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19 決別と再会のときへ

 シン、と周囲が静まり返っている。


「本当なら全身を【石化】させるはずだったが――」


 不気味な静寂の中、ゴルドレッドが口を開いた。


「君の回避の方が一瞬速かったな。右足を捉えることしかできなかった」

「さっきの人情話は俺を油断させるための芝居か……!?」

「いいや、本音だったよ」


 俺がにらみつけると、ゴルドレッドは芝居がかった仕草で肩をすくめた。


 悲しげな――これまた芝居がかった表情で俺を見つめる。


「君には個人的に好感を抱いている。だからこそ、ここで始末しなければいけないことが悲しい」

「協力して【最終階層】まで行くんじゃなかったのか?」

「そこは状況次第で変わる。最後まで協力するか、途中で君を切り捨てるか――そのときどきの俺の判断によってな」


 ゴルドレッドが傲然と腕組みをした。


「君はさっき黒の魔王の魔剣を目撃したことで『第三術式』の威力が上がっている。これだけのポイントを得た以上、君はその術式を何十発も撃てるだろう? いくら俺でも、凌ぎきれないかもしれない。だからこそ――ここで始末することにした」

「この……っ……!」


 俺は右足に力を込めた。


 だけど右足の石化はすねから膝、そして太ももへと少しずつ進んでいく。


【付与】では【変化】に干渉できない……!


 とはいえ、俺が幾重にも『強化付与』した防御アイテムを装備しているおかげか、石化の進行はゆっくりだった。


 まだ――戦える!


「石化を解けよ、ゴルドレッド」

「解かなければ?」

「こいつを叩きつける――」


 ごおおおおおおっ……!


 俺の背後に無数の剣や槍、斧などの武器が浮かび上がった。


 そのうちの一部は黒い魔剣群――そう、前の戦いで『黒の魔王』グランディリスの攻撃を見たことで使えるようになった武器群だ。


「第三術式か」

「大量のポイントが手に入ったから遠慮なく撃てるぞ」


 俺はゴルドレッドをにらんだ。


「魔剣を防ぐのは少々厄介だな。それに本数が多すぎる」


 ゴルドレッドはため息をついた。


「……黒の魔王は本当に余計なことをしてくれた」

「もう一度言うぞ。石化を解け」


 俺はゴルドレッドに告げた。


「解かなければ撃つ」

「ふん。ハッタリだな」


 ゴルドレッドが冷笑する。


「君はモンスターを倒すことはできても、人間を攻撃することはできないだろう? 過去の戦いぶりをディータやシリルから聞いているぞ」

「っ……!」


 俺は唇を噛んだ。


「それでも」


 拳を握り締める。


 決意を、固める。


「やらなきゃ、やられる――!」


 ばしゅんっ!


 背後の魔剣を数本、射出する。


 今までみたいな『一斉射出』ではなく『一部の射出』だ。


 半ばダメ元だったけど、上手くいったようだ。


「器用だな、君は――閃鳳王、輝獣王」


 ゴルドレッドは二体の魔物に呼びかけた。


「【フェニックスブレイズ】」

「【ギガンティックキャノン】」


 閃鳳王の両翼から放たれた火炎と、輝獣王が吐き出した光のブレスが、俺の放った魔剣を撃墜する。


 光竜王と同等の力を持つ魔物二体――さすがに簡単には突破できないか。


「だけど!」


 俺の背後に、さらに無数の武器が浮かび上がる。


「っ……!?」

「今度は第三術式の『一斉射出』だ」


 大量のポイントのおかげで、今までなら使用タイミングが難しかった第三術式を思い切って撃てるようになった。


 そして、さらに――今まで試したことはなかったけど、


「第三術式を同時に二つ使う。耐えられるか、こいつに?」

「戦う覚悟は決まった、というわけか」


 ゴルドレッドの表情が険しくなった。


「だが、忘れていないか? 君と同じく、俺もまた大量のポイントを得たということを」


 懐から何かを取り出す。


 木彫りの、竜。


 奴の第三術式用の形代か。


「――! まさか」


 そこで俺はハッと気づいた。


 奴が【変化】で生み出そうとしているものの正体を。


「君には因縁浅からぬ相手だろう。さあ、現れ出でよ――」


 ゴルドレッドは木彫りの竜を掲げ、謳うように告げる。


「光竜王ディグ・ファ・ローゼ!」




 ――そして、三体の星の獣がゴルドレッドの前に並び立つ――。




 黄金の輝きをまとった巨大な竜。

 漆黒に彩られた巨大な鳳凰。

 蒼き甲殻をまとう巨大な獣。


「くくく、どうだ? 星の獣の三体そろい踏みなど、未来永劫決して見られない光景だろう。壮観だな」


 確かに、すさまじい迫力だ。

 と、


「レイン・ガーランドか……!」


 光竜王の声には明らかな怒気が混じっている。


 あるいは憎しみか。


 本物ではない、といっても、精神性自体は同一ってことなんだろうか?


「我はお前に打ち倒された――その記憶を、今の我は引き継いでいる」


 光竜王が言った。


「怒りと憎しみ、屈辱感も、な」

「……!」


 俺は警戒心を強めた。


「三体の盾に守られた俺と、第三術式を連発できる君……勝った方が先に進むことになる」


 ゴルドレッドが言った。


「ここからは共闘ではない。競争であり――殺し合いだ」

「俺は……殺し合いなんて望まない」


 覚悟を決めたといっても、それは戦う覚悟だ。


 人を殺すなんて、簡単に割り切れるものか。


「優しいな、君は。だが、それは強さではない」


 ゴルドレッドが酷薄に言い放った。


「強さとは、必要な時に他者を切り捨てられる冷酷さを伴うのだ。この俺のように――」


 確かに、こいつはかつて自分を追放した者たちを殺している。

 俺と違って、人を殺す覚悟なんてとっくに持ち合わせているんだ。


 俺は未だに、迷いを捨てきれない――。


「迷いのない俺に、君は決して勝てない。さあ、終わりだ。レイン・ガーランド!」




「【斬竜閃(ざんりゅうせん)】!」




 ごうっ!


 突然、横合いから一直線に突き進んできた衝撃波がゴルドレッドに叩きつけられた。


 振り返ると、そこには金色の髪を結い上げた美しい少女騎士の姿があった。


「リリィ……!?」


 さらに、


「あたしたちもいるよ」

「よう、レイン。久しぶりだな」


 リリィの側にはマルチナとマーガレットの姿もあった。

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