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19 付与魔術、第四術式について

 ゴルドレッドが【変化】によって作り出した巨大な漆黒の魔鳥――伝説級の魔獣『閃鳳王(ベル・ファ・ゼリル)』。


 俺はそいつと向き合いながら、頭の中で戦術を組み立てていた。


 俺の手札はいくつかある。


 まず、強化付与した防御アイテムや布の服で全身の防御をガチガチに固めているから、いくら閃鳳王が相手といっても、そう簡単にダメージを受けることはない。


 実際、さっきの音圧攻撃にも俺はノーダメージだ。


 とはいえ、楽観視していい状況じゃないのは確かだった。


「どうした? 光竜王と同格の相手では、さすがのレイン・ガーランドも恐怖で動けないか?」

「……同格じゃない」

「何?」

「俺が以前に戦った光竜王は【強化】の『天の遺産』を持っていた。けど、こいつには何もないんだろう?」


 俺は閃鳳王を、そしてゴルドレッドを順番に見据える。


「確かにそうだな。『天の遺産』のいくつかは『保持者』がいない。宙に浮いたままだ。光竜王はその素質を持っていたから、俺たちが発掘し、ストックしていた遺産を与えることができたが……」


 ゴルドレッドが肩をすくめた。


「俺が【変化】で造り出した『まがいもの』の閃鳳王では『天の遺産』を扱うことはできない――」

「なら、そいつは光竜王より確実に弱い。俺一人でも十分に勝機はある」

「どうかな?」


 ゴルドレッドがニヤリと笑う。


「確かに閃鳳王は『天の遺産』を持たない。だが、この俺のサポートがある。君に勝機などない」

「だったら――試してやる!」


 俺は気合いとともに燐光竜帝剣を振り下ろす。


 奇襲攻撃だ。


 もともと、この剣にはいくつかの特性がある。


 普段は【衝撃波】の部分の強化を低く抑え、周囲に被害が出にくいようにしてあるが、周囲に障害物や人家などがないここなら――。


「【衝撃波】の強化を最大に――いっけぇぇっ!」


 ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!


 轟音とともに最大出力の衝撃波を閃鳳王に叩きつける。


「無駄だ」


 ヴヴヴヴヴヴヴヴ……ッ!


 閃鳳王の前方で何かがうなるような音が響く。


 同時に、まるで蜃気楼のように奴の姿が歪んだ。


 ――いや、違う。


 歪んでいるのは閃鳳王じゃない。


 その前方の空間……か……!?


 ばしゅんっ……!


 俺が放った衝撃波は、その『空間の揺らぎ』に当たり、吸い込まれるようにして消えた。


「俺と閃鳳王の前方の空間を『歪曲した空間』に『変え』た」


 淡々と説明するゴルドレッド。


「空間そのものを盾にしたようなものだ。君の攻撃は物理だろうと魔法だろうと、俺と閃鳳王には届かない」


 とんでもないことをサラッと言うな、こいつ。


「それって前に戦ったフローラの【防壁】並じゃないか……?」

「単純な防御力なら大差ないだろうな」


 ゴルドレッドが言った。


「もっとも、フローラにも第二や第三の術式があるはずだ。その正体までは分からないが……おそらく単純な防御能力でいえば、やはり彼女が最高の使い手だろうな」




 俺たちはしばらくの間、にらみ合っていた。


 相手の防御は固く、反撃手段も予測がつかない。

 だから俺からはうかつに攻撃できないし、ゴルドレッドと閃鳳王も動いてこない。


 膠着(こうちゃく)状態だった。


「さあ、遠慮なく撃ってくるがいい、レイン。君の【強化付与】は非常に強力なスキルだ。しかも第三の術式にまで目覚めているんだろう? それを駆使して俺の防御を破ってみたらどうだ?」


 あからさまな挑発だった。


 さすがに乗るわけにはいかない。


 とはいえ――じゃあ、どうすれば状況を打開できるのか。


「……手詰まり、だな」


 俺は唇をかんだ。


 ゴルドレッドのサポートを受けている閃鳳王は、もしかしたら以前の光竜王より手ごわいかもしれない。


 あのとき、光竜王はディータやシリルのサポートを受けていたけど、こっちにもリリィたちがいたからな……。


「今は、俺一人……」


 ごくりと喉を鳴らす。


 不安がこみ上げる。


 それを無理やり押し殺し、俺は新たな戦術を練った。


 どうにかして『アレ』を使えれば――。


 付与魔術、第四術式。


 いや、ゴルドレッドの言葉に従うなら、これは『【強化付与】の「天の遺産」第四術式』ということになるんだろうか?


 光竜王を倒した直後、俺はこの術式を身に着けた。


 そして、戦いの後、術式について調べてみた。


 調べると言っても、なんらかの文献があるわけじゃない。


 ただ、念じると、いつものアナウンス――ゴルドレッドの話では『星の声』ということになるんだろうか――が答えてくれた。


 その第四術式の詳細だが、


・発動には『444万4444』という莫大な強化ポイントが必要なこと。

・ポイント以外にもう一つ『支配の紋章』の発現という特殊な条件を得る必要があること。

・現在の俺では発動条件を満たしていないこと。


 この三つを教えてもらった。


 さらに、もう一つ。


 もし発動すれば、どんな相手も敵ではない――とも。


「けど、使えないんじゃ意味がない」


 特殊な条件である『支配の紋章』というのは、おそらく『天の遺産』絡みで何度か目にした、あの紋章のことだろう。

 ただ、それを意図的に出す方法が分からない。


 出し方について聞いても『声』は教えてくれなかった。


 何でも教えてくれるってわけじゃないらしい――。

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