5 S級とA級と勇者候補と最強魔族2
魔族の放った巨大な光弾が迫る。
すかさずマルチナが剣を手に飛び出した。
「食らい尽くせ、『蒼天牙』!」
伝説級の剣の刀身がまぶしい輝きを放つ。
その光が一直線に伸びていき、まるで竜の口のような形になって光弾を飲みこんだ。
「へえ、私の魔力弾を吸収したか」
「ご名答」
マルチナはふふんとドヤ顔でうなずいた。
「これが『蒼天牙』の特殊能力。魔法やエネルギー系などの攻撃なら属性を問わずにすべて吸収できる」
「厄介だな。そっちの女も『紅鳳の剣』を持っているようだし……」
魔族が肩をすくめた。
「『王』の称号を持つ剣が二本か……この最強魔族メトラムといえど手こずりそうだよ」
「『王』の……称号?」
「ん、君たちは自分の剣の由来も知らないのかい?」
メトラムがキョトンとする。
「『星の心臓』が生み出せし最強の生命体――『王』の称号を持つ『光竜王』や『閃鳳王』といった魔物たちを封じるために造り出された剣――」
と、謡うように告げる。
「彼らと同じく『王』の称号を持つ三本の伝説級の剣だ。その強力さは魔界にまで伝わっている――」
「この剣にそんな由来が……?」
対光竜王用の封印具だと思っていたが、もっと別の由来があったようだ。
「あたしは知ってたけどね」
マルチナが胸を張った。
「勇者の末裔だから」
「おお、さすがだぜ」
と、マーガレット。
「……ふふん、当然」
言いながら、彼女の頬がひくひく震えていることに気づいた。
もしかして、知ったかぶり……?
リリィは疑問に思ったが、マルチナの名誉のために黙っていることにした。
「相手が高位魔族でも、あたしたちには伝説級の剣とマーガレットのサポートがある。いけますよ」
と、『紅鳳の剣』を構えなおす。
「初撃はあたしが対魔族用の斬撃スキル【斬魔刃】でいきます。奴の体勢が崩れたり、隙が見えたら――マルチナさんが仕留めてください」
「りょーかいっ」
マルチナがリリィの斜め後方に位置を移す。
「マーガレットは魔法であたしたちのサポートをお願い」
「任せろ」
マーガレットが最後方に位置を変えた。
この陣形で魔族メトラムを撃破する――。
「さ、いきましょう!」
そして、リリィが剣を手に走り出した。