35 VS赤の魔導師ヴェルテミス
SIDE ヴィクター
ヴィクターとローザが『天の遺産』を持つ者たち――三人の『保持者』と戦っている最中、それは出現した。
「汝らが『星の心臓』の最終階層に至る資格を持つ者ならば、我を――この【赤の魔導師】ヴェルテミスを打ち倒してみせよ」
長く伸ばした髪も、瞳も、ワンピースに似た服も、手にした杖も……すべてが赤に彩られた美しい少女。
「先へ進む方法は、それ一つだ」
彼女――ヴェルテミスが厳かに告げる。
「あれが『天星兵団』か……!」
敵の保持者の一人、リサがうめく。
「ゴルドレッドが言っていた番人……」
番人――つまりは、この【星の心臓】を守る存在、ということか。
ヴィクターはあらためてヴェルテミスを見つめる。
異常なまでの圧倒的な威圧感。
以前に対峙した光竜王と同等か、それ以上の圧だった。
体が、自然と震え出す。
――こんな超存在を相手に、私は立ち向かえるのか?
と、
「ほう、『翠風の爪』か」
ヴェルテミスがヴィクターの剣を見て、言った。
「……知っているのか?」
「当然であろう。その剣は我らと同じく星が生み出したもの」
と、ヴェルテミス。
「なるほど、剣と星を共鳴させ、ここの場所を割り出したか」
「星が生み出した……か」
ヴィクターがつぶやく。
それはつまり――ヴェルテミスと同質の力を、この剣が備えているということではないだろうか。
ならば、戦えるかもしれない。
確かに、目の前の敵は圧倒的な存在に思える。
だが、その存在と同じ力が『翠風の爪』に宿っているならば――。
「戦う術は、きっとある」
ヴィクターは己を鼓舞した。
そう、戦うのだ。
戦って、道を切り開く。
そして生き延びる。
自らの生を謳歌するために。
これからも、謳歌し続けるために。
「そのための道は――彼女を倒すことでしか、切り開けない……!」
ヴィクターは己の中に闘志が湧き上がっていくのを感じていた。
「我は番人。そして同時に審判者でもある」
ヴェルテミスがあらためて宣言し、ヴィクターたち全員を見回した。
「保持者が四人もそろっているとは。今回はなかなか有望か……? 前回は誰一人として最深部までたどり着けなかったが」
遠い目をしてつぶやく。
「今回こそは誰かが――そう、お前たちが『星の心臓』の最深部まで行く資格があるのかどうか……我が見極めよう」
「じゃあ、判定してもらうぞ」
リサが右手を突き出した。
「あたしの――この【魔弾】で!」
いきなり数十発の光弾を連射する。
「それなりに『天の遺産』を使いこなしているようだが……まだ甘い」
ごうっ!
ヴェルテミスも同じく数十発の光弾を生み出し、リサの光弾を残らず撃ち落とし、威力を相殺した。
「――【魔弾】を迎撃できるのか」
険しい表情になるリサ。
どうやら敵も『天の遺産』の力を備えているようだ。
「【魔弾】使いというわけか……」
ヴィクターは警戒を強めた。
「なら、僕が奴の能力を『止め』てやる」
ジグが前に出た。
「――リサ」
「分かった。『貫け』――【貫通弾】!」
リサの手から光球が放たれる。
「学習しない奴よ――【貫通弾】」
ヴェルテミスも同じ光球を放った。
またもや相殺される流れ――とはならず、
「『止まれ』」
ジグが両手を突き出し、静かに告げた。
途端にヴェルテミスの光球から輝きが失われていく。
「お前の【魔弾】の効力や威力を『止め』た。これで――」
「『止まれ』」
と、今度はヴェルテミスが言った。
同時に光球の輝きが復活する。
「何……!?」
「お前の【停止】の効力を『止め』た」
ヴェルテミスが平然と告げた。
二つの光球は中央でぶつかり合い、互いに消滅する。
「今のは――」
「お前に【停止】があるなら、我にもある。お前が【停止】させたその効果を我が【停止】した」
つまりは――【停止】を相殺することで実質的に無効化した、ということか。
ヴィクターはゴクリと息を呑む。
「複数の遺産を同時に使える我にとって、お前たちの遺産は有効打にはならん」
ヴェルテミスが言った。
「だが、だからこそ――我を越えてみせよ、人間たち。この我を倒せぬようでは最深部までは到底たどり着けぬ。よしんばたどり着けたとしても……奴を倒し、星を救うことなどできぬ」
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