4 S級とA級と勇者候補と最強魔族1
SIDE リリィ
リリィ、マーガレット、マルチナの三人は伝説級の剣が指示した光の先へと向かっていた。
「この先に……レイン様もいるのよね」
リリィがつぶやく。
それは半ば直感ではあるが、彼女たち全員が確信していた。
「ふーん……? あたし、分かっちゃった。レインくんに会いたくて、胸がときめいちゃってる感じ?」
「えっ、い、いえ、それは――」
「乙女だね~」
「あわわわ……そ、そういうのじゃないのでっ」
からかうマルチナに対し、リリィは真っ赤だった。
「むむ……先輩、あいつの話になるとすぐ乙女モードになるな……」
マーガレットがジト目でこちらを見ている。
「俺もさすがに察してきたぞ。やっぱり先輩って――」
「ち、違うから! いえ、その、ちが……わないかも、だけど……えっと」
リリィはしどろもどろになってしまう。
と、そのときだった。
「――!」
三人の表情が一瞬にして真剣なものに戻った。
スッと目を細め、周囲に気を配る。
(――いる)
何かが。
とてつもない威圧感を放つ、強大な何者かが。
「へえ、私の気配に気づいたのか」
突然、だった。
今まで何もなかった空間が揺らぎ、一人の青年が姿を現す。
「お前は……!」
人間と同じ姿をしているが、人間ではないことは確かだった。
魔族。
魔界と呼ばれる異世界から現れる闇の種族。
リリィも冒険者としての仕事で何度か魔族と相まみえたことがある。
人間をはるかに超える身体能力と魔力を備えた強敵である。
「伝説級の剣を持ってる上に、この方向を目指している……ってことは、君らの目的も同じかな?」
魔族の青年が微笑む。
「『星の心臓』――そこに眠る力を求めているわけだ、君たちも」
「星の心臓……?」
「ん、知らなかったのか? ま、いいか」
魔族はニヤリと笑った。
「『星の心臓』の深淵に到達し、力を得られるのはたった一人……ライバルになりそうな者はとりあえず全部殺しておくよ」
どんっ!
次の瞬間、その魔族はいきなり巨大な光弾を撃ってきた。
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