2 高位魔族
「魔王だって……?」
「かつての勇者によって先代魔王が討たれて以来、我らの世界には長らく王が現れていない。力ある魔族たちがけん制しあい、抜きんでた存在が現れていないのだ。だが、その状況も終わる――」
魔族が笑った。
「この俺が『星の心臓』の力を得ることで! さあ、案内してもらおうか、人間よ!」
「案内?」
「『星の心臓』の場所を知ってるんだろう?」
「まあ……大まかな方角くらいは」
「えっ、詳しい場所知らないの……?」
魔族はポカンとした顔になった。
もしかして、俺たちが『星の心臓』の正確な場所を知っているとあてにしていたんだろうか。
「ま、まずいぞ……他の高位魔族を出し抜いて、いちはやく『星の心臓』に眠る力を手に入れようと人間界まで来たというのに……こ、これがバレたら強硬派に殺される……」
いきなり慌てだすヅィレドゥルゾ。
「い、いや、きっとお前たちは場所を知っているはずだ! 隠し立てする気か! なら力ずくでも聞きだす」
「むしろ、俺たちが知りたいくらいなんだが……場所……」
「ええい、聞こえん聞こえん!」
ヅィレドゥルゾが襲い掛かってきた。
どうしても、『俺たちが「星の心臓」の正確な場所を知っている』ということにして、気持ちを安定させたいんだろう。
「ま、バーナードさんの言う通り――降りかかる火の粉は払おう」
俺は『燐光竜帝剣』を一振りした。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
一撃――。
俺のフルパワー斬撃を食らって、高位魔族は数百メートルも吹っ飛んでいく。
「な、なんだ、これは……いくら伝説級の剣とはいえ、ここまでの……」
「悪いな」
俺はふたたび剣を振りかぶった。
「思いっきり強化付与してるんだ、この剣」
そして、二撃目。
「ぐはあああああああああああああああああっ!?」
また吹っ飛んでいく高位魔族。
……これでまだ消滅しないのか。
けっこう頑丈だ。
とはいえ、さすがに戦闘不能のようだった。
「ごめんなさい反省しましたもうしませんので許してください」
そして、高位魔族はあっさり降参した。
最近は『天の遺産』保持者やら光竜王といった規格外の強敵相手の戦いが多くて忘れかけてたけど――。
俺が付与した武器を使えば、ほとんどのやつは敵ですらないんだよな。