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4 【魔弾】と【停止】と【探査】


『魔導馬車』は快調に進んでいた。


 通常の馬車のおおよそ五倍ほどのスピードだが、ほとんど揺れがない。


「なあ、リサ。聞いてもいいか?」


 ジグがこちらを見た。


 彼の首元から、リサはそっと目を逸らす。


「そもそも『星の心臓』ってなんなんだ?」

「えっ、分かってなかったの!? 今さらすぎるぞ」


 リサが驚いた顔をした。


「いや、僕だって大まかには理解している。単なる確認さ」

「言い訳乙」

「言い訳してないから。あと『乙』ってなんだよ」

「お疲れ様を縮めた言い方だぞ。あたしの故郷で流行ってたんだ」


 彼女の故郷はこの大陸から東方に位置する小さな島国にある。

 そこは独自の文化で発展しており、その国特有の言い回しも豊富だ。


「その流行りは20年ほど遅いかなぁ」


 二人の対面の席に座る女が、どこか間延びした口調で言った。


 長く伸ばした赤紫色の髪と顔の中央を覆うような巨大な眼帯が特徴だ。


 メリーアン・アンネローゼ。


【探査】の『天の遺産』を持つ女だった。


「まあ、流行遅れでも仕方ないだろ。リサの実年齢は三――」

「わー! わー! 年齢へのツッコミは禁止だぞ!」


 ジグが何か言いかけたので、リサは慌てて遮った。


「……そんなに気にすることなのか」

「する」


 リサはジグをジト目でにらんだ。


「あたしはリサちゃん十三歳! 見た目通りの可憐な美少女だぞ! ほら、あたしってキュート! リサisベリーキュート!」


 思わず力説してしまうリサ。


「十三……まあ、見た目はそうだけど」


 つぶやいた後、一瞬だけ彼の瞳に悲しげな光が宿ったのを、リサは見逃さなかった。


「ん? 意外と大人なのかな、リサは?」


 メリーアンが怪訝そうにたずねる。


「一つ聞いていいか、メリーアン」


 そんな疑問から話を逸らそうとしたのか、ジグが言った。


「なんでもどうぞ~」

「どうして君は一人で先行しなかった?」


 ジグがメリーアンを見据えた。


 警戒している様子だった。


(まあ、警戒しているのは、あたしも同じだけど)


『天の遺産』持ちはそれぞれの思惑があり、一時的に協力しているものの――最終的には敵対する運命にある。


 リサが信頼を置いているのは、以前からの相棒ともいえるジグだけだ。


「あたしは弱いからぁ。単独では『星の心臓』の最深部まではたどり着けないじゃない。せいぜい第二階層程度までかな~」


 メリーアンがのんびりとした口調で言った。


「だからこそ、あなた方を利用するわけ」

「『利用』ってはっきり言っちゃうのか」

「言い方がストレートすぎた~? 適当に言いくるめて、いいように扱って、最後にあたしだけが利益を得たいんだよねぇ」

「いや、もっとストレートなんだけど」

「ま、そこまで言われると、逆に信用できるぞ」


 リサが苦笑した。


 とはいえ、一から十まで信用しているわけではない。


 メリーアンは自身のことを『弱い』と評したが、それに関しても怪しいものだと思っている。


 彼女の『天の遺産』である【探査】は、あらゆるものを探り、真実を見出す力。

 その『見出す』力の範囲が、どこまでなのか。


 決して油断はならない、とリサは内心で警戒している。

 ……が、それはそれとして現時点では手を組むのも『アリ』だとも感じていた。


「互いに持ちつ持たれつ、利用しあって先まで進む。そして『星の心臓』の最終階層まで来たら、そこからはヨーイドンで競争すればいい」

「確かに、ね」


 ジグがうなずく。


「どうせ、一人じゃそこまでたどり着けない。なら、まずは協力――そもそもゴルドレッドたちだって、最初はそういう趣旨で集まったんだしな」

「だけど、いつまでも一緒にいたら、彼を出し抜けないよねぇ。どこかで見切りをつけ、先に進む必要があるさ。うふふふふ」


 メリーアンが微笑む。


「で、あたしからも一つ聞きたいなぁ。お二人に」


 と、メリーアンが眼帯越しにリサとジグを見つめた。


「なぜ、あなた方は手を組んでいるの~? 特にリサ――あなたにとってジグは『道具』ではないの~?」

「……なんだと」


 リサは思わずメリーアンをにらんだ。


 彼女は平然とした様子だ。


「ジグを『造った』のはリサでしょう~? いわば親……いや神のようなものかなぁ」

「あたしとジグは……」


 リサがうつむく。


「あたしと、ジグは――」

明日の夜0時(正確には明後日ですが)にマガポケで、明後日の昼12時には月マガ基地、コミックDAYSでそれぞれチー付与コミカライズの更新がありますので、よろしくお願いします~!

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