10 合流へ
「ローザ、探索魔法でリリィたちを探せないか?」
「んー……私はそのリリィさんを知らないからね~」
と困ったような顔をするローザ。
確かに、そうだよな。
前に『青の水晶』をリリィが訪れたとき、ローザは不在だったわけだし。
「もっと情報がないとね」
「じゃあ似顔絵は?」
ひょこっと手を上げ、ミラベルが提案した。
「似顔絵?」
「リリィとかマルチナとかの絵を描けばいい」
「それで探索魔法が使えるのか?」
「あ、本人の顔の情報が分かれば、探索魔法の精度はグッと上がるよ~」
と、ローザ。
「はい」
ミラベルが荷物の中から紙と筆を差し出した。
「……よく、こんなの持ってたな」
「えへん」
ミラベルがドヤ顔で胸を張った。
「絵は苦手なんだよな……とりあえず、さらさらさらっと」
俺はがんばってリリィ、マルチナ、マーガレットの似顔絵を描いてみた。
出来は……聞かないでくれ。
「……………………」
ローザは案の定沈黙している。
というか、全員が沈黙している。
「レイン、念のために聞きたい」
ミラベルが俺を見つめた。
真顔で。
「これ……………………人間?」
「そのレベルで判別できない!?」
「ごめん……」
「いやマジ顔で謝られると、かえって傷つくっていうか」
「なんていうか、ごめん……」
「だから謝らないで……」
そんなにひどかったか、俺の似顔絵……。
「ナイスアイデアを思い付いた」
ひょこっとミラベルが手を上げた。
「とりあえず辺り一面を捜索しまくる、とか?」
と、バーナードさん。
それは普通に遭難しそうだな……。
「そもそも合流する必要があるんですか?」
と、これはラス。
「無闇にルートを逸れると、それこそ道に迷うでしょ?」
「んー……まあ、そうなんだけど」
俺はみんなを見回した、
「あの二人は頼もしい仲間なんだ。これから先、どんな敵が現れるかもしれないし、合流した方がいいと思う」
言ってチラッと魔族を見やる。
そう、こいつみたいな高位魔族にまた出くわすかもしれない。
それに――。
『天の遺産』を持つ者たちにも。
「じゃあ、私が思いついたナイスアイデアの発表」
ミラベルが言った。
「はい、みんなで盛り上げ」
「えっ!?」
「正解発表の前には盛り上げる。これは社会常識」
「社会常識……なのかなぁ」
首をかしげる俺。
ミラベルは当然といった顔で、
「私が育った『暗殺者の里』では社会常識だった」
「そういうノリなんだ……」
「よし、今から正解発表かぁ! ワクワクするよなぁ!」
無理やりな盛り上げ方だな、バーナードさん……。
「はい、おっけー」
「今のでオッケーなんだ!?」
意外にもミラベルは快諾だった。
「では私が思いついたナイスアイデア――それは!」
ミラベルが声に力を込めた。
いつも淡々と話すから、こういう口調になるのは珍しいな。
「似顔絵じゃなくて剣のイラストを描くとか」
そう提案した。
特に突飛なアイデアじゃないけど、
「剣……なるほど、顔よりは難易度が低いかもしれないな」
「えへん」
ミラベルがまたドヤ顔になった。
「よし、描いてみる……さらさらさらさらっと」
出来上がったイラストを、ローザに見せてみた。
「んー……さっきよりはマシかな。ちょっとこれで探索してみるね~」
ローザが言った。
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