11 邂逅
「【サーチⅢ】!」
ローザが得意の探索魔法を発動した。
ヴンッ!
彼女を中心に緑色の輝きが波紋状に広がっていく。
やがてその輝きが薄れ、
「ん。こっちだと思う」
ローザが右前方を指出した。
「100パーセントの精度じゃないから間違ってたらごめんね~」
「当たってる確率はどれくらいなんだ?」
たずねる俺。
「たぶん、99.891パーセントくらい」
「ほぼ100!」
もちろん、絶対確実ではないにしろ、まず間違いなく正解なんだろう。
俺たちはローザが探知してくれた道筋に沿って進んだ。
現在の俺たちは街道を進んでいる。
剣が示した『星の心臓』がある場所……と思しき地点を目指して。
だけど、ローザが示した方向は街道から少し外れるコースだ。
進んでいくと小さな森の中に入った。
「本当にここでいいんだな?」
バーナードさんが確認する。
「ん、たぶん」
うなずくローザ。
「でも迷ったらごめんね」
「私は迷うことには慣れている。大丈夫だ」
ヴィクターさんが真っ先に言った。
「ヴィクターさんはそうですよね……」
「むしろ迷わないと不安になる」
「迷っても不安になるんですが」
ツッコミを入れる俺。
――俺たちは森の中を進んだ。
「あ……! だんだん近づいてきた感じがする」
ローザがハッとした顔になった。
「気配が強まった。もう一回、スキルで探知してみよっかな」
「ああ、頼む」
「あ、でもスキルを使うのって結構疲れるのよね」
と、ローザ。
「そこをなんとか」
ミラベルが横から言った。
「お礼にレインがお金くれるらしい」
「いや、そんなこと言ってないけど!?」
「S級冒険者だし、いっぱい稼いでるはず」
「そんなこと……」
確かにランクアップしてから、基本的な報酬から何から上がったからな。
それにS級になれば、最高難易度かつ超高額報酬の仕事も受け放題だ。
だからその気になれば――そして危険なクエストに成功し続ければ、一攫千金も夢じゃない。
といっても、S級になってからそんなにクエストをこなしたわけじゃないから、今のところは大金持ちに程遠いけどな。
「まあ、そこまでガツガツ稼ぎたいわけじゃないし……」
「レインはいずれ大金を稼ぐってことで、ローザに今回の報酬を出すように」
ミラベルが言った。
「じゃあ何かしらのお礼をするってことで……」
と、俺。
「ついでに私にもお金ほしい」
「なんで!?」
「私は欲深い女」
「まあ、そうだな……」
――と、そのときだった。
「なるほど、君が来たか……レイン・ガーランド」
突然、どこからか声が響く。
「えっ……?」
周囲を見回したけど、声の主の姿は見当たらない。
ただ、すぐ近くにいることだけは分かった。
異常なプレッシャーで全身に鳥肌が立っている。
あの光竜王に対したときに匹敵するほどの威圧感――。
「誰だ……?」
もう一度、周囲を見回す。
えっ……?
俺は絶句した。
いつの間にか景色が一変していた。
森の中じゃなく、どうやら建物の中らしい。
ツルツルした白い大理石の回廊が続いている。
仲間のみんなの姿がない。
俺一人だけが、ここにいる――。
「君たちの周囲の地形を『変え』させてもらった。他のメンバーはそれぞれ全く違う地形となった場所に飛ばされているはずだ」
こつ、こつ、と足音がして、誰かが近づいてきた。
真っ白い髪をした精悍な印象の青年だった。
「ゴルドレッド・ブラスレイダーだ。初めまして、レインくん」