なんだ……!?」
今、何か異常なことが起きた。
そんな予感がする。
「がっ……!?」
次の瞬間、千の【魔弾】は突然方向を変え――そのすべてがリサに向かっていく。
「ううっ、ぐっ……」
とっさに【魔弾】を新たに生み出し、迎撃したようだが、衝撃波や爆風までは消し去れない。
リサは大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「がはっ……ぁぁ……」
「あーあ……これ、使いたくなかったんだよね」
メリーアンはその場に平然と立っている。
「手の内、見せちゃった」
と、ヴィクターをにらむ。
「今のは……一体」
ヴィクターはゴクリと喉を鳴らした。
同時に、悟っていた。
立ちはだかるのは『天星兵団』だけではない。
保持者同士の戦い――これから先に待ち受ける運命を思い、戦慄が駆け抜けていた。
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