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20 ゴルドレッド、攻勢

 付与魔術第四術式には莫大なポイントが必要な上に『支配の紋章』の発現という未知の条件が必要だ。


 現時点では使用することは不可能だった。


 だから、俺の切り札は依然として付与魔術第三術式の方なんだけど――。


 あれもかなり大きなポイント消費があるから、ホイホイ撃てる術じゃない。


 おまけにゴルドレッドの【変化】のバリエーションの中に第三術式を防げるような術があるかもしれない。


 確実に相手に当てられる状況が来るまでは温存するのが正解だろう。


 となると、どうやって閃鳳王を攻略するか――。


「どうやら君の方は手詰まりのようだな。君も第三術式までなら使えるんだろう? 試しに撃ってみたらどうだ?」


 挑発か。

 ということは、やっぱり俺が第三術式を使ったところで防ぐなり凌ぐなりする自信があるってことか。


 もちろん、奴の台詞自体がハッタリで、本当は第三術式を撃てば決定的なダメージを与えられるという可能性もあるけど――。


 うかつには動けない。


「ちなみに『天の遺産』の各能力は複数の術式を使うことができる。これは俺だけではなく他の保持者(ホルダー)もそうだ。各術式を使用できるようになるには、いくつかの条件が設定されていて……ああ、詳しく講義したいところだが、さすがに今はそんな状況ではないな。残念だ」


 ゴルドレッドは本当に残念そうにため息をついた。


「――やれ、閃鳳王」


 と、傍らの魔鳥にゴルドレッドが指示をする。


 きゅいいいいいいいいいいいいいんっ。


 次の瞬間、奴の鳴き声が音圧の衝撃波となって叩きつけられた。


「ちいっ……」


 俺は強化付与した防御アイテムをいくつも身に着けているから、当然ノーダメージ。


「このっ……」


 俺は燐光竜帝剣で反撃するが、衝撃波は奴らの前に展開された『歪曲空間』によって無力化された。


「やっぱり、通じない――」

「お互いに決定打を放つのは難しそうだな」


 ゴルドレッドが眉を寄せた。


「仕方ない、もう少しポイントを消費して確実に殺すか。他の保持者との戦いを考えると、ポイントを温存しておきたかったが――」


 ヴンッ……ヴヴヴヴヴヴ……ッ!


 周囲の空間が鳴動する。


 ゴルドレッドがふたたび懐から何かを取り出した。


 小さな石板だ。


 表面に何かが掘られているのが見えた。


 魔術師……だろうか?


 ただ、背中から翼が生えている。


「閃鳳王のときと同じ理屈――これは形代だよ、レイン」


 ゴルドレッドが『にいっ』と口の端を吊り上げた。


「この形代をイメージの核として、我がしもべに『変え』る」


 こいつ……っ!


 さすがに焦りの気持ちが強くなる。


 今の口ぶりから推測すると――これからゴルドレッドが行う術式は、閃鳳王生成と同レベルの術ということになる。


 閃鳳王以外に、こいつにはまだ切り札がある――!?


「ポイント333333を消費し、【変化】の『天の遺産』、第三術式を起動――」


 ゴルドレッドが石板を掲げた。


「【変化】【タイプ・魔族】【カテゴリ・伝説級】――出ろ、『黒の魔王』グランディリス!」


 ――そして。


 ゴルドレッドの側に身長二メートルほどの人影が出現する。


 漆黒のローブをまとった魔術師のような姿。

 手には黄金の杖を携えている。

 さらに背中からは翼が生えている。


 閃鳳王と比べれば、体のサイズは人間とほとんど変わらない。


 ただ、その威圧感は――閃鳳王と同等のすさまじさを誇っていた。


「グランディリス――かつて勇者レーヴァインと死闘を繰り広げた伝説級の魔王だ。その後も何体か魔王は現れたようだが、おそらくその中で最強レベル……閃鳳王と合わせて、伝説級の存在二体を相手にどう立ち向かう、レイン?」


 ゴルドレッドが微笑んだ。


「くっ……」

「魔王級魔法――」


 グランディリスが黄金の杖を掲げる。


「【暗黒魔王滅戦咆ダーク・ディ・ロア】」


 巨大な黒い光球が放たれる。

 魔王ならではの膨大な魔力が込められた魔法――。


「ちいっ……」


 俺は燐光竜帝剣を振りかぶった。


 光球があまりにも巨大すぎて避けるのは無理だ。


「ぶった切るしかない――」


 剣を、振り下ろす。

 ほとばしった衝撃波と黒い光球が激突し、ともに消え去った。


「ふう……なんとか相殺できた」

「我の魔法を打ち消すとは……貴様、魔王と同等か、それ以上の力を持っているな」


 グランディリスが俺をにらんだ。


 きゅいいいいっ。


 閃鳳王がその隣で、同じく俺をにらむ。


 ……こいつらに同時ににらまれるとゾッとする。


 さすがにこの状況はまずい――か……?


 いくら俺の手に+20000まで強化した燐光竜帝剣があるとはいえ、閃鳳王もグランディリスも伝説級の敵だ。


 しかもゴルドレッドがサポートに入るだろう。


 なんとか突破口を見出さないと――。


 と、そのときだった。




 がおんっ……!




 空間が揺らぐ。


 前方に黒い何かが出現する。


 そして、


「ぐおっ……!?」


 次の瞬間、魔王の上半身がいきなり消失した。


 いや『食われた』のだ。


 虚空から現れた、黒い何かによって――。

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