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24 VS紫の猛将ラゼルセイド


「ぐぬぬぬぬ……!」



 ヅィレドゥルゾが踏ん張る。


 それでも段々と押し込まれていく。


 とはいえ、ある程度拮抗するだけでも十分にすさまじい魔力だ。


 バーナードの全力の攻撃は一瞬で吹き散らされたのだから――。


「がんばれ、づぃりりん」

「み、妙な名前で呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 絶叫と共にヅィレドゥルゾの全身から魔力のオーラが吹き上がった。


 ずずずずずっ!


 赤い魔力の波が紫の水流を押し返していく。

 そして、




 ボウッ……!




 赤と紫の輝きは絡み合い、もつれあいながら、明後日の方向に飛んでいき、そこで爆裂した。


「はあ、はあ、はあ……」

「ほう? 我が一撃をいなすとは」


 ラゼルセイドがかすかに笑った。


「かなり高位の魔族のようだ。魔王か、それに準ずるほどの力はありそうだな」

「当然だ。この俺は次期魔王になる男だぞ」


 ヅィレドゥルゾがほくそ笑む。

 と、


「すごい……!」


 ラスがヅィレドゥルゾを見て、目を輝かせた。


「お前、すごいな! さすが高位魔族だ!」

「ふん、もっと褒めたたえていいぞ」

「得体が知れない敵だけど、お前がいれば勝てそうだな、ヅィレドゥルゾ」

「えっ?」

「頼むぞ、ヅィレドゥルゾ」

「おお……! ちゃんと我が名を呼んでくれた!」


 顔を輝かせるヅィレドゥルゾ。


 その目が潤んでいた。


「俺は今、すごく非常にとても猛烈に感動している……!」

「ん? そんなことでいいの?」


 ラスがキョトンとして、


「俺はちゃんと名前で呼ぶよ。ヅィレドゥルゾ」

「うおおおおおおおおっ!」


 叫ぶ高位魔族。


「も、もう一回! もう一回お願いします!}

「い、いいけど……」


 ラスはさすがに少し引き気味のようだった。


「えーっと……ヅィレドゥルゾ」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 魔族はさらにテンションが上がったようだ。


「よし、気分が盛り上がったところで、あいつを倒してきてくれ」

「えっ、俺が!?」

「いや、だってお前しかいないだろ」


 冷静にツッコむラス。


「い、いや、こいつと戦うのはちょっと……」

「急に弱気になった」


 今度はミラベルがツッコんだ。


「ヘタれずごーごー」

「そうだ、お前ならやれる」


 と、バーナードも鼓舞した。


 実際、戦闘能力という点では高位魔族のヅィレドゥルゾは非常に大きな戦力だ。


 ここで弱気になってもらっては困る。


「アホか! 【天星兵団(アークレギオン)】といったらアレだぞ! 魔界の伝説にある最強種族だぞ! 神や魔王に匹敵……あるいは凌駕するほどの超存在だ! 勝てるわけがないだろ!」


 ヅィレドゥルゾがまくしたてる。


「現状、お前の力が一番通用しているのは事実だろう」


 バーナードが諭した。


「もちろん、お前一人で戦えと言っているわけじゃない。微力ながら、俺も戦うさ」

「……お前の力が通用すると思うのか」


 ヅィレドゥルゾがバーナードをにらむ。


「しないな」


 あっさりと認めた。


 実際、バーナードの実力では、どうあがいてもラゼルセイドには勝てないし、ダメージらしいダメージすら与えられないだろう。


「だからサポートに徹する。攻撃役はあくまでもお前だ」

「サポート役……」

「お前はまだ奴に攻撃を直撃させていない。まず、そこから目指そう」

「直撃か……」


 ヅィレドゥルゾが考えこむ。


 先ほどまでの怯えた様子が薄れているようだった。


 相手が自分より強い、何をやっても敵わない……と思っている間は、前向きな気持ちにはなれない。


 だから、まず実現可能な目標を提示したのだ。


 たとえ、一撃で勝てなくても、まず一撃を当てることを目指す。


 そして、その延長上に――きっと勝利が見えてくる。


「先ほどは見事だったが、我を前にひるんでいるようでは――そこまでか」


 ラゼルセイドが銛をかかげた。


「それとも増援が来るまでの時間稼ぎか? 我の【探査】の前にはお前たちの動きなど筒抜けだ。我の元に向かっている者が一人……ふむ」


 周辺を見回しながら、半ば独り言のようにつぶやくラゼルセイド。


「【付与】と【変化】はファルニケの元に――いや、どうやら倒されたようだな。【幻惑】【魔弾】【停止】【探査】はヴェルテミスのところか。あとは【破壊】と【転移】が第一階層内をさ迷っているようだ。第一階層の周辺警備を行っている戦騎兵もかなりの数が倒されている……ふん、今回は有望らしいな」


 掲げた銛の先端に紫の光が収束していく。


「とはいえ、お前たち自身にはさしたる力もあるまい。さあ、二撃目だ。今度はどう防ぐ――?」

「くっ……」


 さすがに、こちらの作戦がまとまるまで待ってくれるほど、敵は優しくはないようだ。


「どうする――?」


 バーナードは杖を構えた。


 それでも、ここで体を張れるのは俺だけだ。


 ミラベルやラスは魔法を使えない。


 激流に対抗する手段はない。


 あとはヅィレドゥルゾが攻撃するために、敵の隙をどうにかして作りたいが――。


「次は【破壊】を宿した一撃だ――さあ、どう防ぐ? お前たちの力を見せてみろ」


 しゅううう……んっ!


 突き出した銛全体に無数の黒い粒子が収束していく。


「星を救うだけの力がある、と我を納得させてみろ!」


 ラゼルセイドは黒く輝く銛を手に近づいてきた。


 とにかく――なんとかして足止めだけでもしなければならない。


「【ブレイジングアロー】!」


 バーナードは無数の炎の矢を放った。


 これが決定打になるほどの強力な魔法ではない。


 そもそも、そこまで強力な魔法を彼は習得していない。


 習得する才能などない。


 だからこれは、あくまでも目くらましだ。


 ヅィレドゥルゾが攻撃するための隙をわずかでも生み出せれば、それでいい――。


「くだらぬ」


 ばしゅっ!


 ラゼルセイドが銛を一振りすると、バーナードが放った数十の炎の矢は一瞬で消え失せた。


 足止めにすらならない。


 敵にとってバーナードの魔法など、顔にたかる羽虫程度のものなのだろう。


「単なる牽制か? それにしても力が足りなさすぎる。牽制とはいえ、せめてこれくらいは――」


 ごうっ!


 銛の先から激流がほとばしった。


「くっ――」


 敵にとっては牽制でも、バーナードからしたら致命的な範囲攻撃である。


 しかも先ほど攻撃を放った直後で、すぐに防御魔法を使えるほどバーナードの魔力は回復していない。


「まずい……っ!」


 激流がうねり、押し寄せる――。




「【天爪黒雷斬(てんそうこくらいざん)】」




 ざしゅっ……!


 横合いから黒い光が駆け抜けた瞬間、激流が二つに裂け、バーナードたちを避けて流れていく。


「なんだ……!?」

「水を……激流を斬った、だと!?」


 さすがのラゼルセイドも驚きの声を上げた。


 キラキラと黒い輝きの残滓が雪のように舞い散る。


 その向こうから、かつ、かつ、という足音が近づいてきた。


 そして現れたのは――一人の女剣士だった。

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